AI×ロボットアームで電動義手の動きデータを蓄積、最適化に活かす

AI×ロボットアームで電動義手の動きデータを蓄積、最適化に活かす

第三次AIブームと呼ばれる現在は、AIをビジネスに活用しようという動きが大きく報じられていますが、人工知能の研究は60年以上前から続くものです。佐賀大学理工学部理工学科、山口暢彦准教授は、20年以上前から人工知能の研究に携わり、パターン認識や機械学習のさらなる効率化を主な研究テーマとしています。今回は、ロボットアームを使って蓄積したデータを元に動きの最適化を試みる研究についてお話を伺いました。

蓄積データを元に義手の動きを最適化

山口准教授は、人工知能の中でも機械学習、強化学習を継続して研究されています。現在は、福田修教授の研究室で進められている電動義手の研究と連携し、特に義手の筋電制御を研究されているそうです。義手の動きを最適化するためには、実際に義手を動かして大量のデータを蓄積し、分析し、その結果を制御に反映する必要があります。人間が着けるため、上下左右に直線的に動けば良いというわけではなく、動きのしなやかさが必要で、モーター音などの音もできるだけしないかっこいい義手(使う人が気持ち良く着けられる)が望ましいというお話でした。

筋電制御の研究にロボットアーム?

研究室でデータ蓄積に使用するロボットアームを探したところ、数百万円の価格帯で数点あることが分かりましたが、すぐに導入できる費用感ではなく、学生に候補製品を再調査してもらったそうです。再調査から、サイズも価格もコンパクトなロボットアームDOBOT Magician®を見つけ、詳しい仕様を確認したところ、研究で利用できると判断し、購入を決めました。初めてDOBOT Magician®を使用した学生は卒業研究で活用したとのことでした。

隣の福田研究室ではロボットアーム自体を製作していることもあり、候補製品として数百万円のロボットアームを比較していた頃には自作も考えたそうです。しかし、部品加工に始まり、本体の構造に加えて、思い通りに自由な動作ができるロボットを作るには卒業研究で費やせる数か月では到底かなわないこと、本当にやりたいことは動きのデータを収集、蓄積し、義手の動きを最適化することと考え、市販品の調査に立ち戻ったとのことでした。

お話を伺った時点でロボットアームは1台でしたが、安全面からDOBOTの動作スピードには限界があるため、複数台を並行で動かすことでしなやかな動きの学習に必要な大量のデータを集めたいと言われていました。また、2台のロボットアームを協調させて動かすことで、例えば紐を結ぶような、両腕でなければ難しい動きを研究したいというお話で、追加調達も考えているそうです。DOBOT Magician®の1台当たりの価格はPC1台と同程度で、ツールと考えれば十分安い価格帯とお考えでした。

専用ソフトウェアで使い始めはスムーズ、しかし研究が進むと苦労が

初めてのユーザーは卒業研究に取り組んだ学部4年生で、専用ソフトウェアを使うことでロボットアームDOBOT®を動かすことはすぐにできたそうです。しかし、ロボットアームを義手と見立てて動かそうとしてからが苦労したというお話でした。DOBOT®は一連の動作が終了するとヘッドが真下を向くように戻る設計になっていますが、義手は自由な位置で停止する必要があるためです。

エンドエフェクタの制御が大きな課題

DOBOT Magician®にセットされているエンドエフェクタ(DOBOT®ではツールヘッドと呼ばれます)には、グリッパーや吸盤キット、ペンなどがありますが、義手に該当するものはありません。グリッパーは、オブジェクト(目標となるモノ)を挟む、つまむことはできますが、ヒトの手のように五指を使って握る、掴む、包むような動きはできません。ヒトの手は、握る、掴むといった動きと、手首のひねりや回転の動きを組み合わせて目標となるオブジェクトを捉えています。筋電制御でこの動きを実現することが現状の大きな課題とのお話でした。

手のひらの吸盤で、モノをつかむサポート

卒業研究はエンドエフェクタにハンドを固定し、手のひらの中心に吸盤を付け、角度や高さを調整した上で、最適な位置まで動かして物体を掴むというものでした。DOBOT®の吸盤キットを活用し、ハンドや手袋を装着させることでヒトの手を模した状態を作ります。ロボットアームで手のひらを期待する位置までしなやかに動かし、手のひらに吸着させてモノを取る、掴む動きです。五本の指があっても手のひらに吸着させることで動きをサポートできるとのお話でした。

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「人工知能」という言葉の広がりと学生の反応の変化

日頃目にするニュース番組でも「人工知能」という言葉がしばしば聞かれるようになった今、この数年で学生の皆さんの反応に変化はありましたかとお聞きしました。まず、言葉を耳にした時に関心を示す学生が増えたこと、次に、どんどんコンピュータが賢くなっていく(学習する)様子を目にして驚き、面白さを感じて研究室に入ってくる場合もありますと例を挙げてくださいました。以前よりも入口段階でのハードルは低くなったと言われる一方で、いざ自分が作る側になると大変さを感じて尻込みしてしまう学生も居るそうです。学生が卒業研究の一年間で取り組むには、難しいけれどもとても面白いテーマですとのお話でした。

一般家庭へ広がる人工知能のこれから

今後、人工知能は本当に一般へ広がっていくでしょうかとお尋ねすると、山口准教授は次のように答えてくださいました。

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人工知能が家庭に入ってくるのももうすぐだと思っています。一般家庭に広がる(=売れる)ことで価格も下がっていくでしょう。ユーザーが人工知能の搭載有無を意識することは無く、生活を豊かにするところへ活かされていくと考えています。現在、我々は義手の動きを研究していますが、次第にサポートアームへと進んでいくのではないかと思います。腕は2本と限定することなく、誰もがいつでも装着でき、自由に動かすことのできる第3の腕、第4の腕が実現する世の中がくるでしょう。

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