ロボット活用事例授業実践

「楽しい」が子どもたちの知性を伸ばす-小学校でのプログラミング授業

2018年6月、ボストン(アメリカ)にてレゴ?エデュケーションシンポジウムが開催され、全国19ヵ国で開催されたLEGO? Education Teacher Award受賞者の先生方が集結し、ロボットプログラミング教材を活用した各国での取り組み、活動内容を発表しました。

LEGO? Education Teacher Award

LEGO? Education Teacher Awardは小・中・高等学校で行われている、革新的な教育を推進するためのコンテストです。日本の他、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ロシア、中国、韓国など19カ国で同コンテストが開催され、各国で選出された先生が米国ボストンに集結し、レゴ® エデュケーションシンポジウムが実施されました。

日本では2018年に初開催され、日本国内の小・中・高等学校の先生からロボットプログラミング教材を用いた授業実践アイディアを募集しました。(応募期間:2018/1/15~2018/3/25)本コンテストでは『STEM(Science/科学・Technology/技術・Engineering/工学・Math/数学)教育の実践に重点を置いた理数系人材育成』をテーマに、日本全国の先生方から、創造的で独創的な取り組みの応募がありました。

今回、日本の受賞者である筑波大学附属小学校の鷲見辰美先生にレゴ?エデュケーションシンポジウム会場にてお話しを伺いました。

小学校でのアクティブ・ラーニング

鷲見先生は「低学年から楽しめるプログラミング学習」をテーマにレゴWeDo2.0を使用し、小学1年生向けに授業をされています。授業で子どもたちは好きな動物をブロックで作成します。そして動物がエサを取り、元の場所に帰ってくるプログラムをペアで考えます。課題が単純な分、子どもたちが考えるプログラムは多様になり、どんなプログラムも工夫されている点を認めることで、子どもの興味関心を高めることを心掛けているそうです。WeDo2.0を使うと、プログラム転送後すぐに明確な結果がロボットの動きとして現れるため、結果を踏まえて次の対策を考える事も容易です。上手くいかなかった際に友達と相談したり、アイディアを出し合ったりという光景も自然と見えるようになり、「プログラミングは、まさにアクティブ・ラーニングの典型的な活動」だとお話下さいました。

鷲見先生授業風景.JPG

楽しい授業が学びを生む

授業では「子どもたちが楽しめること」を大切にされているそうです。「楽しさ」とは、自分で考え理解したときや、失敗を繰り返した結果できるようになったとき等、体験・経験から感じる「楽しさ」だと説明して下さいました。実際に鷲見先生の授業では2時限通しで「プログラミング学習」の授業を行っています。通常小学校の授業は1時限(45分)で、低学年が集中できる時間はその中でも15分程度だと一般的に言われています。しかし、この授業においては「まだやりたい」と、活動をやめようとしない子もいるそうです。中には、自分たちが作った動物の動きを友達に説明したり、分からないことを教え合う様子も見られるようで、主体的な学びも実現されていることが分かります。鷲見先生は「将来子どもたちには、自分で楽しさを見つけるようになってほしい」とおっしゃっていました。そのためにも、小学生の今から体験・経験を繰り返し、本来の「楽しさ」を知ることが大切なのでしょう。

学校の学びが実社会の課題解決となる

日本では「教科横断的な学び」が重要視されており、実生活における課題を自ら見つけ、それらを課題解決するために各分野で学んだ知識を応用することが大切だと言われています。

鷲見先生は、実際に環境問題をテーマに授業を実施し、子どもたちはグループごとに環境問題の解決策を考えました。例えば、人がゴミ箱を開けると、ごみの分別を促す音声が流れる仕組みを作成したチームがありました。また別のチームは、ミニチュアの街を作り、気温によって街に流れる放送を変えるシステムを考えました。子どもたちは、自身が持つ知識の中で、環境問題解決のための仕組みを作ったのです。

鷲見先生は、今回ボストンでのレゴ?エデュケーションシンポジウムに参加され、「世界各国の学校によって、取組みや授業は違うが、教育への課題や工夫している点は共通点が多かった」とお話されました。また、子どもたちの創造性を伸ばすには、指導者自身がより創造的になる必要があるという認識は、世界共通の考え方だったそうです。鷲見先生は、ボストンで受けた講義を、日本に帰国された後、小学校2年生を対象に実施するなど、今回の経験をさっそくご自身の活動にも取り入れていらっしゃいました。

参考:

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