合意形成が目的。価値創出やイノベーションに適した新しい会議手法をレポート

働き方改革、AI活用、ダイバーシティ、SDGsなど、企業は組織が抱える問題から世界が取り組む国際的な目標まで、様々な課題に直面しています。上司や上層部から「我が社も働き方改革を始めたい。何か提案してくれないか?」、「SDGsへの取り組みを現場で考えてほしい」といった指示があったものの、「何から始めれば良いのか困っている」という現場は多いのではないでしょうか。経験も正解も無い未知の課題に対して理想の姿を描きアクションを起こしていくことは、これからの企業にとって一層必要となるプロセスと考えます。

本記事では、アイデア創発やイノベーションと相性の良い、会議の独自メソッドを開発し、多数の企業や学校へと実践を拡げている株式会社HackCampの矢吹博和 副社長、菊井深雪さんへのインタビューを通して、合意形成を目的とした新しい会議手法をレポートします。

共感と合意形成で得られる、正解の無い複雑な問題解決の糸口

現代社会に存在する問題には三つのタイプがあると言われます。

  1. 単純な問題
    例えば、「英語版のWEBサイトを制作したいが、担当できる人材が居ない」というものです。外注する、あるいはスキルのある人材を採用するといった対応で解決できるため、正解のある問題と言えます。
  2. 複雑な問題
    時間をかければ論理的に正解を導くことができるものです。例えば、「今後○年以内に社内で英語を公用化したい」といったものが考えられます。
  3. やっかいな問題
    正解の無い複雑な問題です。例えば、「当社が目指すダイバーシティのあり方は?」、「人材採用・育成における戦略は?」などです。

現代は「3. やっかいな問題」が増え続けています。やっかいな問題は、理想が無いまま、いきなりどのように(How)を求めてはいけないと言います。正解が無く、複雑な問題にどう向き合っていくか、新しい会議手法では、参加するメンバーがそれぞれの価値観を率直に表明し、互いに受け止め、共感した上で合意形成に至ることで、各自が当事者意識を持つことができ、その後のアクションにつながっていきます。

「ありたい姿」から始める「バックキャスティング」

矢吹さんは、かつて企業の人事部門で研修の企画も担当されていたそうで、組織開発のメソッド策定に取り組む中で、現場で活用されていない研修が多いことに疑問を抱くようになり、現場で活用でき、現場に根づく手法の必要性を強く感じるようになったと言われます。そうしたご自身の想いと、お客様や市場のニーズが一致し、現場の社員が自分たちでビジョンを選定し、具体的なアクションに落としこむという結果を重視した手法が誕生することになりました。

フォーキャスティングとバックキャスティング

新たな会議手法には「バックキャスティング」というアプローチが採用されています。一方、これまで多くの企業や課題解決の場面で活用されてきたのは「フォーキャスティング」と呼ばれるアプローチです。ここで二つのアプローチについてご紹介します。

「フォーキャスティング」は、現在に焦点を当てて課題を見極め、その改善・解決方法を考えて実行します。今の課題を定義するところから始めるため、分かり易いやり方で、過去に事例があったり、現在の枠組みで解決できたりといった、現在の延長線上の課題解決には適しています。しかし、誰にも経験のない領域へのチャレンジなど、全く新しい発想が必要となる正解のない課題に適用すると、現在を中心に考えてしまうため、飛躍的なアイデアが生まれにくいという弱点があります。

「バックキャスティング」では将来の「ありたい姿」を描くところから始め、それを実現するために何をすべきかを考えます。チームのメンバーにとって将来目指す理想の姿=ありたい姿をイメージし、合意形成します。その「ありたい姿」を実現するために、中期、短期に取り組むこと、解決すべきこと、今すべきこと(具体的なアクション)を考えていきます。バックキャスティングは、働き方改革や新規事業の創出、イノベーションといった誰もが経験の無い未知の分野への取り組みに適していると言われ、大きな目標に対する手法のように見えるかもしれませんが、そうではありません。先に「ありたい姿」を描いて具体的な活動に落としこむため、例えばチームメンバーの育成計画といった日々の取り組みから、会社全体に関わる事業戦略立案まで、テーマの重要度や企業規模に関わらず十分に活用できます。

合意形成で高まる当事者意識

部門や会社が抱える課題をどのように自分ごと(=当事者意識を持つ)にしてもらうかは、企業にとっての悩みどころです。イノベーションやアイデア創発をねらいとしてブレーンストーミングやワールドカフェといった場を設け、実際に試してみたものの、参加者からはよくある意見が出ただけで、その後の具体的な活動にはつながらなかったというお話を聞きます。
矢吹さんによると、バックキャスティングを使った会議手法は特にアイデア創発に適しているとのことで、これまでの会議との違いとして次の3点があるそうです。

  1. 目的は合意形成
  2. 短時間で実施する(50分~1時間程度)
  3. 自分でやる、コミットメントしてもらう仕掛け

目的は合意形成

新しい会議手法では、参加するメンバー全員で将来目指す「ありたい姿」を考え、明らかにし、合意します。ファシリテーターは、各自の考えていること、感じていること、キーワードを自由に発言できる場を作ることに注力します。正解のないテーマだからこそ、各メンバーから出される単語やイメージを大切に扱い、メンバー全員で「未来のありたい姿」を合意します。合意することでメンバーの当事者意識は高まり、その後のアクションプラン策定や実行の場面でもモチベーションを高く保つことができると言います。

短時間で実施する

会議時間を短くする、会議そのものを減らすといったことは、多くの企業が既に取り組んでいることでしょう。しかし、現実には1時間の予定が2時間に延長されたり、結果が見えない会議が繰り返されたりしている例をご存知かと思います。
新しい会議手法は短時間で結果を出すことを重視し、一回の所要時間が50分から1時間とされています。ファシリテーターはツールを活用し、時間に沿って会議を進めることに徹します。短時間で結果を出すことが、気軽な参加と繰り返しの開催を可能にします。

自分でやる、コミットメントしてもらう仕掛け

参加者に自分ごととして捉えてもらうために、コミットメントしてもらう仕掛けがあります。従来の課題解決では、問題を見つけその原因を追究して対策を考え解決するギャップアプローチが主流でした。「ありたい姿」を考える場では、現在の姿からありたい姿を実現するためのアクションに焦点を当てる未来創造型のポジティブアプローチが採用されています。検討するテーマを明確にし、うまく出来ていることを見つけ、ありたい姿を合意し、実現方法を考え、アクションを実行します。ありたい姿を自分たちで合意するため、実現したい気持ちが高まり、モチベーションを維持して活動を継続できます。

まとめ:会議を変えれば、組織が変わる

新規事業、働き方改革、女性活躍、SDGs、地域活性化、あるべき会議運営など、矢吹さんや菊井さんがこれまでに扱ってきたテーマは実に様々です。対象も企業人から専門学生や子どもたちまで広がりが出てきました。製造業、SIer、サービス業の新規事業開発チームや品質改善チームでの活用から、専門学校のカリキュラムに組み込まれたり、会議形式に不慣れな、地域の皆さんが参加するワークショップでも使われたりと、活用場面は多岐に渡ります。キーワードからありたい姿を描き、合意形成するこの手法は、全員が発言する、単語で考える、理想を言う、短時間で実施できるなど、始めやすいポイントが多く、世代も職種も限定されません。

課題にフォーカスして議論すると遠慮が出てしまいがちな企業現場で、将来のありたい姿を共に描き合意することで、具体的なアクション実行への動機付けを促すこの手法は、組織改革の手法として今後ますます提供場面が増えていくことでしょう。

参考リンク

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