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【海外インタビュー】 主催者に聞く、国際大会開催までの道のりとフレンドシップに込めた想い

世界156か国を対象とした世界幸福度報告書(World Happiness Report※1)にて、2018年は3位、2019年は2位と上位に輝いているデンマーク。北ヨーロッパに位置し気候が良いとされる夏、デンマークで二番目に大きな都市のオーフスで国際的なロボットプログラミングコンテスト「WRO Friendship Invitational Tournament※2」(以下、WROフレンドシップ)が開催されました。今回、会場へ足を運び、主催者であるWROデンマークナショナルオーガナイザーのBirthe Ritter氏(以下、Birthe氏)に開催に至るまでのお話や、これからの学びについて伺いました。

0学年から始まるデンマークの義務教育

デンマークの付加価値税率(消費税率)は25%と世界でも非常に税率が高い一方、医療費や出産費、教育費は無料で、社会保障制度が整った国として有名です。
デンマークの教育制度の特徴の一つとして、2009年に指定された0学年(学校教育予備課程)があり、義務教育は6歳~15歳(0学年~9学年)の10年間です。義務教育という言葉から、日本のような学校での教育を想像しがちですが、デンマークの子どもたちは必ずしも学校に通う必要はなく、親は自宅学習等を選択することもできます。加えて、義務教育が終わった後に10学年として、任意で一年間教育を継続できます。また、公立学校の授業料は無料のため、国民にとって学費負担が少ない環境が整っています。
デンマークの教育制度は総合初・中等学校、普通・専門高等学校と多数の高等教育機関から成り立っています。また、デンマーク独自の教育機関として、フォルケ・ホイ・スコーレ(国民高等学校)※3があり、17歳以上なら誰でも入学できる成人教育のための全寮制の学校として、多様な年齢の人々が学んでいます。試験や成績はなく、生涯に渡って自分自身が学びたいことを学び活かしていく環境が整えられています。

WROフレンドシップ開催までの道のり

2019年8月1~4日にかけて、デンマークで二番目に大きな都市であるオーフスにてWROフレンドシップが開催されました。実際に現地へ赴き、大会の様子や主催者へのインタビューを行いました。

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素敵な笑顔でお話ししてくださるWROデンマークナショナルオーガナイザーのBirthe Ritter氏

WROに参画して約13年となるBirthe氏は、当初からデンマークで大会を開催することを夢見ていました。レゴ発祥の地であるデンマークには、世界で最初のレコランドがあり、ぜひ子どもたちに見せてあげたいとの思いがあり、今回の開催地として立候補しました。WRO国際大会は毎年11月に開催されますが、既に冬となるデンマークは寒く屋外での活動が難しくなります。フレンドシップ大会は毎年夏に開催されることも立候補した理由の一つであり、本大会期間中はお天気に恵まれ、北欧ならではの明るい時間が長く過ごしやすい気候の中で行われました。

世界各国から参加者がデンマークに集結するため、運営にあたり英語でのコミュニケーションが大変だったと、開催までの月日を思い返しながらBirthe氏は話してくれました。大会内容に関することだけではなく、デンマークへの移動や滞在をはじめとする様々な要望への対応があったそうです。そこには、大変さの中にも、参加者それぞれがデンマークを満喫できるように工夫している姿や思いが垣間見えました。

大会名称の「フレンドシップ」に込めた想い

大会を作り上げていく中で、今回は「フレンドシップ」にこだわったそうです。子どもたちが共に取り組み、お互いを知ることで、競技以外のことも楽しんでもらえるように工夫がこらされていました。大会期間中には、参加者同士が友好を深める「フレンドシップ チャレンジ」が行われ、国も年齢も異なる初対面の子どもたちが交流している姿が見受けられました。

今回、デンマークでフレンドシップ大会を開催するにあたって、参加した子どもたちに本大会を通して何を学んでほしいかを尋ねたところ、Birthe氏は次のように話してくださいました。

「参加した子どもたちにはレゴのロボットを使って科学技術を楽しく学んでほしいです。“フレンドシップ”大会であるからこそ、競争相手としてだけではなく、仲間として友だちになり、お互いの文化や言葉について知ってほしいです。人と人とのコミュニケーションは世界の平和へとつながる素敵なことだと思っています。見た目は違っても、彼らは思いやりがあり、お互いにレゴやロボット、科学という共通点があります。」

また、ロボットプログラミングによる今後の学びについて、Birthe氏は国連が提示するSDGs(持続可能な開発目標)を挙げて、次のようなコメントを寄せられました。

「問題解決には技術とエンジニアリングが鍵になると思っています。そして、これからの子どもたち、特にSTEM教育を受ける女の子たちが、誰かと一緒に何かに取り組み世の中を救うことを願っています。」

WRO Friendship Invitational Tournamentとは

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本大会は、WRO(World Robot Olympiad)が主催し、より多くのこどもや学生に国際的なイベントへ参加する機会を提供することを目的としています。2回目の開催となる今年はデンマークのオーフスで開催され、新しい競技形式やルールの導入、各国の参加者が交流できるイベントなどが行われました。大会には世界33か国から157チームが参加し、四日間にわたる熱戦と交流が繰り広げられました。大会の様子や詳細については、こちらをご覧ください。

インタビューを終えて

Birthe氏が語る「競争相手としてだけではなく、仲間として」の言葉の通り、子どもたちが競技会場で力を発揮し、大会を通じて友情を育む素敵な場面を目にすることができました。国籍や年齢が違う子どもたちが、ここで切磋琢磨したり協力し合ったりした経験が、新しい何かに挑戦するきっかけになることを願っています。

参考リンク

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