日立造船が実践、全社員によるデータ利活用を目指す人材育成

日立造船が実践、全社員によるデータ利活用を目指す人材育成

近年、企業が業務で取り扱うデータは競争力の源泉としての価値を高め、データ利活用の動きが増大しています。新たな経営戦略の構築や業務効率化など、企業によってデータ利活用への期待は様々です。そのような中、データを提供する側と活用する側が共存する環境において、企業はデータ利活用をどのように進めていけば良いのでしょうか。

今回は、環境・プラント、機械、社会インフラの三分野で事業を展開する日立造船株式会社(以下、日立造船)ICT推進本部 ICT事業推進部が進めるデータ利活用を見据えた人材育成をご紹介します。IoTを通じて収集したデータを分析・活用し、事業のデジタル変革に取り組む同社が、データ利活用の推進に向けてどのような活動をしているのか、ICT推進本部 ICT事業推進部 情報科学技術グループの杉本淳グループ長、藤本雄斗氏、石塚諒一氏の三名にお話を伺いました。

デジタル技術を活用し、デジタル変革に邁進する日立造船

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Hitz先端情報技術センター(A.I/TEC)

2021年で創業140周年を迎える日立造船は、再生可能エネルギーの技術をはじめとする「環境・プラント事業」や「機械事業」、「社会インフラ・防災事業」を柱に事業を展開しています。2018年10月には、IoTやビッグデータ、AI(人工知能)などのICT活用の拠点として、「Hitz先端情報技術センター(通称A.I/TEC、エイアイテック)」の稼働を開始しました。同社は、「A.I/TEC」を中心にデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、革新的な技術や新規事業の創出、業務の効率化を目指しています。
「A.I/TEC」の運用も担うICT推進本部は、デジタル技術を活用して顧客サービスの高度化をめざす「事業のデジタル変革」と、全社的なICT基盤の構築を通じて「業務プロセスのデジタル変革」を推進する役割を担っています。その中でICT事業推進部は、主にデータの収集やデータ蓄積の管理、データの活用や分析を遂行しています。近年は、各事業部門のデータの一元化を目指し、全社的なサービスプラットフォーム「IoTセキュアプラットフォーム」の構築・整備に取り組まれています。杉本グループ長、藤本氏、石塚氏は、各事業部門に対して、データ活用・分析を中心に、データから新しい経営資源を生み出し、新規事業の実現をデジタルの観点から支援しています。

効果的なデータ利活用に向けた人材育成

全社的なデータ利活用に向けて、ICT事業推進部は多くの事業部門と連携して業務を進めています。これまでは事業部門の社員と既存データの活用法や新たなデータの収集法を検討する際、データ利活用における知識や重要点をプロジェクトごとに説明していました。プロジェクトに携わる全員の前提知識を揃えることで、データ利活用に関する知識や理解度を高め、潤滑なプロジェクト推進を図っています。しかし、既にデータ収集ができていて活用に向けたフェーズに移っている部門もあれば、データ収集自体が未着手の部門もあり、状況はそれぞれです。部門ごとに大きく異なる状況から、中長期的な活動を見据えて、プロジェクトの有無に関らず、全社員を対象にデータ利活用に向けた人材育成を進めるべく、動きはじめました。
これまでデータ利活用に関する勉強会や研修を実施したことはなく、まずは、データ利活用に関心を持つ社員なら誰でも参加できる研修の開催を決めました。研修で最も伝えたいことはデータ利活用のノウハウではなく、データを活用していく上での各事業部門の課題把握や課題設定の重要性でした。ICT事業推進部はデータ活用や分析を専門に担っていますが、データを活用し新規事業を生み出していくために、事業部門の存在は欠かせません。データを効果的に活用していくには、現場でのリアルな課題や最も解決したい事項など事業部門だからこそわかる観点が求められ、その重要性を伝えられる研修を検討し始めました。

データを活用していく上で重要なことを体感できる研修

研修内容を模索する中でロボットを活用した「データ分析プロセス実践研修」にたどり着きました。この研修は、データ分析の概念を学び、演習課題として実際にロボットを動かしながらデータを収集・分析し、どのようにビジネス課題が解決されるか体験を通して学びます。検討段階で同研修を受講し、現在は社内で講師を務める藤本氏と石塚氏に、研修の魅力や導入に踏み切った理由を伺いました。

藤本氏「自分でロボットを動かしてデータ収集し、分析結果を見て再度データ収集する、という作業を短時間で繰り返し体験できることが魅力でした。弊社で扱う製品は大型のものが多く、簡単に何度もデータ収集をしにくいことが多いため、研修では条件を変えながら何回もデータ収集を試せることが良かったです。また、データ収集の直後に分析をおこなえることで、分析を行う上での課題を意識しながらデータ収集ができる点も優れていると感じます。」

石塚氏「データ活用によりビジネス上の課題を解決し、新たな価値を創造するには、現状の課題やデータの利活用を通して、達成したい目的を明確化することが重要だと考えています。この研修では課題や達成したいことを意識しながら演習に取り組める点が、私たちが最も伝えたいことに当てはまると感じました。また、データを取得したときに、分析に活用できない、いわゆるごみデータの存在を伝えられるのも特長的でした。目的を達成するために、価値あるデータを収集・活用することがいかに重要であるかを理解してもらえる演習になっていると思います。」

課題の把握や目標設定の重要性を伝えるために工夫したこととは

社内で研修を実施する際は、データ利活用において課題の把握や目標設定の重要性に気付いてもらえるように、データの精度の説明と収集データによる分析結果の共有に最も時間を割いています。
予測や分類結果の精度について、研修ではやみくもに数値上の精度を追い求めるのではなく、現状を理解・分析した上で解決したいビジネス上の課題は何か、課題解決に向けてどの程度の精度が求められるのか等をデータ収集前に整理しておくことの大切さを説きます。実際の業務においても、事業部門がどのような課題を持ち、解決するためにはどの程度の精度が必要になるのかを意識づけるのに役立っています。
研修の最後には、参加者同士で分析結果を共有します。そうすることで、同じ目標に対して同じロボットを同じ環境で動かしているにも関らず、異なる分析結果になっていることがわかります。ここでは、各々が目標を達成するためにどのような観点で条件を設定し、データを収集・再収集したのか、どんなごみデータがあったのか等をお互いの結果から学び合います。実務でもデータを活用する上で、全データを揃えて終わりではありません。事業部門と一緒に解決したい課題や目標を考え、目的にかなうデータ利活用方法を検討していきたいため、分析結果を共有する時間を通して課題設定の重要性を伝えています。

研修の効果とこれからのデータ利活用に向けて

研修はデータ利活用に関心を持つ社員なら誰でも参加できるよう、全社員を対象に募集しました。その結果、事業部門に加えて人事や広報、調達といった業務部門からも参加がありました。研修に参加した社員からは、「意識改革の意味で、データ分析の実務に携わる多くの方が受講すべき内容だと思いました。」、「LEGOを使って実際に手を動かしながらデータ分析のプロセスを学ぶという、今までにない研修内容で、とてもいいと思いました。」など、ポジティブな意見が多く上がりました。研修が実務に生かされるまでには時間がかかりますが、データ利活用に対しての知識や課題設定の重要性を認識してもらう機会となりました。さらに、副次的な効果として、研修後に参加者から所属部門のデータ利活用について直接相談が届くようになりました。通常業務ではあまり接点がなかった部門や社員に、研修を通してICT事業推進部の活動に対する認知を高めることができ、他部門と一緒にデータ利活用を検討するきっかけになっています。

全社でのデータ利活用に向けたプロジェクトや事業がさらに増えていく中で、今後何に注力していくのか杉本グループ長に伺いました。

「我々の活動はまだ始まったばかりです。この研修を起点に全社でのデータ利活用に向けて積極的に活動していきたいです。まずは、データ利活用に対する敷居を低くし間口を広げることで、さらに活性化できるようにしていきたいです。また、各事業部がどんなことを解決したいのか、達成したいのかを明確にできるように一緒に活動していきたいです。」

データ利活用に重要な課題設定について周知し、どのようにデータを活用するか、どのようにビジネスにつなげるかを事業部門と一緒に考えていくために、今後も定期的に研修を開催していくそうです。同社が掲げるデジタル変革に向けて、デジタルの観点から支援するICT事業推進部の活動はこれからも続きます。

参考リンク


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