世界的な人手不足(労働力人口の減少)を受けて、産業用ロボットの販売や導入は今後も増え続ける見通しです(※1,※2)。特に製造業の現場では、こうしたロボットの仕組みを理解し、制御の知識を持った人材が求められており、日本でも特に高度な内容を扱い即戦力となる人材育成にフォーカスしている職業能力開発大学校などで、コース開設が急増しています。
本記事では、デスクトップに設置できる非常にコンパクトなロボットアーム「DOBOT? Magician」を解説します。卓上サイズ、重さ3.4kgと片手で運べる小型の筐体で、ロボットアームの構造や原理を理解し、制御を学習できます。
卓上ロボットアーム「DOBOT? Magician」の特徴を知る
日本は産業用ロボット大国で、稼働台数は世界トップ、主要メーカーの売上高でも世界ランキングの上位に日本企業が複数社入っています(※1)。2018年10月、国際ロボット連盟(IFR)は、労働力人口の減少(人手不足)で自動化の需要が一層高まることを受けて、産業用ロボットの世界販売台数は2021年まで増え続けるという見通しを発表しました(※2)。
これまで産業用ロボットと言うと1体あたり1,000万円を超える高価格帯が主流で、小型で安価とされるタイプでも100万円を超えるものが一般的でした。しかも、本体だけでは使用できないことが多く、アタッチメントと言われるハンドやオプションの各種センサー、筐体を設置するための架台、協働ロボットであれば安全柵など、実際に現場で使用するためには様々な周辺パーツが必要でした。
本記事で解説するDOBOT? Magicianは、デスクトップに設置できる非常にコンパクトなロボットアームです。4軸アームを備え、ツールヘッドとして次のようなキットが標準で付属しています。
- 吸盤キット
- 空気式グリッパー(500gまでのオブジェクトを掴んで持ち上げられる)
- ライティング&ドローイングのキット
- 3Dプリンティングキット(フィラメント20m付き)
Standard VersionとEducational Versionの違い
DOBOT? Magicianには標準セットのStandard Versionと教育パッケージとされるEducational Versionがあり、後者のみに含まれるオプションパーツがあります。Educational Versionには上述の各キットに加えて、Wi-Fiモジュール、Bluetoothモジュール、ジョイスティックコントロールキットが含まれます。
Standard Versionでは、DOBOTとパソコンを常にUSBケーブル(両パッケージに同梱)で接続した状態でロボットアームを制御する必要がありますが、Educational VersionではBluetooth通信やWifi接続を使用できます。
コンパクトな筐体で実現される機能
- 正確で繊細な繰り返し作業が可能
指定した位置に繰り返しヘッドを動かす精度(位置繰り返し精度)は0.2mmです。 - 3Dプリンティング
Repetier Host(3Dプリンティングソフトウェア)と互換性があり、材料のポリ乳酸(polylactic acid)を積層してオブジェクト(物体)を作り上げます。(解像度0.1mm)縦・横・高さがそれぞれ150mmまでの大きさを製作できます。プリンティングの速度は積層の密度やオブジェクトの内部に空間を作るかなどで大きく変わります。 - 座標記録と動作の再現(ティーチング&プレイバック)
複数のXYZ座標を記録させるTeach、その一つ一つをたどるシーケンスを形成します。ユーザーが設計した動作を再現するPlayback機能もあります。 - ピッキング、グリッピング
ヘッドを吸盤キットやグリッパーキットに付け替えることで、小さなブロックや部品をピッキングしたり、500g程度を持ち上げて移動することができます。 - Blocklyでのグラフィカルプログラミング
Google Blocklyに基づいてDOBOT Magician専用に開発されたソフトウェア「DobotStudio」を使用することで、ブロックを並べるだけでプログラミングできます。グラフィカルインターフェースでプログラミングできるため、初心者の学習にも適しています。 - 拡張ポートを活用した機能拡張
13個の拡張ポートとプログラマブルキーが付いているため、外部デバイスを接続できます。ユーザーが取得したいデータに応じたセンサーを接続することで、機能を拡張できます。
DOBOT? Magicianで学ぼう
DOBOT? MagicianにはWindows、Mac OS(各OSのバージョンは要確認)にインストールできる専用ソフトウェアの「DobotStudio」があり、メーカー公式WEBのダウンロードセンターからダウンロードできます。ブロック型のアイコンをつないでいくことでプログラミングできるため、ロボティクス、プログラミングといったSTEM教育の初期段階から活用できます。
画像認識と制御(画像処理)
パソコンにロボットアームとWEBカメラを接続して、画像認識とその制御を学習できます。開発環境としてVisual Studioを、プログラミング言語としてC#を使用してトランプ並べにチャレンジする教材があります。
外部デバイスの接続(各種センサー)
DOBOTには外部機器と接続するための拡張I/O(Input/Output)が三カ所に備えられています。各インターフェースの拡張I/Oは詳細資料で確認してください。(技術動画とサンプルプログラム)
- フォアアームインターフェース(アーム部分)
- ベース18ピンインターフェース(本体のベース背面)
- ベース10ピンインターフェース(本体のベース背面)
次のセンサー類はベース18ピンインターフェースとの接続および動作が確認されています。
- アナログスイッチセンサー、発光ダイオード
- デジタルサウンドセンサー、デジタルスイッチセンサー、デジタルタッチセンサー、デジタルライトセンサー、デジタルローテーションセンサー
センサー入力値による制御
例えば、生産ラインを模したベルトコンベヤーに流れてくる木製ブロックの色をカラーセンサーの入力値で識別し、色ごとに異なる処理(グリッパーで掴んで持ち上げコンベヤーから外す、特定の色だけを別の置き場に積むなど)をさせます。
圧倒的なコストダウンも夢じゃない!20万円を切るロボットアームDOBOT?
先述の通り、産業用ロボットアームは1,000万円以上が主流で、リーズナブルと紹介されるものでも100万円を超えるものが大半でした。この数年で卓上に設置できるコンパクトな製品も出てきているものの、依然としてコストが課題となり導入に踏み切ることが難しいという声が聞こえてきます。DOBOT? Magicianの20万円を切る低価格(単体なら15万円を切る)は大きな強みです。
これまで1台の導入さえ困難だったロボットアームを実験用に購入したり、生産ラインで複数台を組み合わせて省力化を図ったり、技術者育成の現場や教育機関では1人1台の学習環境を整えたりといったように、より柔軟な導入も可能となります。生産ラインの自動化、省力化といった課題、ロボットアームの知識や制御技術を身に付けた人材育成など、目指すところを明確にした上でロボットアームの活用ポイントを探ってみてはいかがでしょうか。
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参考リンク
- ※1「産業用ロボット市場の動向」2018年2月 三井住友銀行 コーポレート・アドバイザリー本部 企業調査部
- ※2 日本経済新聞 2018/10/18「産業用ロボット成長続く、2021年まで年14%」
- ロボットアーム DOBOT??Magician製品詳細/プログラミングガイド
ダウンロード資料
- 「卓上ロボットアーム DOBOT Magician 必ず聞かれる10の質問」公開中