「PLayful intelligence」は、関西、関東エリアをメインとする子ども向けロボットプログラミング教室「プログラボ」の講師によるチームです。西野紘道さん(立命館大学4年生)、鈴木豪人さん(大阪府立大学2年生)、佐藤大樹さん(大阪工業大学2年生)の三人は、2017年のWRO(World Robot Olympiad、以下「WRO」)出場に向けてチームを結成し、活動を開始しました。偶然同じ教室で「講師」をしていた三人の出会い、そして彼らのロボコンに対するこだわりや魅力についてお話を伺いました。(所属は2018年4月時点の内容)
WRO出場のために結成したチーム「PLayful intelligence」
それぞれ別の大学に籍を置く3人の共通点は「プログラボの講師」であること、そしてロボットと教育に興味があることでした。講師の仕事を通してロボットに触れる機会が増えるにつれ、いつしか「自分でもロボットを組み立てて動かしてみたい」と考えるようになったと言います。そんな時にプログラボの社員から紹介されたのが 国際大会への挑戦も可能なWROアドバンスド・ロボティクス・チャレンジ(以下、「ARC」)でした。メンバーのうち二人はWROに出場した経験があったため、そこからすぐに三人での活動が始まりました。
WROでの悔しさをバネに次の大会へ
初めてWRO Japan 2017 ARCに参加した際、普段の練習環境と異なるコース環境だったこともあり、ロボットが思ったように動作せず悔しい想いをしたそうです。「リベンジの気持ちから、2018年3月に開催されたアフレルスプリングカップへの参加を決めました。」彼らは前年のWROを振り返り、練習と大会本番の環境差に左右されにくいロボットを製作するため、機構を大きく変えてスプリングカップに挑みました。
機構の改善が実現した自由度の高いロボット
アフレルスプリングカップでは新しい機構と画像認識を採用し、駆動部分のモーターを2ケから4ケに増やしたことが最大の変更点だと言います。「モーターを増やすことで駆動の自由度が大幅に広がり、ロボットが一度も向きを変えず前後左右に動けるようになりました。」しかし、変更によりアームやバッテリーなどを取り付けた際、重心をシビアに考える必要が出ました。駆動部分の変更に伴ってプログラムも複雑になるため、大会本番でスムーズに調整できるようにプログラムを組み、方向・パワー・エンコーダーの値を簡単に制御できるよう変更したそうです。また、今まではコース上に置かれているテトラキューブ(※色付きの木製ブロック)のみを画像認識していましたが、直立した木枠や枠内に置かれたキューブの画像認識もできるよう工夫されました。画像認識の精度を高めるために最も時間をかけたと言います。「数ミリの誤差で、競技のポイントが取れない可能性があります。そのため、プログラムを何度も変更したり、ロボットの機構を誤差に対応できる設計にしたりしました。」
「プログラムを組む際は、National Instruments Japanのヘルプページを活用しました。アイコンの意味は理解できても実際の使用方法が不明な場合に、詳細を知ることができるので参考になりました。」また、画像処理は講談社より出版されている『LabVIEW画像計測入門』(2011年、橋本岳・山本茂広・浦島智)を参考にしたそうです。使用する機材の公開情報を積極的に活用することも課題解決方法の一つと言えます。
重要なのは原因をとことん追求すること
練習において一番重要なのは「ロボットが想定通りに動作しなかった際の対処」だと言います。発生する確率が低いからといってそのミスを無視するのか、原因をとことん追求してミスを無くすのかでロボットの完成度に大きな差が出てきます。「過去に参加してきたロボコンでの経験上、発生する確率が低いミスほど、本番で直面することが多いと感じます。自分たちが100%と言えるロボットが重要になってきます。」
技術や知識の組合せで競う、ロボットコンテストの魅力
スプリングカップはWROを見据えた「腕試しとして参加できるとても良い大会」だと話してくれました。「普段の練習にはない緊張感や環境の異なるコース、限られた時間内での調整を体験することで夏のWROへと上手くステップアップしていけると感じました。」WROやスプリングカップのようなコンテストでは、センサーやギアの使い方など、技術レベルはどのチームも差は少なく、それらの技術をどのように組み合わせるか、競技課題をどのように攻略するか、攻略するにはどのパーツが必要でどのようなプログラムを組む必要があるかという点が重なり合って大きな差が出てきます。「それぞれのチームに工夫があり、長い時間をかけて自分たちで考え抜いたロボットを持ち寄って競技に挑むという点に大きな魅力を感じます。」
「PLayful intelligence」のリーダーを務める西野さんはコンテスト出場を経て「LabVIEWやTETRIXの技術的ノウハウが身に付いたのはもちろん、チームメンバーへの指示出しや雰囲気づくりの大切さを学んだ」と話してくれました。チームメンバーが持つ技術に信頼を置いているからこそ、それをいかに発揮できるか、チームとしてどう活かせるかを考えて活動したと言います。チーム内での自分の役割を自覚し、全うすることもロボットコンテストで得られる成長と言えるでしょう。
WRO アドバンスド・ロボティクス・チャレンジとは
WRO(World Robot Olympiad)は、世界の60を超える国と地域から参加チームが集まる国際的なロボットコンテストで、小学生から大学生までの子どもたち(児童、生徒、学生)が参加します。
その中でもアドバンスド・ロボティクス・チャレンジ(ARC)は17歳から25歳で、高校、高専、大学、短大、専門・専修学校、大学校、短期大学校などの教育機関の学生が、頑丈なアルミフレームのロボットキットを使用し、高度な制御を行います。ロボット版のテトリス?ゲームのような競技で、自作した自律型のロボットで、直立した長方形の箱にテトラキューブと呼ばれる色付きのブロックを隙間なく積み重ね、高得点獲得を目指します。日本大会の成績優秀チームは、11月に開催される国際大会に日本代表として出場します。
参考:
- WRO Japan 2018 アドバンスド・ロボティクス・チャレンジ
- WRO ARC部門出場者向け!参考サイト
- スプリングカップ2018開催報告