【授業実践】現場はある意味「ロボットだらけ」、臨床検査技師を目指す若者の学びをレポート

(お写真はRobotics Education Day登壇時)

医療現場では様々な自動分析装置が活用されています。検体検査及び生理学的検査によって患者データを作成する臨床検査技師の扱う内容は幅広く、医療の発達により検査対象はますます広範囲となっています。病院や医療センター等で活躍する臨床検査技師は国家資格の取得が必要な検査のプロで、我々が健康な暮らしを営む上で、病気の予防や早期発見に重要な役割を果たしています。

今回は、将来、臨床検査技師を目指す若者が集まる神戸常盤大学 保健科学部 医療検査学科における授業実践について、関雅幸 講師にお話を伺いました。

私たちも日々お世話になっている、臨床検査技師の役割とは

神戸常盤大学 保健科学部 医療検査学科では、検査や分析を専門に担当する臨床検査技師を目指す学生が学んでいます。医療の発達に伴い、検査・分析の対象は飛躍的に増え、日々新たな情報がもたらされる中、若者たちは四年間をかけて講義や演習、医療現場での実習を経て検査技術を身に付け、膨大な知識を獲得していきます。臨床検査技師の仕事を想像できる身近な例としては、健康診断の採血が挙げられます。臨床検査技師は細胞や体液を分析する検体検査や、超音波(エコー)や心電図といった生理学的検査を担当したりします。検査結果を元に医師が診断や治療を行うため、非常に重要な役割を担う職業です。

また、現代では患者の暮らし方の多様化、新しい病気や症状への対応、地域との関わりといった観点から、専門分野の異なる医療関係者が連携して治療にあたるケース(チーム医療)も増えており、倫理観や人間性といった医療に携わる上で重要となる人間的な成長も意識することになります。

医療系学部で、ロボット?制御?プログラミング?

臨床検査技師には、生物系、化学系の広範囲に渡る知識が必要とされます。それに加えて、現在の医療現場では多数の検体を効率よく分析するために自動化された分析システムや装置の利用が必須となっています。ここで、授業概要を見てみましょう。

授業概要(シラバスより抜粋)

  • 学年、実施時期:3年生、後期
  • 授業形態:演習
  • 科目名/サブタイトル:ロボティクス演習/現場はある意味「ロボットだらけ」
  • 使用教材:教育版レゴ® マインドストーム® EV3
  • ねらい:演習を通じて問題解決について学び、また、現場にある機器の仕組みの理解につなげてもらいたい。

サブタイトル『現場はある意味「ロボットだらけ」』が意味すること

関講師が担当されている「ロボティクス演習」という授業には、『現場はある意味「ロボットだらけ」』という、ユニークなサブタイトルが付けられています。このサブタイトルにはどんな意図があるのかお聞きしました。

関講師:医療検査学科の学生は、約二ケ月間に渡って実際の病院や検査室での実習を経験します。大学で経験している様々な検査は、原理を学ぶために手作業で分析します。しかし、現場に行くと非常に多くの検体を迅速に検査・分析する必要があり、自動分析装置や検体搬送システムといった大掛かりな装置が使われている様子を目にします。医療現場に並んでいる装置はある意味ロボットと言えるわけで、そういったところから今のサブタイトルになりました。

ロボットキット採用のきっかけ、実物が動く喜び

現在の授業で使用されている教育版レゴ® マインドストーム® EV3を採用したきっかけをお尋ねしました。

関講師:元々は、短大だったころに所属していた学科のゼミでBASICを使ってプログラミングをしてもらったり、Windowsを使えるようになってからはお絵かきしたりといったこともやってもらっていました。2001年に公立はこだて未来大学で行われた学会に参加した際、後輩の先生にレゴ® マインドストーム®を見せてもらいました。これは面白いと思い、神戸に戻ってすぐ販売店に行き入手したものをゼミの学生に見せたところ、使ってみたいという学生がいて、そこから今につながっています。
ロボットと聞くといろいろなものが必要と想像しますが、マインドストーム®は、やはりブロックを使って手軽にロボットを組み立てられる点、自分で作ったプログラムで実物が動く点に楽しさがあります。また、情報系の専門ではない人も手軽にセンサーを利用でき、EV3ソフトウェアならプログラミングにも取り組みやすいです。心理的なハードルを低くすることができていると思います。プログラミングが初めての学生も多く、全員が得意というわけではないですが、3年後期の選択科目としていますので本当に関心を持った学生が受講します。ロボット作りとプログラミングの両方に取り組むことで、実現したい複雑な事柄を小さく簡単な要素に分解して考え、手順を組み立て解決していく手法を学ぶこともできます。

卒業研究で実現された「仕分けロボット」/「染色ロボット」

2012年度から医療検査学科の卒業研究を担当され、レゴ® マインドストーム®を用いたロボットと制御プログラムの作成を指導されています。これまでの卒業研究で印象に残った内容をお聞きしました。

関講師:初めての担当学生がカラーセンサーを使った「仕分けロボット」を作りました。その頃はEV3ではなくNXTで、ソフトウェアはLabVIEWを使うというかなりチャレンジングな卒業研究でした。
2016年度には「染色ロボット」を作った学生がいました。このロボットは本学で行われた「第11回日本臨床検査学教育学会学術大会」での発表の中でも紹介しています。このロボットは「グラム染色」(※1)を行うもので、カラーセンサー、タッチセンサーを使用しており、ハードウェアとしてはアームの動きに工夫がありました。
(※1:グラム染色は体組織の中にある細菌を識別する手法で、これによってグラム陽性菌(紫に染まる)とグラム陰性菌(ピンクに染まる)に分けられます。)

染色ロボットの細菌塗抹標本に対する動き

  1. クリスタルバイオレット液に浸す(前染色)
  2. 水洗
  3. ルゴール液に浸す(媒染:陽性菌を染めた色素がエタノールに溶けないようにする)
  4. 水洗
  5. エタノールに浸す(脱色・分別)
  6. 水洗
  7. サフラニンに浸す(後染色)
  8. 水洗

染色ロボット_記事用.png

卒業研究では学生の発想を広げてもらいたいので検査にこだわらなくてもいいと話していますが、このときは学生から検査に役立つロボットを作るために水や試薬を使いたいという相談があり、電子機器に配慮した形(※2)でやってみようということになりました。
(※2:薬品や水を電子機器と併用することから、EV3のインテリジェントブロックにカバーをするなどの対策をしたそうです。)

学生のコメント

関先生から、このゼミを選択した学生たちのコメントを教えていただきました。

  • Aさん:子どもの頃に遊んでいたレゴブロックと、初めてのプログラミングが組み合わさるところが新鮮だった。
  • Bさん:検査結果は、機械(分析装置)を通してでないと分からない。この授業では、自分でロボットを作るその過程が見えるのが面白いと思った。

続いて、就職してからどのように役立ちそうかとの質問に対するコメントです。

  • Cさん:分析装置のメンテナンスが気になりそう。(※注:臨床検査技師は自ら機器のメンテナンスをすることもあるそうです。)

身に付けてほしいのは、考える力

関講師:臨床検査技師というのは必要とされる知識量が膨大で、学生は国家試験に備えて本当に多くの内容を記憶することになります。もちろん業務に必要な知識ですが、検査に限ると、今後、人工知能が進化することで検査そのものは人工知能に取って代わられるかもしれません。ただし、検査の結果を医師や医療スタッフ、患者に対してどのように説明するか、その後にどうつなげるか、人と人が関わるところは人にしかできません。そのときに、論理的に考えるトレーニング、考える力が必要になってくると思います。これから臨床検査技師という職業に必要とされること(知識や技術)は変わっていくかもしれません。しかし、考える力というのはますます重要になると思っています。

参考リンク

関連記事