AI人材育成

ディープラーニングの登場で求められるプログラミングスキルはどう変わるのか

AI(人工知能)の急速な発展を支えた機械学習法の一つであるディープラーニングの登場により、第三次AIブームが到来しているといわれています。AI分野における50年に一度のブレークスルーと期待されるディープラーニングについて基本的な知識と社会にどのような変化をもたらすのか、およびプログラマーに求められるプログラミングスキルはどう変わるかについて紹介します。

ディープラーニングの登場と第三次AIブーム

ディープラーニングの登場によってAIはどのように進化し、これからどのような分野で活躍が期待されるのでしょうか。

ディープラーニングとは

ディープラーニング(Deep Learning:深層学習)とは、簡単にいうと「機械に対して人が逐一指示を与えなくても、与えられたデータから機械が自動的に正しい答えや特徴を導きだせる学習法」のことです。この定義では、AIとどう違うか、なぜディープラーニングが50年に一度のブレークスルーと期待されるのかが理解しにくいので、AIとは何か、ディープラーニングの何がすごいのかについて説明します。

AI、機械学習(マシンラーニングとは)

AIの概念は広く、いろいろな定義がなされています。人工知能学会の設立趣意書では「AIとは大量の知識データに対して高度な推論を的確に行うことを目指したもの」と定義されています。言い換えれば大量のデータがあれば、そこから答えを自動的に導きだせる技術のことです。その技術がマシンラーニング(機械学習)と呼ばれる学習法です。通常のコンピューター(機械)は、人によって作られたプログラム通りにしか動作しません。つまり通常の機械は、答えを出すためのプログラムが人によって作られており、そのとおりに処理して答えを出しているだけです。プログラムで処理できなければ、それ以上のことは何もできません。

一方、機械学習ができるコンピューターは、コンピューター自らが答えを導きだしています。例えば、子どもは親から「危険なことや危険なモノ」「してはいけないこと」などをすべてについて教えられるわけではありません。子どもは、成長していく過程でさまざまな状況、モノなどに対して、その意味や正しい行動を親から教わります。それらの経験を多く積むことで自然に善悪や危険なこと、安全なことを理解して、教えてもらっていない未知の状況やモノに対して、適切な答え・行動を導き出せるようになっていきます。機械学習とは、このように子どもがたくさんの経験から未知の状況やモノに対して適切な答えを導きだせるようになるイメージを持つとわかりやすいでしょう。

では、このような機械学習法の一つであるディープラーニングは、機械学習とはどう違うのでしょうか。例えば、「車」として、自家用車、トラック、バスなどのたくさんの車種のデータを与えると、データになかったデザインの「車」も「車」と判断し、タイヤがあってもバイクは「車」と判断しないのが機械学習です。一方、ディープラーニングとは、四つのタイヤという1種の判断だけでなく、大きさ、形状などのいくつもの判断情報を加えると自動的に乗用車、トラック、バスなどを区別し、さらにはセダン、バン、ワゴンなど乗用車の車種の区別までデータになかった判断をできるようにする学習法のことです。このように答えを出すための判断を深めていくことからディープラーニングと呼ばれます。

前述の「車」の例では比較的簡単な処理ですみますが、人の顔を識別したり、囲碁や将棋で最適な手を判断したりするには何層も重ねて処理しないと最適な答えが出せません。そのため今までのコンピューターの処理能力では実現ができませんでしたが、コンピューター処理能力の向上や膨大なデータの収集が可能になったことで複雑なことまでが実現できるようになりました。

ディープラーニングが変えるもの

ディープラーニングの活用により、2016年には囲碁の世界で衝撃的なできごとがありました。ディープラーニング技術を利用したDeepMind社の「AlphaGo(アルファ碁)」が、人間のプロ囲碁棋士に勝利、しかも翌年には世界最強といわれた棋士に連勝しました。

これまでのAIを利用した囲碁ソフトは、囲碁の定石をプログラムしたもので人間の指示により動作していました。これに対し「AlphaGo」は、過去の棋譜を学習し、AI囲碁ソフト同士で対戦してさらに学習を深めていくディープラーニングのアプローチが取られました。その結果、人間のプロ囲碁棋士に勝利した初のコンピューター囲碁プログラムとなったのです。

また、ディープラーニングは、画像認識能力を飛躍的に向上させることでも注目されています。これにより監視カメラの機能向上、定点カメラによる交通量の詳細分析、さらにロボットが視覚的に物事を判断する能力の大幅な向上などが期待されています。

医療の分野においては、ディープラーニングによりCTスキャン画像を認識し、医師が見落とす可能性のある肺がんを検出するシステムが開発されています。人間の医師より精度、時間において優秀な結果を出すという報告もあり、医療技術の向上と医師の負担軽減が期待されています。

ディープラーニングの登場と消える職業・残る職業

これまでもAIに注目が集まると、そのたびに消える職業・残る職業といった予測がされてきました。ディープラーニングの登場によってこの予想はどう変化したのでしょうか。

20年後に消える職業

2013年、英オックスフォード大学のAI研究者マイケル・オズボーン准教授は「雇用の未来」という論文を発表しました。このなかで、「今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化」されるという未来を予想しました。さらに、コンピューターによって置き換えられる、すなわち消える職業も予想されたことからAIへの注目が高まるとともに、各種メディアでも大きく取り上げられました。

明治大学の小笠原泰教授は、「プログラミングそのものが機械化される」として、消える職業にプログラマーをあげています。また、複数のコラムやIT技術者の交流掲示板といったところでも、「AIの発達によってプログラマーは消える」といった話題が、たびたび取り沙汰されてきました。

このように、ディープラーニングの登場で、いろいろな職業が消える日が訪れると予想され、その一つとしてプログラマーもあげられています。

プログラマーは消える?

しかし、本当にそうなのでしょうか。ディープラーニングの登場でこの世からプログラマーが消える日が来るのでしょうか。これに異を唱えて、人類で最後に残る職業こそプログラマーだと予想するのが、株式会社カドカワ株式会社 代表取締役社長の川上氏です。ディープラーニングの登場でロボットが、人間の代わりにさまざまな仕事をするようになると、そのプログラミングをするプログラマーこそ最後まで必要だと述べています。これは、AIの革命ともいわれるディープラーニングの登場で、プログラマーが担う役割、プログラマーに求められるスキルも変化していくと予想されているからです。

よりクリエイティブなプログラミングへ

このような議論が生まれるのは、コンピューター技術の発展によって「プログラマー」という職業・役割が加速的に拡大しているからです。

「雇用の未来」の著者マイケル・オズボーン准教授も「クリエイティブでオリジナリティがある仕事は今後もオートメーション化されることはない」と予想しています。「消えないプログラマー」になるために求められるプログラミングスキルも、AIの進化に合わせてよりクリエイティブなものへと変わっていくと考えられます。AIの革命といわれるディープラーニング。その基礎を理解しておくことが、これからのプログラマーに必要になっていくと予想されます。

AIとともにプログラマーも次のステージへ

AIを急速に発展させたディープラーニングについて解説し、ディープラーニングによってプログラミングスキルがどう変わるのか、それに伴い消えると予測される職業についてまとめました。これからの社会に必要とされるAIに詳しい人材が不足しています。次のステージに行くためにもプログラマーには、AI、特にディープラーニングを理解することが求められています。

参考

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