地域ものづくり企業と子どもたちがつながる産官学連携ワークショップ

本記事は20197/20(土)に開催された第12回 科学技術におけるロボット教育シンポジウムの講演レポートです。

「ものづくり産業の理解増進を目的とした産官学連携の取り組み
~大阪テクノマスターによる地域の小学生を対象にしたワークショップ~」
福田哲也¹、西垣慶祐²
1:追手門学院大学ロボット・プログラミング教育推進室、2:奈良教育大学

大阪テクノマスターと地元小学生のワークショップが実現するまで

福田室長はこれまで15年に渡ってロボット教育に携わり、追手門学院大手前中・高等学校においては、2013年から正規のカリキュラムとして年間6回のロボット・プログラミング授業を実施しているそうです。プログラミング教育必修化に先行した実践は各地からの視察要望も多いそうで、2019年4月には事例発表に登壇された福田室長が中心となって「ロボットプログラミング教育推進室」が立ち上げられています。グループ校はもちろん、外部からの依頼も受けて、年間20回にも及ぶセミナーを実施しているそうで、関西地域を中心に活動しているとのお話でした。そうした中、大阪市が展開しているテクノマスター制度からテクノマスター勉強会への声がかかり、産官学連携ワークショップ実現の運びとなりました。

大阪テクノマスター制度

大阪市内のものづくり企業で、優れた技能を持ち活躍している人材を「大阪テクノマスター」として認定・顕彰する制度です。「大阪テクノマスター」の皆さまは、次代のものづくり人材育成活動に参画し、裾野拡大を目指す活動をしています。

ものづくりに対して熱い思いをお持ちの福田室長は理科がご専門ですが、テクノマスター勉強会へのお誘いがかかった際、ふとこんなことを思ったそうです。大阪には町工場が数多くあり、卓越した技能を持つ技術者が日々真剣にものづくりに携わり日本を支えてきたのは間違いのない事実です。一方、教育の現場で子どもたちにそのことを伝えられているか、子どもたちは自分の身近に存在する素晴らしい技術者、世界に誇れる技術を知らないのではないかという疑問です。室長は、2019年2月に参加されたテクノマスター勉強会で若い世代のテクノマスターに出会い、ご自身が町工場に対する昔ながらのイメージ(後継者不足、重労働など)を持っていたことに気付かれたとお話されています。

これほど身近に卓越した技能があるにも関わらず、騒音対策のために工場は締め切られ、子どもたちが技術を知り、技術者と出会うチャンスが無くなっていると言います。そこで、テクノマスターの皆さんと子どもたちをつなぐ機会として、ロボット教室を企画し、7名のテクノマスターと行政の協力も得て実施することになりました。テクノマスターは、金属加工や溶接、切削加工など、それぞれが大阪市から認定された高度な技術をお持ちです。

ロボット教室のねらい

  • 大阪テクノマスターと小学生の子どもたち、中高生が出会う場を作ることで、地域産業を知り、地元に存在する卓越した技術者、先端技術を理解する機会を生み出す。
  • 技術者と子どもたちが共にロボットワークショップに参加することで、楽しみながらプログラミングを体験する。

高校生が主体的に臨んだワークショップ企画と実施

福田室長が顧問を務める「ロボットサイエンス部」の中学生、高校生たちは、日頃から多数のセミナー運営に携わり、小学生らに教えたり、教室の内容自体をイチから考えたりというように、企画、準備、実施の経験を積んでいるそうです。今回のテクノマスター勉強会でも高校生が企画した課題をミッションとした他、当日の司会やスライド投影を含め、大活躍した生徒の皆さんでした。

ロボットワークショップの概要

  • 日程:2019年6月9日(日)
  • 会場:ガレージミナト(Garage Minato)
    大阪テクノマスターのお一人が所属する「成光精密株式会社」のオープンイノベーション拠点施設で、ものづくりスペースやイベント・セミナーを実施可能なオープンスペースを備えています。
  • 参加者:地元の小学5、6年生14名/大阪テクノマスター7名
  • 実施形式:小学生2名とテクノマスター1名がチームを組み、課題(ミッション)に挑戦する。

ワークショップの流れ

  1. 開会
  2. 大阪テクノマスターの紹介
    高校生らは演出に工夫を凝らし、スポットライトやマイクによる華々しい呼び出しで、会場を盛り上げました。
  3. 基本プログラムの習得
  4. ミッション「宇宙飛行士救出作戦!」の説明
  5. ミッション練習
  6. テクノマスターによる講和「ものづくりのすばらしさ」
  7. 閉会式、表彰式(テクノマスターより講評)

初対面でチームを組む大阪テクノマスターの皆さんと子どもたちがよりスムーズに取り組むことができるよう、ワークショップの始まりには司会からテクノマスターの皆さんを紹介する時間が設けられました。紹介スライドを作成したのも高校生で、お一人ずつ「○○の達人!」といったように、イベントさながらの華々しい登場となったそうです。

小学生の反応と今後に向けて

参加した小学生のアンケートでは「とても楽しかった」と答えた児童が13名と、子どもたちの良い反応が分かる結果となっています。また、「大阪にものづくりの達人(大阪テクノマスター)がいることがわかりましたか」という質問には、参加者全員が「よくわかった」「わかった」と回答していることから、ロボットセミナーを楽しみながら、大阪テクノマスターを知る、わかる機会になったと言えるでしょう。

福田室長は、次のように述べられました。

これまで企業が学校と関わるには高い壁があった。これからは学校と行政や企業が連携し、産官学も大学だけではなく中高レベルでの取り組みが必要になっていくだろう。今回参加した小学生は14名で、決して多い数とは言えない。この場に来た子どもたちはよく理解できていると考えるが、地域産業の普及・理解増進の点では、もっと多くの子どもたちに知る機会、技術者と出会う機会を提供できるよう工夫が必要である。

パイロット事例としての大きな価値

今回のロボットワークショップは、地域産業の重要な担い手である大阪テクノマスターの皆さんと地元の小中高校生が関わり、産官学連携で実施された価値の高い事例と言えるでしょう。当日運営スタッフとして参加した追手門学院大手前中学校・高等学校の生徒の中には、終了後、Minato Garageのものづくりスペースに設置されている機械や部品に着目し、写真を撮影したいと言い出した子どもたちも居たそうです。また、テクノマスターと連携したロボット開発も計画中です。ものづくりの現場を知るチャンスが少なくなっている現代の子どもたちが、優れた技術者を通じてものづくり産業に出会い、理解する機会として今後も発展することを期待したいと思います。

参考リンク

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