児童が協働的に学ぶプログラミング教育の実践 ~アクティビティ・ボードを活用したプログラミング的思考の育成~

本記事は2018/7/21(土)に開催された第11回 科学技術におけるロボット教育シンポジウムの講演レポートです。

  • 「マインドストームEV3で育むプログラミング的思考」
  • 伊東 晃 氏¹、松村 毅 氏¹、宮川 洋一 氏²、山崎 浩二 氏²
    1:岩手大学教育学部附属小学校、2:岩手大学教育学部

岩手大学教育学部附属小学校では、新学習指導要領の完全実施に先がけてプログラミング教育を行っています。学習を通して児童が変化していく姿から、プログラミング教育の効果や授業の在り方について、担当の伊東先生の発表をレポートします。

小学校でのプログラミング的思考の育成

平成29年3月に公示された新学習指導要領では、小学校において「児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理 を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」が加わり、文部科学省はプログラミング的思考の育成には「思考力・判断力・表現力」が必要だと提示しています。また、ここで言うプログラミング的思考とは、プログラミングの技術そのものを習得することではなく、ものごとの動きにはどのようなプログラムの組み合わせがあり、課題解決をするためにはどのように修正すればよいかを論理的に考える力を指します。

この「プログラミング的思考」を育成するために適した教材として岩手大学教育学部附属小学校で導入されたのが、教育版 レゴ®マインドストーム® EV3(以下EV3)でした。

魅力、楽しさを伝える単元構想

岩手大学教育学部附属小学校では5,6年生を対象にプログラミング教育を実施されました。プログラミングの魅力や楽しさを感じられるような単元づくりを大切にした一方で、ICT機器(iPadやEV3等)への慣れやプログラミングに関する興味関心は個人差が見られたため、単元の学習過程を工夫する必要があったそうです。そこで実際に行われた17時間の学習のうち、単元の前半でEV3の操作で必要となる「順次、反復、分岐」のプログラミングブロックの使い方の説明や、EV3、iPadに慣れる時間を十分に取り、単元の後半は実際に児童がプログラミング的思考を働かせるような問題解決的な学習活動を設定しました。単元の後半の問題解決的な学習活動に入る時点で、どの児童もプログラミング学習に取り組める環境を整えることが重要だと、担当の伊東先生は言います。

描いて養うプログラミング的思考

児童たちは今回の学習で初めてEV3に出会い、そこから比較的意欲的に学習活動に取り組んだようです。しかし、EV3とiPadの数には限りがあり、学習の中で児童全員がそれらの機器を操作する時間が十分に取れないのが現状でした。そこで伊東先生が導入したのが、「アクティビティ・ボード」でした。アクティビティ・ボードとは文字や図でプログラムの組み合わせを考えたり、修正・改善を行ったりすることができる思考表現ツールです。

アクティビティ・ボード.jpg(児童が作成したアクティビティ・ボード)

このアクティビティ・ボードの導入で、iPad操作を行っていない児童たちもグループの友達と、指をさしながら「次はどうするべきか」を意欲的に話し合う姿がよく見られるようになったと言います。アクティビティ・ボードとiPadを併用することにより、EV3そのものがもつ教育的価値をより高めることができ、児童たちのプログラミング的思考の育成にもつながったようです。

EV3を使うことにより児童が身に付けた資質・能力

児童が作成したアクティビティ・ボードを見ると、必要となるプログラムを書き出した後に、赤字で修正・改善をしている様子が見られ、このことから児童が「問題解決のために必要な手順があること」「必要な組み合わせがあること」を理解していることが分かりました。17時間の学習を通し、児童たちは創造的思考、共感的思考、批判的思考を巡らせながら、プログラミング的思考を高めたようです。また、アクティビティ・ボードを囲み、少人数で協働的に学習する姿も見られるようになったと伊東先生は言います。

更に、単元の終末段階では社会や生活に役立つプログラムを考える時間を設定し、児童たちはそれぞれアイディアを出し、実現するために必要なプログラムを創り出しました。プログラミング的思考をここまで習得できたのは、基本を習得し実際にプログラムを試行錯誤する時間を十分に与えられたからでしょう。今後、児童たちが更に学習を深め、ICTを用いて社会をよりよくしてくれることを期待したいです。

参考:



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