「世界文化に技術で貢献する」を建学の精神とする日本最古の私立工業大学として、冶金学科、機械学科を皮切りに工学から情報科学へと対象分野を広げ、現在は5学部体制で社会の課題に対応できる技術者を育成している千葉工業大学。情報人材の不足が社会課題となる前からその人材育成を目指し、学部再編を行うなど先進的な取り組みを続けています。積極的な人材育成を進める千葉工業大学のなかで、教育工学をご専門とされ、PBL(プロジェクトベースドラーニング:課題解決型学習)授業を実践されている、情報変革科学部認知情報科学科の國宗永佳先生(以下國宗先生)、高橋暁子先生(以下高橋先生)に授業デザインのポイントを伺いました。

國宗先生

高橋先生
卒業研究、実社会での活躍を見据えた
学生の主体性を引き出すPBL学習の活用
2024年4月から新しい学科としてスタートした認知情報科学科。従来の学科でも、教育やメディア、情報・情報ネットワーク、情報システムなどの応用などさまざまな分野をカバーしていましたが、これまで以上に「人」に焦点を当て、認知科学にも力点を置いた新しい学科の目指す姿を伺いました。
國宗先生「コンピュータや情報システムを作るエンジニアというだけではなく、人のことを理解した上で、使いやすい情報システム・サービスを作ることができる人材の育成を推進するべく新たに設置されました。また、人とコンピュータだけでなく、人どうしもより良い関係を築くために必要なことを学べるよう、協調的に取り組むプロジェクトを従前よりも数多く取り入れていることも特徴です。」
「人どうし」を重視する授業として、認知情報科学科では学生がプロジェクトに取り組む機会を積極的に作られていますが、それは、社会に出た時のことも考慮しているそうです。
高橋先生「PBL学習の良いところは、課題に対して、『自分事化』できることが挙げられると思います。自分から動かなければ何も進まないので、自らプロジェクトをコントロールしていく力を養うことができます。また、当学科の卒業生はシステムエンジニアも多くいますが、システム開発はチーム開発が中心です。そのなかで、プロジェクトに積極的に参画し、動かし、周りと調整しながら進める経験を学生のうちからできることは、社会で必要とされる力を養う良い機会になると考えています。」

模擬授業でのフィードバックを生かして教材を開発、改善

プロジェクトで作成された教材
自治体との連携協定を活用した
教育現場の体験が自分事化を促進
認知情報科学科でも積極的に活用されているPBL学習は、学生の主体性を引き出し、テーマを自分事化していく上で、目の前に「現場」があることでより効果的になるそうです。國宗先生、高橋先生の研究室では、新学科で積極的に取り入れられているPBLを、学科再編前から導入しており、2025年は旧学科最後の3年時に実施されました。内容は、レゴ®エデュケーションSPIKE™プライムを活用した小学生向けのロボットプログラミング授業を学生が設計し、実際に地元習志野市の小学校5年生を対象に授業を行うというものです。
2025年のテーマは受講する小学校での学習内容も踏まえ、「白杖ロボットを動かす、プログラミング教室」。國宗先生、高橋先生の研究室で卒業研究を行うための第一歩としても位置づけられています。
國宗先生「私たちの研究室では『教育』を卒業研究のテーマにするので、その実施経験があるか、ないかで研究の質は大きく変わってきます。そこで、まず教育を理解するためにこの授業を実施しています。」
高橋先生「研究テーマに取り掛かるには、まず教育を理解していることが重要ですし、卒業研究は自分でテーマを決め、そのテーマに従って進める大変なプロジェクトですので、その準備段階、プレゼミとしてプロジェクトの企画、運営を経験する場としても活用しています。」
この授業は、当初は有料のプログラミング教室を企画・運営するプロジェクトで、広報活動をして小学生を集めていたそうです。しかし、2020年から小学校でもプログラミング教育が必修化されることになり、このプロジェクトも大きく方向転換し、大学が結ぶ連携協定を活用して、習志野市にご協力いただき、学生が小学校へ出向く、あるいは大学へ子どもたちを招待して行う授業となりました。
高橋先生「連携協定を結ぶ習志野市の教育委員会が、ロボットプログラミング授業に関心を持っていただけたことが非常に良かったと思います。これで、目の前にいる小学生に授業をしなければならないという『教育現場』が目の前にでき、学生のなかで自分事化され、参加している全員が真剣に取り組んでいました。その環境を作ることができたことが非常に良かったと思っています。」
國宗先生「プログラミングは実社会では非常に多く活用されていますが、目に見えないこともあり、体感しづらい部分があります。それを、最近さまざまな場所で目にする機会が増えたロボットという目の前で動く教材を活用し、小学生にも実社会との関連性も理解しやすいことが習志野市にも評価いただいているのではないかと思います。」

座学ではなく、外部の力を生かして
チーム内外でプロジェクト推進を実践
自分事化されたPBL授業で、人に教える難しさを体験でき、卒業研究にも生かせる。そのポイントはプロジェクトのチーム分けにもありました。この授業には20人程度の学生が参加しており、複数のグループが連携して全体のプロジェクトを進める形で実施されています。
國宗先生「2研究室20人をいくつかの小グループに分け、小プロジェクトをまとめて大きなプロジェクトを実施するという形態をとっています。小グループでは問題なく運営ができても、他のチームとの連携が難しいと学生も感じているようですが、実社会では当たり前にあることなので、組織で動くことの困難さを、社会に出る前に経験してもらえることは、この授業の良い点だと思います。」
学科再編も踏まえ、教育内容の改変、改善がより進む認知情報科学科。今回のPBL授業などを今後どのように発展させていくのかを伺いました。
高橋先生「新学科の2年生でも同様の活動をしていますが、実際に教える場がないので、自分事化していない部分がありました。そこで、『教育現場』の重要性を踏まえ、公開講座という仕組みを使って、来年度は実際に子供たちに教えるところまで広げたいと思っています。また、今回、習志野市の5年生向けに行いましたが、例えば、人数の多いクラスやテーマを変えたり、学びの多様化学校からもお声がけいただいたりもしているので、対象者を変えるなど、少しずつ発展させて、難しい課題にも取り組んでいきたいと思っています。」
お話を伺い、学ぶ環境を設計、整備すると、受け身が多くなりがちな学びが能動的になり、将来の生き抜く力を養う場を作ることができる事例だと思いました。先行き見通しがつかない時代と言われていますが、どのような力を学生に養ってもらうのか、改めて考える時間をいただいたインタビューでした。

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