授業実践教育機関事例

小型ロボットアームで「荷物仕分けデモシステム」を開発、モノづくりのプロセスを学ぶ

実験や実習を重視した教育を通して、産業界で活躍する人材を育成する職業能力開発大学校では 3年ほど前からロボットを活用した教育を推進しています。
しかし電子や情報を学ぶ学科では、普段ソフトウェアを中心に学ぶことが多く、あまりロボットを使う機会がないとのことで今までロボットを触ったことのない学生に、どのようにロボットを教育に活用すれば良いかと、悩むケースもあるようです。

そのような状況の中、情報を学ぶ学生に対してソフトウェアに注力しつつも小型ロボットアームを活用する実習を行ったとのことで、沖縄職業能力開発大学校 生産電子情報システム技術科 秦野明幸先生にお話をお伺いしました。

小型ロボットアームを使った「QRコードを用いた荷物仕分けデモシステム」を開発

秦野先生は、応用課程である生産電子情報システム技術科の1年生(大学3年生相当)の「標準課題実習」という授業で小型ロボットアームを活用しました。
「標準課題実習」では1チーム4人前後でグループ学習を行いながら、モノづくりの一連のプロセスを学びます。例えば「Raspberry Piやカメラを使用する」というような提示された最低限のフレームワークの中で、どのような課題に着目し、どう解決していくかを学生達で考え、4ヶ月間でモノづくりを行います。

今回の標準課題実習では、物流業界の人手不足という課題に着目したチームが小型ロボットアームを活用して「QRコードを用いた荷物仕分けデモシステムの開発」を行いました。

【荷物仕分けシステムが作動している様子】

■システム概要
①荷物(立方体ブロック)をカメラで画像認識しピッキング、ベルトコンベヤに載せる
②荷物に貼られたQRコードをカメラで読み取り、荷物を判別する
③判別したデータごとに決められた場所へ荷物を運ぶ

これまで学生はソフトウェアを中心に学んでおりロボットに触れる機会はなかったとのことですが、小型のロボットアームを活用することでロボットのソフトウェア開発に注力することが出来たそうです。

実際にロボットが動く様子を目の前で見て学ぶ

実際に小型ロボットアームを使った学生の様子について、秦野先生にお伺いしました。

秦野先生
生産電子情報システム技術科の学生は今までソフトウェアを中心に学んできており、モニター上で完結するプログラムを作ることが多いです。
今回実習の中で小型ロボットアームを動かすシステムを考える中で、自分で作成したプログラムが目の前で小型ロボットアームの動きとして現れるというのは分かりやすいようで、楽しそうでした。
ロボットを使った開発の際に一番気を付けないといけないのは「安全性」なのですが、小型ロボットアームだとぶつかっても怪我することがなく安心して学生に使ってもらえます。

標準課題実習を進めていく中で見られる学生の成長についてお伺いしたところ、秦野先生は次のように話しました。

秦野先生
この標準課題実習の中で、教員は先生というよりプロジェクトの上司という立場になって学生チームのミーティングや進捗管理を行います。つまり実習を通して、学生は企業でのモノづくりシステムを疑似的に体験します。
またグループ学習を通して「メンバーとコミュニケーションを取らないと課題が先に進められない」ということを学生は理解するようになります。この実習で、コミュニケーションが得意ではない学生にも就職後も必要なスキル(開発を進めるコミュニケーション力やスケジュールの管理スキル等)の重要性を理解してもらえたと感じています。
最終的に学生は校内の発表会にて、開発した「QRコードを用いた荷物仕分けデモシステム」について説明を行いました。

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発表を聞いていた専門課程の1年生に対しては「自分たちもあと2年すればこんな開発が出来るようになるのか!」と視覚的に伝えられたのではないかと思います。

シングルボードコンピュータを活用しソフトウェアの開発に注力できる

秦野先生に小型ロボットアームの魅力についてお伺いしました。

秦野先生
応用課程である生産電子情報システム技術科の学生は、専門課程(大学1~2年生相当)の時にLinuxやC言語、PythonでのRaspberry Pi制御について学んできているため、
「Raspberry Piで動かせる小型ロボットアーム」というのは、これまで学生の学びを活かしてロボットアームを使えるという点で魅力的でした。
3年前に職業能力開発大学校でロボットの導入が一斉に進められましたが、情報系学科の学生は専門課程ではロボットに触れないので、応用課程になってから急にロボットを使わないといけない状況になります。
また学生は情報系を中心に学んでいることもあり「ロボットの深いところまでは授業内で取り組めない」、「ソフトウェアに注力させたい」という思いがありました。
そこでハードウェア部分の取り扱いが難しくなく、ソフトウェア部分をメインに学べる小型ロボットアームが用途に合っていて使いやすかったです。

沖縄県の現状と今後の展望

秦野先生に今後についてお伺いしました。

秦野先生
職業能力開発大学校では作業員不足の影響でロボットの導入が増加したことによるSIerの人手不足がきっかけに、ロボット教育の取り組みをスタートしました。
ロボティクスを学ぶことは東京等の都市部なら有効だと思いますが、沖縄でロボットを専門に学んでも沖縄県内にロボットを扱う企業が少ないため現時点では就職に直結はしていません。
今後沖縄でロボットを扱う企業がもっと増えれば、沖縄の情報系学生に対するロボット教育もより有効になるかと思います。
生産電子情報システム技術科では、ロボット工学の科目として学科2単位(講義:安全教育)、実習2単位(ロボットを動かす最低限の基礎やアプリから見える化を学ぶ)という少ないコマの中で授業をする必要があります。
今後はこの実習2単位でも小型ロボットアームを使用し、「標準課題実習」に繋がるような授業をしようと検討しています。

参考リンク

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