【授業実践】農林高校でAI授業「生徒が学び考える、先端技術で拓く里山の未来」

2020年2月20日、岐阜県立加茂農林高校でAIを学ぶ授業が実施されました。テーマを「里山×STEAM」としたこの授業は、2019年9月から地域・民間企業・学校が連携して準備が進められてきました。森林科学科の2年生40人が参加し、100分という短い時間ながらも、次世代を担う彼ら・彼女らが新たな里山保全の形を考える大きな一歩となった授業の様子をレポートします。

美濃加茂市の想いを受けて、産学官連携が生んだ農林高校のAI授業

この授業の始まりは、2015年に岐阜県美濃加茂市が提唱した「里山千年構想」に遡ります。近年、美濃加茂市の里山は少子高齢化や継承者の不在により手入れが行き届かず、荒廃が問題となっていました。そこでかつての里山風景に再生・継続させつつ、先進的な技術を取り入れて千年先も美しい里山を残すプロジェクト「里山千年構想」が立ち上げられました。プロジェクトをさらに具体的なアクションに落とし込んだ「里山千年基本計画」の柱のひとつに、担い手の教育があります。地域課題を幼い頃から体感している地域住民に、先端技術を学ぶ機会を提供したいという美濃加茂市の想いのもと、岐阜県立加茂農林高等学校が実践の舞台に選ばれました。

授業テーマは「里山×STEAM」。授業の構想人である田園イニシアティブ株式会社の楢木氏は「地域課題を持つ里山全体を実践の場と捉え、教科横断的授業かつアクティブラーニングを行えると考えています。高校生には先端技術を学び、新たな里山保全の可能性を感じてほしいです。」と授業への意気込みを語られました。

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岐阜県立加茂農林高等学校とは

今回、AI授業が実施されたのは岐阜県美濃加茂市にある、岐阜県立加茂農林高等学校の森林科学科です。2年生40人(男子33名、女子7名)は、森林の保全と利用に関わるスペシャリストを目指して森林に関する専門知識の習得や、美濃加茂市の農林課と外に出てチェーンソーを使った間伐など実技を交えた授業を受けています。

美濃加茂市農林課の坪井氏は、「生徒らにとって地元の農林業は働き先として必ずしも魅力的に捉えられていません。卒業後の進路として地元を離れて就職することを選択する高校生も多く、学校での学習経験が就職と結びついていないこともあります。」と美濃加茂市が直面する課題をあげました。さらに、同課の山田氏は「林業と言えば木の伐採と考える方も多いですが、実際はそれだけではありません。例えば今回の授業のように、先端技術を使って林業に関わることもできます。今回の授業で生徒たちが林業を将来の選択肢のひとつとして考えるようになってほしいです。」と期待をにじませました。

【授業内容】自動草刈ロボットで、里山の課題を発見しAIを使った解決を模索

・開催日:2020年2月20日(木)
・学年、生徒数:2年生40名(男子33名、女子7名)※1グループ10人 4グループで実施
・時間:5限13:35~14:25、6限14:35~15:25
・使用した教材:マンダラチャート®、レゴ®マインドストーム®EV3
・司会進行:田園社会イニシアティブ株式会社 楢木隆彦氏
・講師:美濃加茂市農林課 坪井勤氏、株式会社アフレル 田口直樹

・授業の流れ:
①里山の課題を書き出す
マンダラチャート®と呼ばれるフレームワークを使い、日頃感じている里山の課題を一人ひとり絵や文字で書き出してみる。

②農林課からの課題提起:草刈機の課題を把握し、全員で意見交換する
農林課の坪井氏から里山の課題の一つである草刈機の例を聞く。起伏が激しい山道では草刈機の使用が難しく、さらに刈っていい草・刈ってはいけない草の判別が要求されるため手間がかかる。草刈機にどのような機能があれば課題解決できるか、クラス全員で意見を共有しあう。

③AIの基礎概念・ロボットの学習
AIの基礎概念や使用するロボット(レゴ®マインドストーム®EV3)について学習する。ロボットに搭載されている色識別ができるカラーセンサー、画像データを収集する小型カメラについても学習する。

④ロボットを使い、AI活用の流れ(データ収集、学習、推論)を体験

・データ収集 
カラーセンサーを使って、ロボットに黒いラインで書かれた楕円状のコースをラインに沿って走行させる。走行させている間、ロボットに搭載している小型カメラでコースの画像データ(形状や角度など)を収集する。

・学習
収集した画像データの情報をロボットに学習させる。

・推論
画像データの情報を学習したロボットを使って、生徒たちが模造紙に黒ビニルテープを貼って作成した里山の道でも走行できるか試してみる。

⑤AI技術を活用した里山課題の解決策をアウトプットする
授業を通して気付いたことや感じたことをマンダラチャート®の残りの枠に記入。AI技術を使って里山の課題をどのように解決できるかを考える。

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AI授業に参加してみて

森林科学科2年生・鈴木博斗さん
「ロボットを動かしたのは初めてだったがとても楽しい授業だった。ロボットがうまく走らない時があり、意図する動きをさせるために、どうすればいいのか考えるようになった。また、チームで取り組んだことで里山の色々な課題が見えて新鮮だった。」

AI授業での生徒の様子について

森林科学科科長・中島浩平教諭
「いつもより積極的に挙手したり、参加する姿が見られてよかった。AIを学ぶ授業は初の取り組みだったが、ロボットを使ったので授業に入りやすく、基礎概念の理解を深めることができたと思う。ぜひ継続して学んでほしい。」

実践授業を振り返って 講師より

美濃加茂市産業振興部 農林課課長 坪井勤氏
「今回の授業を通して、子どもたちがAIを自分たちでも使えるんだと自分事に感じてもらったことが一番大きい収穫です。先端技術で地域課題を解決していくことにかっこよさや誇りを持ってほしいです。」

まとめ

今回は100分と短い時間の中で、課題提起から解決までの一連の流れを体験する授業となりました。地域課題を学ぶ彼らが「AIを使うと何ができるか」を想像し、様々な方法でアウトプットすることがイノベーションへの第一歩になると考えます。授業ではAIの基礎概念を学ぶ時間がありましたが、体験学習の際にはチームワークを発揮して積極的に取り組む姿が印象的でした。今後、役場、民間、学校、生徒が様々な立場から意見とノウハウを持ち寄り、地域課題に取り組んでいくことが増えると考えられます。今回はその先駆けとなった事例と言えるでしょう。

参考リンク

関連リンク

アフレルでは、AIに関する授業導入を検討されている学校、教育委員会、教育機関の方を対象として、実践事例を交えながら授業内容や導入の流れに関する疑問にお答えし、不安を解消するための相談会を実施しています。

ロボットを活用したAI授業導入相談会~AI教育に関する不安や疑問を解消
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