コンテストロボット活用事例

国際大会はいつも見られない景色が見られるんだ、小学生チームの熱いチャレンジ

2018年5月のインタビューを元にした記事です。

日本では全国各地でたくさんのロボットコンテストが開催されています。その中でも小学生から国際大会を目指すことのできる大会があることをご存知でしょうか。WRO(World Robot Olympiad:ダブルアールオー)と呼ばれる自律型ロボットによるコンテストは、2004年に第一回シンガポール大会が開催され、これまでに14回を数えます。

本記事では、2017年のWROコスタリカ国際大会(WRO Costa Rica 2017)に日本代表として参加した小学生チーム「FrozenBlizzard」へのインタビューを元に、創造力を発揮してロボットを創り上げるチャレンジの様子をお伝えします。

WRO(World Robot Olympiad)

世界中の子どもたちが自分たちでロボットを製作し、プログラムによる制御を競う国際的なロボットコンテストWROには、いくつかのカテゴリーがあります。それぞれ対象や特徴が異なりますので、日本で開催されている三つの部門を説明しましょう。

レギュラーカテゴリー
最も参加チームの多いレギュラーカテゴリーは、指定される競技コース・課題をできるだけ速くかつ正確にクリアすることが求められます。小学生、中学生、高校生部門があり、指定される市販ロボットキットのみを用いてロボットを製作します。

Advanced Robotics Challenge(ARC)
17~25歳の学生が非常に高度な制御と複雑な機構にトライするAdvanced Robotics Challenge(ARC)では、ロボットの筐体への深い理解と工夫、より高い技術力による解決が必須となります。2017年の競技はテトラスタックと呼ばれる様々な形の木製ブロックを積み上げる内容でした。

オープンカテゴリー
オープンカテゴリーは社会問題を解決するロボットの制作がテーマで、2017年は「Sustainabots [Robots for Sustainability]」、サステナビリティ=持続可能性として提示された四つのゴールのうち、一つを選んでロボットを構築するというものでした。大会当日は、2m×2m×2m(幅×奥行×高さ)のブースに設置するロボットやポスターなどの展示物、審査員に向けてのデモンストレーションやプレゼンテーション(国際大会では英語による)等によって審査されます。

FrozenBlizzradチーム構成

(※学年は2018年5月のインタビュー時点。2017年コスタリカ大会ではそれぞれ4年生、3年生でした。)

  • 選手:片岡嗣葉くん(小学5年生)
    小学1年生からロボットづくりの教室に通い始め、2回のWRO Japan大会出場を経て、3回目の2017年、国際大会への切符を手にしました。
  • 選手:小助川晴大くん(小学4年生)
    片岡くんよりロボットづくりの経験は短いものの、教室での学びを素直に活かし、初参加で日本代表となりました。
  • コーチ:田中聡大さん(LITALICOワンダー)

テーマの広さとプレゼンテーションこそが、オープンカテゴリーの面白さ

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片岡くんと小助川くんに、オープンカテゴリーについて聞いてみました。(Q:アフレルからの質問)

Q:オープンカテゴリーはどんなところが面白いですか?
片岡くん:プレゼンテーションを自分たちで考えられるところ。見ている人はどこで印象を受けるのか、人の気持ちを考えるところ。全国大会より国際大会の方が反応が大きかった。
小助川くん:サステナビリティのテーマは広くてどんなロボットを考えても良かった。国際大会はお客さんがたくさんきてくれて、ワクワクした。

Q:あの衣装はどうやって考えましたか?
小助川くん:去年の写真を見たら、浴衣を着たり衣装で工夫してた。だから僕たちも寒い中で動物が居る様子を考えて、あの衣装にした。
片岡くん:探検隊の衣装にした。暑い中で大変だった。

Q:大変だったことはありますか?
片岡くん:最初は一人でロボットを考えていて、一体に三つの役割を持たせていたんだけど、はるたがきてくれてそれは厳しいねと三体のロボットになった。
小助川くん:やっぱり英語が難しかった。慣れてないと伝わらない。

Q:お互いにすごい!と思ったことは何ですか?
小助川くん:つぐはは、僕の次元を超えてめっちゃすごいロボットを作ってた。創造力がすごい。
片岡くん:はるたは、基本的なことを思い出させてくれる。プログラムのこと。

(これにはエピソードがありました。ある日、片岡くんが作っているプログラムを小助川くんが見てみたところ、とっても長くて複雑なプログラムだったそうです。習ってるはずのプログラムがあるのに、どうしてそんなに長いプログラムを書いてるの?と二人で話し合いになったと言っていました。)

けんかについても聞いてみましたが、二人の答えは同じでした。「けんかはしない。意見の食い違いがあるだけ。」お互いの考えをよく聞いて、話し合って、意見の違いを受け入れて良いものにする流れが出来上がっているようです。

コーチに聞く「FrozenBlizzard」の活動を通して感じた子どもたちの変化

片岡くんが初めてWRO Japanに参加した時からずっと一緒に活動している田中コーチに、FrozenBlizzardとして過ごす中で、二人に現れた変化を伺いました。

初めてリーダー側に立って頼もしくなっていった片岡くん
小学1年生からロボットづくりの教室に通い始めたという片岡くんは、ロボットを作ることにかけては誰にも負けない力を持っているそうです。2016年までは上級生とチームを組んで、引っ張ってもらう形で大会に参加していましたが、2017年、自分で進めていく側に立ったことで、頼もしさを増していったそうです。

受け身の姿勢から提案できるように変わっていった小助川くん
チームを組む一年前、片岡くんと上級生のペアが教室のイベントで発表する様子を見ていた小助川くんにとって、片岡くんは身近なかっこいい先輩でした。二人で活動を重ねていくうちに、片岡くんの意見を受ける立場から、自ら提案もできるような良い関係を築いていったそうです。

強みの違いが生む相乗効果
片岡くんはロボットづくりの経験が長いことから技術的なアドバンテージがありました。一方、小助川くんは教室に通っている期間は片岡くんより短いものの、まじめできちんと物事を進めるのが上手で全体進行に力を発揮したそうです。二人は学年が一つ違いますが、素直で吸収の速い小助川くんがどんどん成長していく様子が、油断していると追い越されるかもしれないという緊張感を生み、片岡くんにも刺激となっていたとのことでした。

子どもたちをサポートする立場として

コーチとしてどういった点に配慮されましたか?という質問に、田中コーチは次のように答えてくださいました。

「大人が手取り足取り介入しないこと、本人たちに作ってもらうことです。発想を広げるところをサポートするようにしています。もっとここを調べてみたらと伝えたり、違うところに目が向くようにヒントを出すことを意識していいます。」

大会参加にあたって苦労した点を伺ったところ、次のようなお話でした。

「活動機会、時間が限られることです。片岡くんと小助川くんは違う教室に通っているので、活動日は週末になります。それぞれでアイディアは考えてもらいますが、実際に作ることができるのは二カ月ほど、10回程度です。大会が近づくと追い込みで平日も活動しましたが、オープンカテゴリーは求められる作品規模が大きいため、たくさん失敗してもらいたいと思う反面、時間との兼ね合いを見極める必要があります。もう一つは作品の保管場所、練習場所に困りますね。」

おわりに

最後に、田中コーチにこれからについてお聞きしました。

「オープンカテゴリーでは、抽象的なテーマ、遠いミッションから、まず課題を発見し、設定することが求められます。大人がこれと言うのは簡単ですが、子どもたちが気づきを得て、子どもたち自身で決めることをサポートできればと思っています。本人たちの力で作り上げた感覚を持ってもらい、大会出場を応援する立場で関わっていきたいです。」

参考

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