大学の改組・再編の背景と主に改組・再編が進む分野とは

近年、政府主導で大学の再編や改組が進んでいます。平成25年に文部科学省が「国立大学改革プラン」を策定。これに基づき平成27年に、国立大学の組織の見直しが公表されました。平成28年度からは国立大学改革の第3期中期目標期間がはじまり、初年度には14の国立大学が学部を新設・改組、翌29年度には11の大学で学部の再編が予定されています。新学部設置や学部再編が進むなか、なぜ今、大学改組・再編が必要なのか、またどのような分野でそれが進むのかについて解説します。

多くの大学が学部の改組・再編を行う背景

大学の改組や再編はなぜ必要なのでしょうか。文部科学省は平成25年の「国立大学改革プラン」で、以下3点の社会経済状況の変化について、対応する必要性を指摘しています。

  1. グローバル化に伴い、国際的に質の高い高等教育および、国境を越えた大学教育の提供や学位の評価が必要となっている。
  2. 少子高齢化で18歳人口や労働人口が減少している。平成元年には193万人だった18歳人口は、平成40年には103万人となる見込みである。
  3. 新興国の台頭により世界やアジアにおける日本の位置づけが低下している。世界のGDPに占めるアジアの割合は平成21年には25%だったが、平成42年には40%と成長する見込みである。一方、日本のシェアは9%から6%に減少する見通しである。

こうした必要性から国立大学改革プランでは、日本を世界最高の教育研究の展開拠点として、アジアを率いる技術者を養成すること、大学を地域活性化機関とすることが、今後の方向性として挙げられています。そのため、学部の改組や再編による大学の機能強化が必要とされているのです。

学部の改組・再編の多い分野とその理由

平成27年に文部科学省が発表した「国立大学法人等の組織および業務全般の見直しに関する通知書」では、「特に教員養成系や人文社会系は、組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めること」とされたため、文系不要論問題へと発展しました。文部科学省は、人文社会科学系の学問の軽視ではないと説明していますが、日本の国際競争力向上のため、民間企業の期待は理工系の人材に向けられがちです。また文系学部は理工系学部よりも、民間企業の経済的援助を受けにくいという背景もあり、理工系の強化や文理融合の動きがみられます。

大学では、この流れを汲んで教育学部総合科学課程の廃止や定員縮小、文系学部定員の理系学部定員への振り替え、文理融合型の新しい学部の新設といった学部再編が行われているのです。

具体的には平成28年度からは、教員免許の取得が卒業要件ではない教育学部総合科学課程の廃止や、人文社会科学系学部の地域系学部や国際系学部への改組、理工・農学系学部の定員増加が増えています。また文理融合型としては、理工・農学系の学科やコースをカリキュラムに含み、地域の社会的・経済的課題を解決できる地域人材の育成を目的とする、地域系学部などが新設されています。ほかにも国際系学部の例として、長崎大学の多文化社会学部や、千葉大学の国際教養学部などがあり、海外留学を必須とする学部も増加傾向です。これまで専門分野別に細分化されていた学部や学科が統合されたり、専門分野を横断する学際系も増えたりしています。
理工・農学系に関しては、「資源・エネルギー」や「情報」に関する学部の新設が増加しました。学士課程と大学院を一貫教育としたり、学士課程の定員を減員し、大学院の定員を増員する動きも出ています。

学部の改組・再編でめざす大学教育の将来構想

こうした学部の改組・再編をすることで、どのような大学教育をめざし、どう達成しようとしているのでしょうか。
文部科学省は、各大学の機能強化により「持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学とすること」を、平成28年度以降の第3期中期目標としています。目標達成に向けた方策として、以下を挙げています。

  1. 国際水準の教育研究の展開と留学生の支援により日本の大学の国際的存在感を高める。
  2. 大学発のベンチャーを支援して、大学発の新産業を創出する。
  3. 理工系人材の育成戦略を策定する。

大学発のベンチャー支援としては、平成27年度から国立研究開発法人科学振興機関による「大学発新産業創出拠点プロジェクト」がスタートしました。また平成27年には、理工系人材育成戦略が発表されました。文部科学省と経済産業省のほか、経済団体や大学その他の参画で「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」が設置されるなど、理工系人材育成についても積極的な取り組みがなされています。

国立大学の改組・再編の課題

国立大学では政府の主導により、 改組・再編が進んでいますが、以下のような課題も見えてきています。

「国立大学法人等の組織および業務全般の見直しに関する通知書」で「社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むこと」されています。しかし、大学の本来の姿は、自主性を保った学問の自由を追求することにあります。そのため政府主導の改組・再編は、大学の本来の機能を損なうではという懸念があるのです。また、改組や再編で学部の名称だけが変わり中身が伴わないケースや、政府が支援する国立大学法人への運営費交付金の配分が上がったために、政府の意向に従わざるをえなくなり、各大学の特色や強みを生かしきれないという課題もあります。

まとめ

近年進んでいる国立大学の改組や再編について、その背景や、改組・再編の進捗状況を紹介しました。大きな流れとしては文理融合や理工系人材の育成、地域貢献型、国際系、学際系への再編に進んでいますが、学部名だけの変更にならないよう、教育の中身の改革につなげていく必要があります。

参考:

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