コンテストロボット活用事例

キャンディでフードロスを解決?小学生チーム「Candy Samurai」の奮闘を追う

小学生から大学生までの子どもたち(児童、生徒、学生)が参加する、国際的なロボットコンテストWRO(World Robot Olympiad※1)をご存知でしょうか。市販のロボットキットを使い、競技課題をクリアするためにチームが様々な工夫を凝らします。国際大会では世界60を超える国と地域から代表チームが集まり、そこでの国際交流も大会の魅力の一つです。

今回、WRO Japan 2018決勝大会オープンカテゴリー(エレメンタリー:小学生)で優秀賞に選ばれ、11月16日から開催されたWRO 2018タイに出場したチーム「Candy Samurai」(世田谷区立中丸小学校、横浜国立大学教育学部付属横浜小学校、渋谷区立猿楽小学校)の皆さんにお話を伺いました。

WRO(World Robot Olympiad)オープンカテゴリー

WROの主な競技としてレギュラーカテゴリーとオープンカテゴリーがあります。レギュラーカテゴリーは、競技コースを走行しながら課題をクリアし、得点とタイムを競います。オープンカテゴリーは社会問題を解決するロボットを制作する競技で、2018年は「FOOD MATTERS(食糧問題)」をテーマにロボットを使った製作展示、発表を実施しました。大会当日は、2m×2m×2m(幅×奥行×高さ)のブースに設置するロボットやポスターなどの展示物、審査員に向けてのデモンストレーションやプレゼンテーション(国際大会では英語による)、作品の創造性や工学的デザイン、チームワーク等を審査され、一般の観客に対するデモンストレーションも行います。

Candy Samuraiチーム構成

チームメンバーは小学4年生の只石倖大くん、小助川晴大くん、小学5年生の片岡嗣葉くんの3名で同じロボット教室に通っています。小助川くんと片岡くんの二人は、WRO Japan 2017、WRO 2017 コスタリカにも出場した経験があり、さらなるパワーアップを目指していたそうです。そこに只石くんが加わり、Candy Samuraiが誕生しました。チームが3名になって活動をスムーズに進められたか聞いたところ、意見の違いでぶつかることもあったそうですが、目指すところを共有することで最終的には協力して作り上げることができたと話してくれました。

廃棄される食料を再加工、栄養満点のあるものに変身

3人は、課題である「FOOD MATTERS(食糧問題)」の解決に向けた糸口として、各自がいくつかのテーマを調べて持ち寄り、取り組み内容を「フードロス」に決めたそうです。WRO Japan 2018決勝大会のプレゼンテーションで示された資料には、次のような記述があります。

「世界には、まだ食べられるのに捨てられている食料が年間632万トンもあります。これは1億2000万人の日本人が毎日おにぎりを二つずつ捨てているのと同じ量で、世界の飢餓国に対する食糧援助の量320万トンの約2倍にも相当する量を廃棄していると言えます。」

日本のフードロス問題を解決し、飢餓に苦しむ人たちを笑顔にしたいと考えた彼らは、一つの解決策を思いつきました。「食べられるのに捨てられる食料を栄養満点の粉に加工し、子供も大人も好きなキャンディ(飴)に作りかえる」というものです。

ロボットによるキャンディ(飴)の製造工程

  • ROBOT1:捨てられる食材と容器を仕分けする
  • ROBOT2:食材をフリーズドライ加工する
  • ROBOT3:フリーズドライされた食材を粉々にして運ぶ
  • ROBOT4:栄養満点の粉とキャンディの原材料を混ぜる
  • ROBOT5:キャンディを切り分ける
  • ROBOT6:最初に仕分けた容器を加工して作った袋へキャンディを詰める(パッケージにする)
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ロボット製作・開発にあたって、三つの点を工夫したそうです。
  1. キャンディを効率的に生産するため、全てのロボットを全自動にした
  2. 電力消費量を少なくするため、重力を使って滑り台で流れる設計にした
  3. 材料の無駄を無くすため、食材が入っていたプラスチック容器を再加工してキャンディの袋を作った

会場でブースいっぱいに組み上げられたキャンディ製造工程のロボットを目にして、どのように仕上げたのか思わず尋ねました。彼らの通うロボット教室ではスペースが不足したため(常設が難しい)、なんとメンバーの自宅で作業を続けたと言います。

さらなる工夫で挑む世界の高い壁

「Candy Samurai」のメンバーのうち二人は、WRO 2017 コスタリカに出場した経験があります。コスタリカでは、最終的にオープンカテゴリー(エレメンタリー)で1位と2位を獲得したチームの間にブースがあったそうで、世界トップレベルの発表を間近で見て、自分たちのデモンストレーション、プレゼンテーションとの大きな違いを感じたと言います。その経験から「今年こそは記録を残したい。」と語りました。

まず、より多機能なロボットを作るために使用するEV3(コンピュータを内蔵したブロック)を2台から5台に増やしました。さらにメンバーも1人増え、チームのパワーアップを図りました。WRO Japan 2018 決勝大会で日本代表に選出された彼らは、WRO 2018タイを見据えて次の点を工夫したいそうです。

  • キャンディをのばす工程を入れる
  • パッケージ化する工程をスケルトンに、キャンディが袋に入るところまで見せる

WRO 2018 タイでは、一層レベルアップしたロボットやプレゼンテーションを披露し、見事入賞を果たした彼らへの取材は次の機会にお届けします。

参考リンク

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