電子部品実装ロボットや工作機械の開発・製造・販売を行う株式会社FUJI(以下、FUJI)は、創造的開発のエンジンと成り得る人財の育成を目指し、技術者教育に力を入れています。その活動の一つに、配属前の技術系新入社員を対象とした研修プログラム「創開塾」や組込みソフトウェア技術教育を目的としたロボットコンテストへの出場があります。
今回は、これら二つの取り組み内容について、ロボットソリューション事業本部ソフト技術部の加藤剛氏、吉岡諭氏、大竹徳人氏、ロボットソリューション事業本部ASPプロジェクトの高橋孝友氏、森陰涼氏、総務部人事課の神谷祐樹氏の六名にお話を伺いました。
「Innovative spirit」で革新的な製品を世界へ
FUJIは、パソコンやスマートフォンの回路基板に電子部品を装着する電子部品実装ロボットと、自動車や機械メーカーの製造現場に欠かせない、金属素材を切削・加工する役割を担う工作機械の開発・製造・販売を行っています。FUJIの製品は世界60ヵ国以上に出荷され、電子部品実装ロボットは世界トップクラスのシェアを誇り、グローバル企業として国内外の製造現場を支えています。
コーポレートメッセージとして「Innovative spirit」を掲げており、新しい価値を創造し革新的な製品を提供していくために、社員研修をはじめ様々な取り組みをされています。今回はその中から、技術系新入社員が製品開発に取り組む「創開塾」と組込みソフトウェア技術教育を目的としたロボットコンテスト「ETロボコン」の取り組みを紹介します。
創造的開発のエンジンと成り得る人財を育む「創開塾」
FUJIでは、新入社員の入社後研修として、企業理念や業務理解、ビジネスマナーなどを学ぶ約二週間程度の導入教育とものづくりに関する知識やノウハウを身につける約五か月間にわたる工場実習を行います。さらに、技術系新入社員は、その後「創開塾」というFUJI独自の研修プログラムに取り組みます。
創開塾は「創造的開発のエンジンと成り得る人財の育成」を目指し約半年間行われます。技術系新入社員は製品開発に必要な知識や技術を習得しながら、自身で製品開発をします。研修プログラムは、機械やソフト関係の基礎を学ぶ座学と製品開発を行う実習で構成されています。学生時代の専攻にとらわれることなく、プログラミング言語やコーディング、CADでの図面作成といった、様々な分野の基礎知識を学べるカリキュラムが特徴的です。研修期間のおおよそを占める製品開発では、三人一組のチームになり装置の開発・製造を行います。導入、設計、制御、組み立て、検証と実際の開発工程に沿って、ものづくりについて実践的な場を通して学びます。「創開塾を通して、技術系新入社員が配属前にFUJIで必要な知識や技術、開発経験を積むことができ、大学で専攻していた分野以外の知識を身に付けられる機会にもなっています。」と神谷氏は話されました。
実践的な場で学びを深める、チームで挑むロボットコンテスト
技術系新入社員を対象とした新人研修のもう一つに、ロボットコンテスト「ETロボコン」への出場があります。FUJIがETロボコンと出会ったのは2010年に遡ります。当初は社員の自主活動としてコンテストに出場していました。その後、2015年より配属先がソフトウェアの設計・開発部門となった新入社員研修の一環として、創開塾で学んだ基礎知識をチームで実践する応用の場にETロボコンが活用されています。今年は一チーム四名で構成された二チームが出場しました。コンテスト出場に向けて、5月から地区大会が開催される10月まで週二日業務内で活動します。参加した各チームのリーダーを務めた高橋氏と森陰氏に活動の様子を伺いました。
「初めての大会参加でしたが、ロボコン活動を通して要求から仕様への落とし込みについて理解することができました。活動中は、大竹さんをはじめとした講師陣から、仕様書を見て実現性があるのか、受け取り手に伝わる内容になっているかなど細部まで目を通してフォローしてもらえる体制や環境に助けられました。」(高橋氏)
「コース上で実機を動かすことで修正箇所に気づき後戻りを経験しました。実機で検証する大切さをはじめ、活動全体を通して沢山の学びと気づきがありました。また、チームで協力しながら設計やコーディングに取り組むことでより達成感を得られました。」(森陰氏)
FUJI社内での活動の様子
多面的に新入社員を育む、先輩社員が携わる体制づくり
ETロボコン出場経験者でもあり講師役を担う大竹氏と吉岡氏に、講師としての活動や印象深いことを伺いました。
大竹氏は新入社員が作成した資料に目を通してフィードバックしたり、大会までのスケジュール感を伝えたりと新入社員を一番近くで支えていました。昨年のETロボコンでモデリング部門4位を獲得した経験を活かし、新入社員のモデリングをチェックするときは、当時の改善点を踏まえながらアドバイスできたそうです。講師としての活動について、「長期間にわたってチームを支えるため講師ならではの忙しさはありましたが、新入社員が活動している作業場に顔を出し交流を深めるようにしていました」と大竹氏は話します。
業務でアーキテクチャ育成に携わっている吉岡氏は、その実績や過去の講師経験を活かし、モデリングや資料のレビューを行います。「毎年レビューをする中で、自分が参加した時と比較して、内容が年々高度になっている印象があります。」と吉岡氏は話します。大竹氏をはじめ若手社員がレビューをした後に、吉岡氏と他二名の中堅社員が更に細かくチェックするようにレビュー体制を整えるなど、ETロボコン出場経験のある先輩社員が多数いる強みを活かした人財育成を行っています。
ETロボコンの活動に限らず、前述の研修プログラム「創開塾」も先輩社員を巻き込んだ人財育成の体制が作られています。創開塾の実施にあたって、入社二年目は相談役、三・四年目の社員は講師役として携わることもあります。また、カリキュラム作成や運営を三十代、四十代の社員が担い、AIに関する講座を盛り込むなど外部環境や業務内容を鑑みながらカリキュラムの改良を重ねています。
このようにFUJIでは組織全体を巻き込みながら、配属前後の技術系新入社員へ実践的な学びを取り入れています。これからも、新しい価値を創造し革新的な製品を世界中に提供していくため、創造的開発のエンジンと成り得る人財の育成は続きます。
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