ロボット活用事例授業実践

鉄道会社で取り組むロボット学習、育てる「一緒に働きたい人」

本記事は2018/7/21(土)に開催された第11回 科学技術におけるロボット教育シンポジウムの講演レポートです。

・「鉄道会社が取り組むロボット教育~沿線の価値創造にむけた一緒に働きたい人材の育成~」
・プログラボ教育事業運営委員会 勝山裕子 氏

阪神電気鉄道株式会社(以下、阪神グループ)が讀賣テレビ放送株式会社と共同で立ち上げたプログラボ教育事業運営委員会では、教育版レゴ?マインドストーム®EV3を使ったロボットプログラミング教室を運営しています。今回の講演では、鉄道会社がロボット教育を行う理由や実際の取り組みについて、プログラボ教育事業運営委員会の勝山氏が発表しました。

なぜ鉄道会社がロボット教育に取り組むのか

阪急電鉄創業者の小林一三氏が作った鉄道会社のビジネスモデルとして、「鉄道を敷くと人の移動が生まれ、沿線という概念ができ、沿線に住宅やデパートなどの商業施設、遊園地などの娯楽施設を鉄道会社が自ら作って運営することで、さらなる人の移動を生み、本業である鉄道事業の売り上げも伸びる」というものがあります。

阪神グループも鉄道以外の事業に取り組んでおり、その中でも、情報通信系の事業に強いことが特徴です。また、同グループの株式会社ミマモルメでは、学校に通う児童・生徒にICタグを持たせ、登下校時に学校の門を通過すると保護者へメールが送られるシステム「登下校ミマモルメ」を運用しています。「登下校ミマモルメ」は起業支援制度と呼ばれる、社員が新規事業を提案し、事業化するスキームを活用して生まれたものです。安心して子育てが出来る街を作ることは沿線の価値を高めることになり、ミマモルメの誕生により「次世代育成」というキーワードが社内で意識されはじめ、プログラボが誕生しました。

プログラボって?

プログラボは、2016年4月に兵庫県夙川及び大阪府野田阪神に子供向けプログラミング教室を開校、現在、関西圏において14校を展開しています。2018年4月以降は株式会社JR中央ラインモール(JR東日本100%出資会社)と東京地下鉄株式会社の運営のもと、東京都に3校を開講し、現在全国で2,300名の生徒が在籍しています。
年長から中学生までの子供を対象に発達段階に応じたオリジナルカリキュラムを作成しています。また、CSR活動として、プログラミング教室で培ったノウハウをもって、公立小学校を中心に延べ50校を超える学校で無料出張授業を実施しています。

勝山氏は、「鉄道会社の歴史は社会の課題を解決してきた新規事業創出の歴史でもあり、ロボット教育は、一緒に働きたい人材を育成できる手段」だと言います。

プログラボの役割は、「夢を実現するチカラ」を育てること

プログラボが考える、「将来一緒に働きたい人材」とはどんな人材なのでしょうか。
勝山氏は、例として阪神電気鉄道株式会社の新卒採用HPから以下の3点を紹介しました。

・センシティブ「おもしろい!の発見」
・アチーブメント「やり遂げたる!の志」
・バイタリティ「やってみよか!の行動」

社会環境が大きく変動していく中で、企業は新しい価値を創造出来る人材を求めていると話しました。

プログラボでは、将来一緒に働くであろう子供たちに身に着けてもらいたい力を、「夢を実現するチカラ」と称し、まずは子供たちが楽しみながら学べるロボット教育を軸に、以下の3点を教育理念として掲げています。

・学びに対する喜び・意欲
 知識と論理的な思考方法を身に着け、それを実践することで、学ぶ喜びを体感し、意欲的に学ぶ姿勢、問題解決力を養います。

・視野や興味の幅を広げ、それを深く追求する心
身の回りの様々な物事に興味を持つ好奇心と、興味を持った物事に対して深く掘り下げる探求心を育みます。

・自らの力でやり抜く精神
 失敗を恐れず、試行錯誤を重ねることで、主体性と最後までやり抜く力を育てます。

WRO出場で実感「創造力の逞しさ」

プログラボからは毎年、多くの子供たちがWRO(World Robot Olympiad)に出場します。子供たちは、ルールを理解したうえでチーム毎に作戦を立て、機構やプログラムを考えロボットを作ります。また、講師などの大人との関わり方も、まるで上司と部下の様になっていくそうです。
ロボットも社会も、正解は一つではなく、講師(上司)は子どもたち(部下)に「なぜそうなるのか」「本当にそうなのか」といった問いかけを行い、子供たちは自ら考えて自分なりの答えを出します。「結局は子供たち自身が自分で考えたところからしか答えは生まれません。結果、チーム毎に個性的なロボットができあがり、創造力の逞しさを実感しています」と勝山氏は話しました。

ロボット教育の汎用的な学び

勝山氏は最後に、「ロボット教育を通じて考えることの楽しさや、その考えを他者と共有し形にしていく楽しさを知っている子供たちは、社会に出てからもその姿勢を持ち続け、様々な分野で活躍してくれると確信しています。沢山の子供たちがロボット教育に触れられる機会を提供できるように取り組んでいきたいです。」という言葉で締めくくりました。

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