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Society5.0を見据えたロボットSIer輩出を目指す 東京都立蔵前工科高等学校の挑戦(前編)

2022年に東京都教育委員会が策定した「Society5.0を支える工業高校の実現に向けた戦略プロジェクト Next Kogyo START Project」※1を受け、将来さらに求められる技術革新に対応できる人材育成を行うため、2023年より改革を進めた東京都立蔵前工科高等学校(以下、蔵前工科高校)。将来のものづくりを見据え、機械科にロボティクスコースが新設され、2024年から機械コースとロボティクスコースに分かれ、工業技術のスペシャリスト育成に取り組んでいます。そこで、先進技術の学習(産業DX)人材の育成に取り組む、ロボティクスコースの増田泰治先生(以下、増田先生)に、お話を伺いました。

ロボットを活用・取り扱いができる人材育成を目指し
一人1台の実習環境を導入

– Next Kogyo START Projectにおいて、蔵前工科高校ではどのような施策に取り組んだのでしょうか。
増田先生「プロジェクトに掲げられている、課題解決型学習の推進や工業IT科目の導入などをはじめ、DX実習設備の導入やコース新設を実施しました。機械科ではロボティクスコースを新設し、2024年度からは機械コース・ロボティクスコースのいずれかを選択できるようにし、科ごとに特色を出していく形で改革が始まりました。一方で、カリキュラムはまだ未整備の部分も多くあり、2023年着任以来、この解決に着手しました。」

– カリキュラム構築に向けて、どのように取り組まれたのでしょうか。
増田先生「産業ロボット3台、協働ロボット※2 2台などが導入されていましたが、十分の実習等に活用できる状態にありませんでした。高等学校での教育期間3年を考えると、ロボットを設計・製作できる技術者育成は難しいと考え、『ロボットを活用・取り扱える技術者(ロボットSIer※3)の育成』を目標におきました。それには、電気や情報、制御、プログラミングはもちろん、ロボット安全特別教育も必要になります。これらに対応できるよう授業内容の見直しを行いました。」

– カリキュラム以外に工夫された点はありますか。
増田先生「ロボットSIer※3を育成するには、ロボットに触れる環境が必要です。そのため、新しい実習室の整備と同時に、『一人が1台の実習装置を使って学習できる環境』を整えました。具体的には、産業用ロボットだけで実習を展開するのは、台数を確保する費用や安全対策などの面で難しい部分もあり、まずはロボットの基礎的な構造や制御を学べるよう、例えば教育用ロボットアームのDOBOT Magician※4やレゴ®エデュケーションのSPIKETMプライム※5(以下SPIKE™プライム)などの教育用ロボットやPLC制御ユニットやエレベータ・信号機ユニットなどPLC制御装置を導入しました。これにより、段階的な学習ができる環境を整えることができました。」

 実習の様子

産業用ロボットの活用に向けて
基礎理解から段階的に学ぶ授業構成

‐ロボットSIerを目指した段階的な学習の始めのステップはどのようなものなのでしょうか。
増田先生「1年生では、一人1台SPIKE™プライムを使ったロボットカーでプログラミングの基礎やモータ・センサの扱い方、それらを使ったライントレースなどの自律制御を学びます。プログラミングは初心者でも直感的に制御できるプログラム言語ScratchをベースとしたSPIKEアプリを使用しています。プログラムした動きをすぐに確認でき、扱いやすいロボットカーを使うことで、目の前で動きが見え、うまく制御できない要因分析がすぐにできます。この授業では、プログラムの処理手順を開始から終了まで視覚的に表したフローチャートも必ず描いてもらい、アルゴリズムの重要性を理解することで、工業情報数理に繋がるよう設計しています。また、情報技術検定2・3級※6を全員受験できるようにすることも見据えています。」

– 次の段階の学習の内容、ポイントを教えていただけますか。
増田先生「2年生では、産業ロボットを扱う就業時を見据え、手軽に扱える教育用ロボットアームDOBOT Magician®を一人1台使って、その動きや仕組みを学び、産業用ロボットの実技試験に向けた実習、各種ティーチング(ダイレクト・オフライン・オンライン)に取り組みます。その後、1年次に使用したSPIKE™プライムを組み替えて作るベルトコンベアも組み合わせてミニFA(Factory Automation)※7システムを作り、効率的なFAとなるよう改善に取り組んでもらっています。ここでも使用しているSPIKE™プライムは組み替えて使える点が使いやすいと思い、活用しています。ミニFAをテーマとした授業は、ロボットSIerが行う業務に近い内容を学んでほしいという想いで、授業を考えました。そのほか、リレーシーケンス・PLC実習、生産技術なども行っています。」

– 最終学年ではどのような学びを設計されているのでしょうか。
増田先生「3年生では、これまで学んだことを生かし、2つの実習に分け、実習Aでは産業用ロボット実習やPLC制御実習、3D CAD、実習Bでは、ロボットアーム応用実習・ロボット制作や移動式ロボット・協働ロボット実習、材料実験実習を行います。その他、プログラミング技術や電子機械にも取り組んでもらいます。ロボットアーム応用実習では、2年時に使ったDOBOT Magician®とArduinoを組み合わせて、Arduinoの基礎や入力方法、可変抵抗器の使い方なども学びます。最終的にはDOBOT Magician®とはんだを使わずに機能を拡張できるブレッドボードを繋げ、さまざまなセンサを使ってより高度なロボット制御に取り組み、産業用ロボットの実習へとつなげられるようにしています。」

– 授業を通して、どのような点で生徒の変化を感じましたか。
増田先生「課題解決学習を推進しているので、さまざまな試行錯誤の時間を取り入れていることもあり、生徒たちの問題発見力や問題解決力が向上していると感じます。1年次のSPIKE™プライムを活用した授業で迷路の攻略方法を考えたり、ミニFAシステムの改善では自分たちで問題点や改善点を探したりすることが影響していると思います。また、教育用ロボットを使用することで、ロボットアームでも生徒の操作でけがをすることはなく、安全に授業できるので、安心感もあり、楽しみながら授業を受けていますね。」

ミニFAシステム実習装置セット

ミニFAシステムの改善にて 左:悪い例 右:改良例

ロボティクスコース教育課程


※2023年度入学生より、教育課程を変更した機械科の時間割
1年生ではコースは分かれず、機械科として共通の科目を履修し、各コースに繋がる基礎科目を学習できるように見直したそうです。

増田先生が考える今後の展望やそこに向けて取り組んでいる内容について、後編でご紹介します。

参考:
東京都立蔵前工科高校
※1 東京都 Next Kogyo START Project
※2 参考)協働ロボット
※3 参考)ロボットSIer
※4 DOBOT Magician®
※5 SPIKE™ プライム
※6 全国工業高等学校長協会 検定試験実施一覧(情報技術検定)
※7 ロボットSIer検定

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