本記事は、2017/7/16(日)に開催されたRobotics Education Dayの特別講演のレポートです。
- 【特別講演】Deep Learningのロボティクスへの応用
- 株式会社Preferred Networks チーフアーキテクト 奥田遼介 氏
マインドストームとの関わり
中学生の時にレゴ マインドストーム RCXを入手し、大学院生のころ、NXTでETロボコン2012に参加。その時にETロボコン専用スクリプト言語で製作した自動パラメータ調整装置は、上部にケーブルを渡し、走行体を吊り下げた状態で動作させ、あるところまで進んで倒れた走行体を自動的に吊り上げて元の位置まで戻す動きを繰り返すもの。全国12の地区大会から選抜されたチームが競うETロボコン2012チャンピオンシップ大会では、リアルタイム設計においてすぐれた設計・実装技術を持つチームを評価する「TOPPERS賞」を受賞。
世界最大のエレクトロニクス技術の展示会「CES」でのロボットカーデモ
2015年6月、Interopで複数のロボットカーが協調して走行する分散深層強化学習のデモを発表。2016年1月には前年のデモをさらに改良した内容を用意して、米国ラスベガスで開催された世界最大の展示会「CES」で、自動走行ロボットカーのデモを実施した。
一般道を模したステージに4つの障害物(円柱)を設置し交差点を表現。同時に複数台のロボットカーを走行させ、ぶつからないように自動運転する内容である。あえて1台を人間がリモコン運転し、ぶつかりそうな状況を作り出すことで、他の車はさらにぶつからない行動を学習する。4日間に渡るCESでの展示でロボットカーは一度も衝突することが無かった。
人工知能による自動運転は取り組みが進んでいるが、市街地の道路状況や交通環境は非常に複雑で、学習により適切な行動を獲得することが欠かせない。
デモにレゴマインドストームを用いる利点
深層学習でどんなことが実現できるのか、視覚に訴えるデモが可能。言葉で説明しても伝わりにくいことが、動くデモは圧倒的なインパクトがあり伝わりやすくなる。また、ラジコンカーで製作したものと比較すると、レゴマインドストームが最も安定して動作し、製作にかかる期間も短く、同じ型(製品)をまとまった数入手できることも助けとなった。
産業用ロボットへの技術適用を試すAmazon Picking Challenge
棚に置かれた様々な形状(幅、高さ、奥行き、凹凸など)の物品(39種類)の中で、指定された12ケの物を15分以内に集めて、その速さを競うコンテスト「Amazon Picking Challenge」に参加した。39種類の物品は、表面に光沢のあるものや透明あるいはメッシュ状の容器、ぬいぐるみのように把持する際、外形が変化するもの、洗剤のように内容物が液体で重さのバランスが変化するものなど多様であった。参加した16チームの全てが深層学習を利用。
棚の手前側、奥側で異なる物品が格納されている場合も、画像認識によりピッキングが可能な位置を推定し、いったん手前を動かして奥の物品を取り出すことができるようになった。結果として、Pickタスク(棚から取り出す)で2位(スコアは1位と同じ)。ピッキングや仕分けといった作業はまだまだ人間の方が速いが、決まった動きの繰り返しが多い産業用ロボットでは学習を活用することで応用分野が広がるだろう。
参考
- Robotics Education Day
- PFN 奥田遼介氏が解説、ディープラーニングだけでなく「強化学習」も活用する理由
- Amazon Picking Challenge
注記:Amazon Picking Challengeは、2017年以降、Amazon Robotics Challengeに名称を変えて開催されています。