コンテストロボット活用事例

【連携事例】小学校・大学・地域が共に。ロボットを通して目指す教育の姿とは

本記事は、2015年11月4日発行のアフレル通信vol.8(オレンジタイム)の内容を編集・追記したものです。(ご所属等は発行当時の内容です)

地域一体で子どものロボット教育を進める

今年で6回目を迎える「WRO秋田県中央地区大会」。IT産業が盛んである秋田県にかほ市では、子どもたちにロボットに興味を持ってほしいとの思いから、WRO(World Robot Olympiad)の活動を始めました。にかほ市立平沢小学校の小坂校長の呼びかけで、秋田県立大学の石井准教授とフェライト子ども科学館が連携し、更ににかほ市・由利本荘市の協力を受け、今では54チームが参加する地区大会となりました。中心となり大会を支える小坂校長、石井准教授、そしてにかほ市立平沢小学校の子どもたちにロボットの組み立てやプログラミングを指導している藤野さん(秋田県立大学4年生)にお話しを伺いました。

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夢を見つけること、そしてそれを成し遂げること

にかほ市立平沢小学校 小坂校長

「子どもたちが夢に向かって努力する」そんな活動をしたいと考え、秋田県立大学、フェライト子ども科学館と共に「WRO秋田中央地区大会」を立ち上げました。WROを通し、子どもたちが自発的にロボットに興味を持ち、将来は自分のやりたいことを最後まで貫き通すような人間になってくれるのが私の夢です。秋田県立大学の石井先生と学生さんは子どもたちへロボットの組み立て方やプログラミングを教えてくれます。専門性に優れているため、子どもが何に困っているのか敏感に理解し、適切なアドバイスをいただいています。

子どもたちへの指導が学生の成長へ

秋田県立大学 システム科学技術学部 機械知能システム学科 石井准教授

WROへの支援は本学の創造工房という組織が中心となって進めています。創造工房では科学・実験教室を通して、科学とものづくりの楽しさを地域の小・中学生,高校生に発信しています。ご存知のとおり、大学では高大連携が活動内容の一つの柱となっています。私があえて小学校から高校までを対象としたWRO連携を続けている理由は、児童の皆さんに中学生、高校生になってもそのときの興味・関心を持ち続けてもらいたい、また、学習・体験・挑戦する場を長期にわたって継続して提供したいと思っているためです。

学生には実験や製作の経験(Try and Error)から得られた問題定義・仮説検証を行う思考の習慣化,問題を拡張し,一般化して考える姿勢を身につけてもらいたいと考えています。また,当地域の予選会は小学生から高校生までを対象としており,事前に講習会も実施します。児童・生徒の年齢が変われば指導方法も変わりますので,学生にはそれぞれに応じた指導方法を真剣に考えてほしいと思っています。これは,学生のプレゼンテーション力の向上にたいへん効果的な訓練になっています。例えば,卒業研究を進める過程では,有意性を説くための論理構築力,的確に伝えるためのコミュニケーション力が重要です。コミュニケーション力の育成には,伝える力(送信側)の訓練が重要とよく勘違いされますが,実は受信側の訓練,すなわち相手の考えていることをしっかりと理解し,次の行動・発言を考える訓練も重要です。学生には児童・生徒との会話から彼らの考えをしっかりと理解し,的確な指導につなげられるようになってもらいたいと思っています。

選手として、そして指導者としてのロボットコンテスト

秋田県立大学 システム科学技術学部 機械知能システム学科 4年生 藤野 慎也さん

宇都宮工業高等学校1年生(2009年)、3年生(2011年)のときにWRO国際大会に出場しました。世界には自分には思いつかないような機構やアイデアが盛り込まれたロボットがたくさんあり、衝撃を受けたのを覚えています。自分がこの中で競技を行うのだと考えたとき、非常に緊張しましたが、同時に競技ができる喜びを感じました。今は自分が教える立場になり、小学生が理解しやすい指導方法に苦心しています。自分で競技をした選手時代とは違い、相手に考えて理解してもらうことが目的ですので、WROに対する見方が変わりました。競技課題の攻略に向けて一緒に考えて試行錯誤する過程において、「指導」の難しさを感じていますが、問題が解決したときの達成感を小学生と共に感じています。

世界大会での経験は自分にとってもちろん貴重なものですが、世界大会に至るまでの過程、すなわちコース作りやロボット製作、プログラミングなど、部活の友人や顧問の先生と共に悩み、努力した日々の取り組みがWROを通して得た一番の大きな経験です。この経験と喜びを小学生にも伝えていきたいですね。

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