Next Kogyo START Project※1を受け、改革を進めた東京都立蔵前工科高等学校(以下、蔵前工科高校)。将来のものづくりを見据え、工業技術のスペシャリスト育成に向けて、先進技術の学習(産業DX)人材の育成に取り組む、ロボティクスコースの増田泰治先生(以下、増田先生)に伺ったお話の後編です。
前編:https://learninglab.afrel.co.jp/8774
特色もありつつ基礎を固められる学びの設計へ
機材導入や業界団体などの外部の力も活用
– ここまでロボットSIer育成に向けた、計画的な教育を伺ってきましたが、カリキュラムを考えるにあたり、苦労もあったと思いますが、どのように解決してきたのでしょうか。
増田先生「導入されていた産業用ロボットが3台もあるという地方の学校からすると珍しい状況にはありましたが、基礎を飛ばすことは良くないと考え、基礎を固めるために、DOBOT Magician®※2など教育用ロボットを導入することにしましたが、その過程も試行錯誤しました。また、少しでも参考となる情報を集めるために、3校ほど授業の視察にも行きましたが、学校ごとに重要視することや育成する姿が違うので、蔵前工科高校としての特色ある学びを独自に考える必要があった点も苦労しました。また、日本ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)※3の方など外部の有識者のアドバイスも活用しました。」
– しっかりと学ばれた生徒のみなさんのロボットSIerとしての活躍が期待されますね。
増田先生「2026年3月がロボティクスコースの最初の卒業生を輩出するのですが、進路支援については、まだまだ考えていかなければならない部分があると思っています。3年という時間の制限もあり、ロボットを扱える技術者の育成も目標にしていましたので、ロボット製作やロボット工学に関心のある生徒が大学で学べるよう、指定校推薦や総合型選抜を活用した大学への進学などを進められるようにすることが必要だと思います。また、実社会で活躍できる場として、SIer企業への受け入れをお願いしていく取り組みも必要だと考えています。本校のロボティクスコースの認知度を、大学や企業に高めることで、生徒の活躍の場をさらに広げられるようにしていきたいと思っています。」


産業用ロボットを使用した実習を受ける生徒の様子
応用的な実習への発展を目指し
教材開発や競技会参加を推進
‐試行錯誤の末、基礎を固めつつ、実用も見据えたカリキュラムとして授業がデザインされていますが、今後取り組んでいきたいことはありますか。
増田先生「現在、機械科では1年次に機械コース・ロボティクスコース双方の内容を取り入れ、2年次のコース選択に対応できるようにしています。教育内容としてほぼ完成しつつありますが、内容としてはまだまだ組み込んでいきたいものがあります。より多様な実習内容を早い段階から行い、その後、応用的な学習へと発展させていきたいと考えています。その実現のために、今後も教材開発などを行っていきたいですね。また、ロボティクスコースの認知度を上げていくためにも、資格取得や競技会への出場も積極的に進めていきたいと思います。」
– 競技会への参加は、成果発表の場としてはもちろん、生徒の学習意欲の向上も見込めそうですね。
増田先生「ロボットSIer業界で認知度を向上していくためには、それに対応した競技会への参加が効果的だと考えていて、『高校生ロボットシステムインテグレーション競技会(SIリーグ)※4へ出場しています。参加する生徒のレベルアップにもつながるのですが、教員のスキルアップにもつながる大会になっています。この競技会は企業のサポートも受けられるので、これまでのDOBOT Magician®など教育用ロボットを活用した学びをさらに発展させることができると同時に、実社会での活躍につながる非常に効果的な場だと感じています。参加した生徒の反応もよく、意欲的ですので、継続的に取り組んでいきたいと考えています。」
– 貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
人手不足や自動化が進む社会において、ロボットを「活用できる」人材育成は重要なテーマです。蔵前工科高校の取り組みは、教育現場からその課題に応える一つのモデルと言えるのではないでしょうか。


参考:
東京都立蔵前工科高校
※1 東京都 Next Kogyo START Project
※2 DOBOT Magician®
※3 日本ロボットシステムインテグレータ協会
※4 高校生ロボットシステムインテグレーション競技会