【ダイハツ工業】社員が「技術研究会」で機械学習を学び、全社のAI導入を牽引

【ダイハツ工業】社員が「技術研究会」で機械学習を学び、全社のAI導入を牽引

近年、業界を問わず企業で営業職やマーケティング・商品企画職、管理職など、様々な年代や職種のAI人材確保の動きが加速する中、国内有数の自動車メーカーであるダイハツ工業株式会社(以下、ダイハツ工業)は、2020年より本格的に全社のAI導入を開始しました。そうした中、本記事では、同社でAI導入の動きを加速させる一つの要因となった、会社職制外の組織「ダイハツ技術研究会(以下、技術研究会)※」の取り組みをご紹介します。

▼お話を伺った皆さん
・太古無限氏(ダイハツ工業株式会社 東京LABOデータサイエンスグループ長)
・岸浩史氏(ダイハツ工業株式会社 車両性能開発部 材料室)
・頼實浩一氏(ダイハツ工業株式会社 エンジン開発部 エンジン設計室)
・味澤嘉和氏(ダイハツ工業株式会社 東京LABOデータサイエンスグループ)

ダイハツ工業全社のAI導入を牽引する「技術研究会」

ダイハツ工業では、「AIの民主化」(=AIを誰もが公平に利用することができ、かつ、その利用者自身で、適正および公平な運用、成長に参画する環境が実現している状態)を目指しています。

そのために、2025年までに社内のAIエキスパート人材を200~300名育成することを目標に、全社でAutoML(Automated Machine Learning)ツールを導入し、プログラミングが出来ない社員でもAIを気軽に活用できる環境を整備しました。

2020年度から始まった全社AI導入の中心に立って推進する太古無限氏は、社員が能動的にAIを活用し理解を深める場として、同社、会社職制外の組織である技術研究会内で、全社の動きに先駆け2019年度に「機械学習研究会」を発足しました。2020年度の活動内容には、全社AI研修では触れないプログラミングスキル向上も含まれており、レゴロボットを使って機械学習を楽しく学ぶ場となっています。

AI活用におけるプログラミングの必要性

機械学習研究会の参加者は70名。22歳~60歳のプレイヤー職からマネージャ職、事務職から開発職まで、普段様々なポジションで活動するメンバーが、新しいことに挑戦したいという想いで参加しています。プログラミングを含んだ機械学習を学びたい理由は参加者それぞれで、ちょっとした業務の困りごとを解決したいという理由もあれば、開発業務を効率化するために活用していきたいという理由もあります。

全社的にAutoMLツールを導入しているにもかかわらず、なぜプログラミングスキルが必要なのでしょうか。AutoMLツールを活用すればモデリングが自動化されプログラミングが不要になる反面、仕組みがブラックボックス化され応用が難しくなります。多様な課題に対して機械学習を活用するためにはプログラミング習得が必須となるのです。

レゴロボットで楽しみながら、能動的に機械学習を学ぶ

機械学習研究会の2020年度の取り組みは全8回。テキスト教材「ロボットではじめる深層学習 TensorFlow×教育版EV3自動走行」に沿って、7拠点14チームで各チームのリーダーが核となって実施、最終発表では全チームオンラインで走行会を実施しました。

▼学習の流れ(ロボットではじめる深層学習 TensorFlow×教育版EV3自動走行より抜粋)
・教師あり学習
・画像処理による制御
・教師あり学習のしくみ
・CNNのしくみデータ収集
・強化学習
・強化学習のしくみ
・データの集め方
・Tensorflowを用いたプログラムの作り方

走行会では、障害物を避けてコースを逸れずに走ることを目標に設定しており、ほとんどのチームが目標に到達できたと言います。よりスムーズに学習を進められたチームの中には、決められた走行だけでなく、夜間走行時のように周囲の明かりを消し、前方にライトを装着して走行するなど、様々な工夫を盛り込んでいました。

(夜間走行:ロボット前方に装着されたライトでコースを照らし、センサーで取得する反射光の値を安定させながらライントレースしています)

▼発表内容
・メンバー紹介
・活動のコンセプト
・チャレンジしたこと/気付き
・成果物の発表
・まとめ/今後どう活かしていくのか

事務局担当である岸浩史氏に、活動の中で気付いたことを伺いました。

「機械学習研究会にはプログラミング未経験の方も多く参加しています。本取組みでは、目の前でロボットが動き、結果が目に見えてわかることで試行錯誤が容易になる効果があったと感じます。アイディアをすぐ形にできることが、参加者の能動的な活動に繋がりました。また、走行会で、レゴロボットのクリエイティブ性の高さを活かし、目標のプラスαの動きにチャレンジするチームを見られたのがとても感動しました。」

また、参加者からは、「AIは綺麗じゃない、泥臭いデータの処理が必要であり、今回の活動で躓きながら試行錯誤をすることで、AIの中身を知ることが重要だと実感することができた。」という声があったそうです。

スタート時点のレベルはバラバラ、オンライン環境下のメリット

活動スタート時、参加者のITリテラシーやソフトウェア分野の基礎知識の差が大きく、計画通り進められないチームが多くあったそうです。事務局担当の頼實浩一氏は、「チームの指導役を担うリーダーの知識や経験も差が大きく、成功させるためには拠点やチームをこえたオンラインでのコミュニケーションが重要でした」と話されました。

チーム間や講師、事務局とのコミュニケーションは、主にチャットアプリなどオンラインツールを活用、チャット内のやりとりは、チームや拠点に限らず全員が閲覧投稿出来るようになっており、課題の共有や解決策を共有することで、問題が起きてもスムーズに解決できたそうです。

また、前年度は各拠点それぞれ実地で活動しており、ご家庭の事情等で帰宅し不参加だった場合、一度参加できないだけでついていけなくなり脱落する参加者が多くいたそうです。しかし、オンラインに切り替えたことで自宅から参加でき、活動を続けられる参加者が増えたと言います。また、離れた拠点とのコミュニケーションが増え普段接点のない社員と話せることで、新しいアイディアや視点に触れる機会ができ、副次的な効果もあったとのことでした。

機械学習への関心が継続する環境、さらに高まるような環境の提供を続けていきたい

太古氏は、「今回の走行会を受けて、やり残したことやさらにやってみたい事の発見もあったので、レゴロボットを活用した活動は今後も続けいきたいと思っています。また、今回は、テキスト教材にある課題達成を目標に置いていましたが、来年度からはもっと早いタイミングでテキスト教材を学び終え、ボトムアップの活動時間を多くとれるようにしたいと思います。さらに、来年度には機械学習を専門的に学んでいる学生の入社も予定しているので、新入社員や、社内の関心の高い方も巻き込みながら、みんなで学び続ける環境を継続していきたいと考えています。」また、2020年度で事務局活動を終了した岸氏と頼實氏は、「今回学んだことを、社内で情報発信しながら所属部署でも活かしつつ、他社員と一緒にボトムアップで活動していきたいです」と話されました。

※「ダイハツ技術研究会」とは
ダイハツ工業の会社職制外組織である「技術研究会」は、業務の中で深められない、または触れられない技術を、会員が能動的に学べる場であり、活動の中で得た知識やノウハウをそれぞれの業務に持ち帰り活用しています。同社プロパー社員やグループ会社に所属する技術者から事務職員まで幅広い領域の社員が入会しており、2020年に会員数は2,700名に到達。会費を元手に必要なものを調達し研究

キャプチャ2.jpg

教材「ロボットではじめる深層学習 TensorFlow×教育版EV3自動走行」サンプル公開中

シミュレータ上でロボットを動かしながら、プログラミング基礎を学びたい方へおすすめの教材「教材サンプル「ロボットではじめる深層学習 TensorFlow×教育版EV3自動走行」」の教材サンプルをご紹介します。サンプルを見る

bnr_ai-data-analysis_200×562.jpg

関連記事