ITがまだエレクトロニクス技術と呼ばれていた1974年に、独立系のソフトウェア会社として設立された株式会社データープロセスサービス(以下、データープロセスサービス)。同社では、2025年から一般社団法人組込みシステム技術協会が主催するロボットコンテスト、ETロボコンを活用した人材育成に取り組んでいます。なぜETロボコンに着目したのか、会社にどのような効果をもたらしているのか、ETロボコンへの参加を決定した2名、実際にメンバーとして活動した4名にお話を伺いました。
◆インタビュイー
ETロボコン参加決定者:佐渡昭二さん、小林雅典さん
ETロボコン参加者 :野村健一さん(7年目)、山口茉耶さん(5年目)、横山日向子さん(2年目)、塚田瑠美さん(1年目)
(以下、佐渡さん・小林さん・野村さん・山口さん・横山さん・塚田さん)
組み込み、アプリの双方を開発できる人材を増やす
実現の鍵は、実機を使った学びの機会
– データープロセスサービスの事業内容を教えてください。
佐渡さん「現在、当社ではお客様先で業務に当たるエンジニア派遣と、社内で受託開発を行う2業態を展開しています。私たちが所属している社会システム部では、受託開発に力を入れており、その中でも鉄道関連の組込みシステム開発を多く手がけています。これまでに『安全』と『高速化』が求められる鉄道の高度な制御システム開発で培ってきたノウハウが、当社の強みの一つです。」
– 今後の事業成長に向けて考えておられる、ソフトウェア人材の理想像を教えてください。
佐渡さん「社会システム部の話になりますが、組込みシステム開発とアプリケーション開発の両方を行える人材を増やしたいと考えています。」
– どのように両方の開発ができる人材の育成を行っているのでしょうか。
佐渡さん「実践を通して学ぶOJT形式で人材育成を行っています。理想としては、組込みシステム開発が終われば、アプリ開発に取り組む、というように両方の業務を交互に経験してもらい、育てていきたいです。しかし、受注状況に左右される部分もありますし、組込みシステム開発ではお客様が実機を製造しているため、誰もが常時触れられるとは限りません。そのため、組込み経験の場を作ることに難しさを感じています。また、『システム開発』という言葉から、Webシステムやプログラミングなど画面の中で完結するイメージが先行し、若手社員がハードウェアと結びつく開発を具体的に想像しづらい点や難易度が高く、人材が育ちづらい点も課題だと感じています。」
失敗できる経験の場で、場数を踏む
チームでロボコンプロジェクトに挑戦
– 昨年からETロボコンを活用した人材育成を行っておられますが、きっかけはどのようなものだったのでしょうか。
小林さん「組込み経験の場を、今以上に増やしていく必要があると考えていました。OJTで先輩から教わった通りに作っていくという制約ある開発環境だけでなく、若手社員同士がチームを組み、自由な発想で組込み開発に取り組む場を作りたいと考えていました。そのなかで、他社で新入社員がチームを組み、ETロボコンに参加して人材育成を行っている事例を聞き、当社も参加することにしました。この取り組みを通して、開発力向上だけでなく、期限やコスト、品質、優先順位なども自分たちで考えることで、将来のリーダーとしての意識醸成にもつなげたい、と考えました。」
– 活動を進めるなかで生まれる課題への対応はどのようにサポートしているのでしょうか。
野村さん「ロボコン参加経験のある先輩社員1名がアドバイザーとして、私たちをサポートしてくれました。実際に参加した私、山口、横山の全員がモデル提出で使われるUMLや言語について、ほとんど知識がない状態からのスタートでした。そのため、アドバイザーと言いながら、メンバーの一員のような形で参加してもらったことで、モデルやプログラムの面でも大変助けられました。プログラムの部分では、同じ内容でも毎回ロボットの挙動が異なるといった、ロボコンならではの注意点も教えてもらい、本当に有難かったですね。」
– 1年目からスムーズに活動できていたのでしょうか。
野村さん「私がリーダーとしてスケジュールやタスク、メンバー管理などを担当していましたが、想定通りにはいきませんでした。ETロボコンで必要な知識が不足していたことに加え、私自身リーダー経験がない状態からのスタートだったので、苦労しました。それでも、メンバーが臨機応変に対応してくれたおかげで、乗り切ることができたと思っています。」
山口さん「モデル提出まで時間が限られていたため、UMLを勉強しながら対応するのは、業務との兼ね合いもあり大変でした。また、9月末の地区大会に向けた時期は、私自身の業務が立て込んでおり、活動に十分参加できなかったため、メンバーに助けられました。」
※社内開発中の様子

※試走会中の様子
※当日の集合写真
実践的な学びで芽生えた、次世代リーダーとしての意識
業務に生きる経験を作る教育手法“ロボコン”
– ETロボコンに参加してどのような点で変化を感じましたか。
佐渡さん「将来的に担ってもらいたいリーダーの役割はもちろん、今後の業務を担当する上で必要な、仕事やプロジェクトの進め方を実体験として学んでもらえたため、非常に良い場でした。また、組込み開発において、自分たちが作ったものが思い通り動いたり、動かなかったりする様子を目に見える形で実感し、試行錯誤できた点も、教育手法として効果的だったと感じています。」
横山さん「複数人で構成されたプロジェクトに初めて参加したため、私自身の至らない部分を多く感じました。そんななか、先輩がサポートしてくれる姿を間近に見ることができたので、今後チームや、将来リーダーとして活動する際は、この経験を活かしていきたいと思っています。」
– 今後取り組んでいきたいことはありますか。
小林さん「当社では、先輩が横に座って教える伴走型のOJTを行っており、実際に成果も出ていますが、一方で、後輩からすると『常に先輩に確認しながら、開発を進めなければならない』と感じることがあるかもしれない、と思っていました。ETロボコンでは、チームメンバーの若手社員に任せてみたことで、想定した以上の成果が得られました。今後は、失敗を恐れず若手に任せながら、必要な場面では伴走するというスタイルを組み合わせることで、より良い人材育成につなげていきたいですね。また、野村、山口は、今度はアドバイザーとして、2年目の横山、1年目の塚田は他の若手社員とともにメンバーとして、次のETロボコンにも出場したいと思っています。」
実践を重視した学びの場としてロボコンへの参加を通じて得られる経験は、技術力だけでなく、プロジェクトを進める姿勢やチームでの関わり方にも教育効果を生んでいます。教育手法として、ロボコンは有効な印象を受けたインタビューでした。