他者との関わりを通した学びと成長、スクールならではの協同学習

他者との関わりを通した学びと成長、スクールならではの協同学習

学習指導要領の改訂により小学校におけるプログラミング必修化が確定してから、民間、行政、NPOなどが開設するプログラミングスクールは増加の一途を辿り※1、その種類も取り組み内容も多岐に渡ります。教室の急増に伴って生徒数も増え続けており、身近に開校した教室をご存知の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ロボットを使ったプログラミング教室として5年目を迎える栄光ロボットアカデミーの授業見学の様子をレポートします。また、講師や生徒の皆さんへのインタビューを通して分かった(感じた)スクールならではの学びや成長についてもお伝えします。今回、インタビューに応じてくれたのは、栄光ロボットアカデミー横浜校の室長である池谷将宏さんと、横浜校から「WRO Japan 2019 WeDo Challenge※2 関東大会」に出場し、優勝に輝いた3名の皆さんです。

リラックスした環境で、同年代と学びの時間を共有

2019年11月のある日、栄光ロボットアカデミー横浜校のセカンダリーコース(小学3~6年生が受講)を見学しました。教室の入口には理科や科学、プログラミングなどがテーマの書籍や図鑑が並んでいます。壁面には子どもたちが参加したロボットコンテストの成果である表彰状が掲示されたり、開催予定のコンテストの案内が貼られていたりと、訪れる人が楽しい気持ちになるような飾りつけもありました。

開始時刻の少し前から一人、二人と子どもたちが教室に入ってきます。今回見学したセカンダリーコースは4月に始まり、半年以上に渡って同じクラスで学んでいるため、子どもたちはお互いを知っていて、リラックスした様子です。各自、ロボットキットやプリントをまとめたファイルを取り出して授業の準備を始めます。開始時刻になり、池谷さん(池谷講師)と挨拶を交わし、いよいよ授業スタートです。

横浜校は窓の大きな明るい教室で、中央に置かれた大きなテーブルにその日の課題となるコースが広げてありました。池谷さんは、授業の始めに今後三ケ月(11月、12月、1月)の予定を話し、予定とつなげる形で今日の授業で取り組む課題について説明しました。子どもたちはコースを使って説明される課題を聞き、プリントを見ながらその日にやることを確認します。栄光ロボットアカデミーでは一人一台のロボットキットを使って各自で課題に取り組むため、それぞれの活動が始まると、自分のロボット、自分のプログラムに没頭していました。池谷さんやサポートスタッフは気さくに接しているため、子どもたちは疑問を尋ねたり、会話したりしながら、自分なりに学びを積み上げている様子でした。教室内はリラックスした環境であるものの、学ぶ姿勢を持った同年代の子どもたちが場を共有するため、真剣に考え、プログラムを調整し、ロボットの動きを試す一連の流れを繰り返し、より良いプログラムを追求する姿がありました。

ロボットでつながるバーチャル(PC画面)のプログラミングとリアルな動き

栄光ロボットアカデミーでは一人一台のパソコンと一人一台のロボットを使います。講師から提示される課題はありますが、子どもたちが作るプログラムやロボットにはそれぞれ違う考えが反映され、形も異なり、解決の仕方も様々です。各自、頭の中でロボットの動きを思い描いてパソコンの画面上でプログラムを作ります。作ったプログラムによってロボットが動くことで、バーチャルな画面上でのプログラミングと現実のロボットの動きが結びつきます。その日に作った初めてのプログラムでロボットが完璧に動くことはほぼ無く、より速く、より正確に動かすために改善を続け、何度も試験走行をして、現実の動きを理想に近づけていく様子がありました。

試験走行の間、子どもたちはお互いにロボットの形や動きを観察しています。見学した日は、コース上に置かれている複数の障害物を動かす課題でしたが、スタート位置、向き、どの障害物を動かすか、どんな順番で進むかなど、全員が異なる解決の仕方(順序や組合せ)に取り組んでいました。ただ、ロボットが解決すべき内容は共通しているため、障害物をどう運ぶか、何を判断のポイントにするかなど、他の子どもたちのロボットからもヒントを得て、自分のプログラムを改善していました。

スクールならではの学びとは

プログラミングは子どもも大人も家庭で学ぶことができますが、スクールに通うからこそ得られる良い点も多くあります。

  • 教えるプロによる指導
    スクールには「講師」や「先生」と呼ばれる人が居ます。教えるプロフェッショナルである彼らは、分からないこと、困ったことが出た子どもたちをどのように導くかを理解しています。またロボットやプログラミングについての知識も備えています。もちろん家庭学習でも家族や知人がその役割を果たせる場合もあるでしょうが、教えることと教材の知識の双方を備えている方はごく稀でしょう。
  • 他者との関わり
    同じテーマを共に学ぶ人が居ることで、自分と他者との考え方の違いや取り組む姿勢の幅広さを知る機会を得られます。例えば、複数名のチームを構成してコンテストに出場する場合、お互いの良さを活かすこと、チームでの取り組み方など、協同で学べることも多くあります。
  • 学びを継続する動機付け
    スクールでは、受講する子どもたちの年齢や理解に合わせてステップアップできるようにカリキュラムが組まれている他、折々にコンテストへの挑戦やイベントなど成果発表の場が用意されています。毎回の授業の他にも、三ケ月~半年といった少し長い期間で目標を設けることで継続した学びを実現しやすくなります。

授業見学の当日、池谷さんと子どもたちがインタビューに応じてくれました。(Q:アフレルからの質問)

公式から解答を導く流れとは正反対?ロボットを動かして法則を発見

Q. 元々、一般教科を教えていらしたそうですが、ロボット・プログラミングを教えることになった経緯は?
(池谷さん)国語、算数、英語、理科など、一通りの教科を幼稚園児、小、中、高校生、大人に教えていた経験がありますが、大学ではロボットを研究していましたので、教えるキャリアとロボットの知識を活かせるところと考えて、栄光ロボットアカデミーで教える機会を得ました。

Q. 一般教科と、ロボット・プログラミングで、教える際、最も違いを感じる点は何でしょうか。
(池谷さん)プロセスが反対ですね。例えば数学では公式を覚えて練習することで効果が出ます。ロボット・プログラミングでは、練習しているうちに子どもたちが法則を見出していくので、反対ですよね。

Q. プログラミングを教える際、画面上とロボットを使うことでは、どこが異なりますか。
(池谷さん)実物(リアルなもの)がある方が思い通りに進まないんですね。プログラムを作って、ロボットを動かしてみるものの、うまく動かない。これで正しいはずなのに、と思いながらも試行錯誤できる人が楽しめるのかなと。目で見てすぐに分かる点がロボットがある良さだと思います。

コンテスト参加がもたらす知識と心の成長

Q. WeDo Challengeに参加することになったきっかけをお聞かせください。
(池谷さん)昨年、子どもたちが出たいと言ってWeDo Challengeに参加しましたが、思うような結果を残せなかった悔しさがあったようです。今年も子どもたちが出たいと言ってきたので、同じメンバーでチームを作って申込みました。5月頃には子どもたちに競技ルールを渡して、イメージを膨らませていこうねと話しました。通常の教室授業とは別に時間を取って活動しますので、子どもたちの予定を合わせるだけでもなかなか大変で(チームメンバーの3名はそれぞれ別の小学校に通っています)、夏休みは練習に費やしましたね。

Q. 2年連続で参加して、今年は優勝されたということで、保護者の方の反応はいかがでしたか。
(池谷さん)ほっとしたという印象でしたね。単に喜ぶというのではなく、あれだけの練習があって、優勝という結果が出てほっとされたのだと思います。

Q. 活動する中で一番苦労したことは何でしょうか。
(池谷さん)子どもたち自身が「勝ちたい、勝とう」と決めて、その軸をサポートすることですね。普段の授業は楽しく取り組んでいますが、大会で勝つことを目指すと自分たちで決めてからは、楽しいだけでなく勝つために必要なことを考えるようになって、チーム内でぶつかることもありました。子どもたちには、どうしたらもっとタイムが短くなるか、どうしたら確実にクリアできるかを考えてみようと促しながら進めていましたが、小学3年生ですから気持ちの葛藤もあったようです。

Q. WeDo Challengeに限らずコンテストに参加することで、子どもたちにどういった成長が見られますか。
(池谷さん)ロボットの知識だけでなく、それに至るまでのやり取りで自分の考えをしっかり話すようになったり、目的意識が強くなったり、精神的に大きく伸びたと感じます。

WRO Japan 2019 WeDo Challenge

「WeDo Challenge」は、世界中の子どもたちが、自分たちでロボットを製作し、プログラムによる制御を競う国際的なロボットコンテストWRO(World Robot Olympiad)の中で、より低年齢の子どもたち向けに開催される競技で、対象年齢は6~10歳(未就学児も可)、レゴ® WeDoを使用します。2~3名の選手とコーチでチームを構成し、子どもたちだけでロボットを組み立て、プログラムを作り、競技フィールドで課題に挑戦します。(コーチは大会参加の手続きや当日の引率などが主な役割で、競技には加わりません。)

WRO2019の大会テーマは「スマートシティ」で、WeDo Challengeでもスマートシティを実現する「うんてんしゅのいないスクールバス」を競技としていました。(競技名称が仮名で書かれているのは、6歳の子どもたちが読むことを想定しているためです。)学校やお店、家、それらをつなぐ道路や車といった街の様子が描かれたフィールドを舞台に、ロボットが子どもたちを運んだり、フルーツを運んだりといったミッション(課題)をクリアしていきます。運ぶ順序や制限時間など細かいルールがあり、ルールに則って競技に臨むことが求められます。

栄光ロボットアカデミー横浜校A、チーム構成

  • 選手:大沢礼弥さん(小学3年生)、樫村康平さん(小学3年生)、榎本汐里さん(小学3年生)
    (※学年は2019年11月のインタビュー時点。)
  • コーチ:池谷将宏さん(栄光ロボットアカデミー横浜校 室長)

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三人の違いがチームの強みを生む

「WRO Japan 2019 WeDo Challenge 関東大会」で優勝に輝いたチーム「栄光ロボットアカデミー横浜校A」は、小学3年生の3名で構成されています。彼らは昨年同じクラスに通っていたことがきっかけでチームを作り、日本初開催のWeDo Challengeに参加したものの、思うような結果を得られず悔しい思いをしたそうです。今年も同じメンバーでエントリーし、夏休みを練習に捧げ、見事優勝という結果を残した子どもたちにお話を聞くことができました。

子どもたちは口を揃えて、それぞれの得意なことを教えてくれました。康平さんはプログラミングが得意、礼弥さんは形作りが得意、汐里さんは判断がはやいです。ロボットの形をどうするかで意見がぶつかったという彼らに、どうやって決めたのか聞いてみると、実際にロボットを二体作って競技を行い、どちらがより良い結果を出せるか比べて決めたと話していました。小学3年生の子どもたちが、形や見た目の好みではなく、実験に基づいて優れた結果につながる案を選んだのです。

Q:WeDo Challengeで優勝した時はどんな気持ちでしたか?
(三人そろって):嬉しかった!

Q:ロボットコンテストの活動で大変だったことは何ですか?
(三人で次々に):ロボットづくり。プログラムの調整が難しかった。習ってないこともあった。

Q:ロボット・プログラミング教室で楽しいことは?
礼弥さん:先生が面白い!
康平さん:ロボットを設計すること。みんな進みが違うから、それを見ながらやるのが楽しい。
汐里さん:みんなで競争するみたいで楽しい。

クリアできた課題の先に何を提示するか、教える立場で意識すること

池谷さんに、コンテスト参加にあたって、子どもたちと接する際に気をつけていることをお聞きしました。

コンテストでは、勝つ時も負ける時も理由があります。負ける時は、精神面、チームワーク、技術面などいろいろあっても、たいてい自分たちの失敗が理由です。勝つことにはこだわりませんが、勝つためにどうするかを考えるのが楽しい、子どもたちにとってのコンテストはそういう場として捉えています。
活動する際は、なるべく手を出さないように、自分たちで考えてもらうようにしています。今回、WeDo Challengeに参加した3名は、基本の課題はすぐにクリアするので、その先にどういう課題を提示するかを意識しています。

参考リンク

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