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クルマも、ソフトウェアも知り、システムを理解できる オーバーオール人材を育成する

「いのちを守る」ことを大切にしてきた、自動車メーカーの株式会社SUBARU。総合安全を掲げ、販売台数100万台あたりの死亡・重症交通事故件数を10年で約50%低減するなど※1、さまざまな技術をクルマに実装しています。今回は、それらの技術を支える人材育成、特にソフトウェア人材の育成について、新人教育をリードする同社技術本部 E&Cシステム開発部の小柳裕さん、技術管理部の塩谷桂大さん、加茂下浩隆さんにお話を伺いました。

タスクフォースを立ち上げ教育計画を企画
受講メンバーも参画し、改善を継続

市場環境の変化を踏まえ、SUBARUでは2022年に新人教育を中心とした人材育成計画の見直し、企画を担うタスクフォースが立ち上がった。その背景について、小柳さんは次のように話してくれました。「自動車業界も電動化が進み、業務も変わっていくなかで、当社も対応できるメンバーを育成し、開発のスピードを上げる必要があります。その課題に対応すべく、タスクフォースが立ち上がりました。そのメンバーで議論するなかで、『ソフトウェアファースト』は押さえつつも、車も知っている、ソフトウェアも知っている、そして、一人のエンジニアとしてシステム全体を理解して、それを実際に仕様として考え、実装、確認ができる、オーバーオール人材の育成を目標にすることにしました。この考え方を踏まえ、ここ数年、新人教育を中心に教育を組み立てています。」

組込みソフトウェアに関する研修カリキュラムの検討は、小柳さんを含めたタスクフォース内ベテラン技術者3人で進めることになった。何が必要か、どんな順番で行うのか試行錯誤の末、1年目を実施。現在は、タスクフォースで検討したカリキュラムを受講した若手メンバーも参加し、4人で進めている。現在の体制に至る過程について、小柳さんは「現行のカリキュラムに足りない部分などをヒアリングしたり、再度見直しなどをしたりしながら年々改善を加えていますが、実際に研修を受講した若手を引き込んだことで、より良い研修にしていけるようになったと思います。ただ、まだまだ試行錯誤の途中で、完成はしていません。」とお話いただきました。


※この画像はイメージです。

プログラミング経験がなくても楽しんで学べる
全体研修にロボットプログラミングを使った研修を取り入れたねらい

基礎的な知識を身に付けてもらうために、タスクフォースでどのような研修を実施すべきか、検討しているときに、カリキュラムの一つとして取り入れたのが、レゴ®マインドストーム®EV3を使ったロボットプログラミングでシステム開発を学ぶ研修だった。導入は、タスクフォースメンバーに経験者がいたこともあったが、初期教育として開発の基本を押さえる内容と難易度が最適だったことから「システム開発体験研修※2」の導入が決まった。実際に新人研修を運営する塩谷さんは、その効果を次のように話してくださいました。

塩谷さん「未経験でも、ロボットを動かすことができれば、自信が生まれます。体験型のプログラミング研修で、これを体感してもらう機会を提供することで、学びが加速すると感じています。実際に研修受講者に、毎回取っているアンケートの結果からもこの研修が、プログラミングの経験がない方でも楽しんで学ぶことができていることが見て取れます。研修はプログラム経験のある人がグループワークで他のメンバーをサポートする姿も見られますし、講師も丁寧にフォローできる体制が整えられていたりと機能的に運営できています。また、ロボットを使うことで実際にプログラムをロボットに組み込んで、その結果が動きとして目の前で再現されることで、理解が深まると同時に達成感が得られ、その座学では得られない“手応え”が学習意欲を引き出し、システム開発の基礎を自然に身につけることができる、その良い流れが生まれる非常に有意義な研修になっていると感じます。」

また、企画を担当している小柳さんは、「ソフトウェア開発の経験がある学生ばかりではないため、専門的に学んできた学生を採用することは難しく、スキルも様々な状態で入社してきます。この研修はモノづくり体験という位置づけであり、はじめの一歩として、新入社員全員に受講してもらっています。また、ソフトウェア開発の経験があったとしても、大学時代は我流で開発していることも多く、この研修で、V字プロセスの重要性を理解できたという受講者の声もありました。」と受講生の反応を教えてくださいました。

※この画像はイメージです。

育成に時間が必要な実装・コーディングを
効果的に学ぶ研修検討を進めていきたい

現状、実施している研修カリキュラムは、研修後、職場に戻って技術的な会話についていけるようになる、現場で起きている課題が理解できるようになるなど受講生も研修効果を感じているようです。研修運営を担当する加茂下さんにシステム開発体験研修の印象を伺いました。

加茂下さん「ものづくり全体の講座として、要求、要件定義からテストまでの一連のV字開発を体験していることで、これからクルマ作りを担うエンジニアとして大事なモノづくりの楽しさを受講生に感じてもらうことはもちろんのこと、その後に設定している組込みソフトウェアの研修に入る準備が受講生のなかで整うので、最初に行うソフト教育としては良い研修になっていると感じています。

現在、ロボットプログラミングを活用した研修は、受講者がビジュアル言語を使って決められた課題に対して指定された機材で取り組み、そのなかでV字プロセスを学ぶ基本的な開発プロセスを理解・体感してもらう研修と、C言語を使って、課題に対し、自由にセンサなどの最適なデバイスを受講者自ら選んで動かし方、テスト、実装を行う実際の開発の近い研修の2種類を導入しているそうです。現在の研修を進めるなかで見えてきた課題、そして今後の展望を小柳さんに伺いました。

小柳さん「モノづくりの全体を掴んでもらうこと、デバック時にも対応できるよう基礎を抑えるためにC言語を学んでもらうことはできてきているので、次にステップアップしていきたいと思っています。
例えば、開発部門毎のソフトウェア開発に関するニーズを確認し、抽出内容から本教育を改良する事で役立つ項目があれば取り入れていく事、また教育全般としてはV字プロセスのなかでも扱っていない、OSに関係する研修の検討を進めていけたらと考えています。実装・コーディングはエンジニアとして独り立ちするのに5~10年かかると言われていますので、効率的にここを学べる研修を考えていきたいと思っています。」

「総合安全」を掲げる自動車メーカーにおけるエンジニア育成の取り組みは、安全への取り組みと同じように、継続的な改善を続けるなかで形作られてきているものでした。

株式会社SUBARU https://www.subaru.co.jp/
※1 https://www.subaru.jp/safety/
※2 https://afrel.co.jp/engineer/induction-course/

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