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“グローバルイシュー”が鍵 日本唯一の「環境」の授業とは

日本で唯一「環境」の科目を設置し、文部科学省認定の教育課程特例校としてSDGsや環境教育を独自に推進しているリンデンホールスクール中高学部。同校では、個性と自主性、共感力、叡智を兼ねそなえた、国際的に活躍できる人材の育成を目指しています。
環境授業の背景やその取り組みについて、校長の都築明寿香先生、環境教育を担当するリサ先生(以下、都築先生・リサ先生)にお話を伺いました。


都築先生

リサ先生

教育方針は「和魂英才」
生徒と世界と地域をつなぐ学びを目指して

同校は2010年に開校した私立の小中高一貫校で、国際バカロレア認定校として、国語以外のほぼ全ての授業を英語で行う「英語イマージョン教育」を導入しています。
また、日本の文化や精神性を大切にしながら、世界で活躍できる国際人の育成を目指す「和魂英才」という教育方針に基づき、生徒と世界、地域をつなぐ文化教育にも力を入れています。
今年度は、太宰府天満宮をテーマにしたプロジェクトに取り組んでいるそうです。太宰府天満宮は、周辺の文化財とともに構成される「古代日本の『西の都』」として日本遺産に認定されていましたが、集客力のある天満宮から周辺の施設や文化財に観光客を誘導できていないなどの課題があり、2025年2月に認定が取り消しとなっています。この課題解決の一助になればと、ARなどのデジタル技術を活用し、眠っている周辺の観光スポットに光を当てる企画に取り組んでいます。

「環境」の授業への想い
段階的に学び、思考を深めるためのデザインとは

国連が提唱し、2015年の国際サミットにて加盟国全会一致で採択されたSDGsを背景に、リンデンホールスクール中高学部は教育課程特例校として、各国が協力して解決にあたらなければならない地球規模の課題「グローバルイシューとしての環境」をテーマに、中学部で独自の環境科目を実施しています。
授業を立ち上げた経緯を伺ったところ、「同校のキャンパス内には、環境省『令和7年度 自然共生サイト』にも認定された西日本最大のイングリッシュガーデンが併設されており、『自然を大切にし、調和する学校を目指す』という目標が設立当初からありました。そこで、自然との調和を大事にする学校として、環境と向き合う学習を体系的に行おうという流れが生まれました。」と、都築先生は語ってくれました。
授業を担当しているリサ先生は、「環境問題という大きなテーマに対して、前向きに取り組む姿勢を育てたいですね。」と、授業づくりへの想いを話してくれました。

授業では、生徒が興味を持っているテーマや、フィールドワークを行える時期などの要素を踏まえて、年間4〜5テーマを段階的に学びます。中学1年生では、座学や調査で海の生態系を学んだうえで、学校近くの海で海洋ゴミ(プラスチック)拾いを実施します。自分たちの手で清掃を行うことで、生態系を守る意識を醸成します。中学2年生は、プラスチックの原料や環境への影響を調べ、「自分や日本だけの問題なのか」「自分の生活とどのように関係するのか」などと、生徒自身で問題提起します。中学3年生では、バイオプラスチックを取り上げ、海藻などで作ってみるそうです。硬さ・柔らかさの違いをもとに、硬いプラスチックができたらカトラリーにしたり、柔らかいプラスチックであればクリアファイルにしたりなど、どのような活用ができるのかチームで試行錯誤しながらアウトプットを目指す、という形で学びをデザインしているそうです。

グループワークでは、活動内容や各フェーズ、生徒の興味や得意分野に合わせて役割を変えています。また、グループ活動が苦手な生徒も取り組みやすいよう、少人数での実践を行う他、物を作る・レポートを書くなど、取り組み方も工夫しているそうです。グループワークを設定した意図について伺ったところ、「環境問題は一人で解決できるものではありません。だからこそ、他の人たちとコラボレーションし、会話を交わしながら解決に向けて自主的に動いていける力を身に付けてほしいですね。」と、リサ先生は話してくれました。

教育効果として、生徒同士で学び合い、成長する機会になっていると感じているそうです。また、1年生から3年生までの間、すべて英語で授業やディスカッションを行っているため、専門的な単語も学ぶことができ、その結果語彙力や英語力も身につくとのこと。1年生・2年生は専門的な単語を知らない生徒も多いため、言語のガイドを行ったり、授業内で聞く・話す・書く時間をそれぞれ取ったりしながら工夫しているそうです。

また、生徒への評価については、3種類から成り立っています。

  1. プロジェクト評価(プレゼンやポスターなどによる、まとめ力を評価)
  2. ペーパーテスト(専門用語の意味に対する回答、文章でアイデアやコンセプトを表現する力・グラフ作成やグラフを読む力などを評価)
  3. リフレクション(考えたことを短くまとめる力を評価)

なお、外でのフィールドワークを行うこともあり、屋外に行く解放感などからコミュニケーションが活発化するそうです。そのため、楽しみながら学べる授業として、生徒自身も受講してくれている気がします、とリサ先生は授業の雰囲気についても語ってくれました。


バイオプラスチックを作る生徒の様子


海洋ゴミ拾いをする生徒の様子

<リンデンホールスクール中学部・環境授業テーマ一覧>

中学1年生テーマ:
・水の循環
・ワンヘルス
・生態系
・海の生態系とマイクロ
プラスチックの影響
・環境汚染

中学2年生テーマ:
・気候変動と地球温暖化
・プラスチックの由来と影響
・サステナビリティと
Greenwashing
・生物群系・バイオーム
・発電とサステナビリティ

中学3年生テーマ:
・気候変動と温室効果ガス
・生態系と生物濃縮
・環境保全
・生物地球化学的循環
・バイオプラスチック
・環境汚染の測り方

※これらの中から、生徒が興味を持っているかどうか、フィールドワークを行える時期かどうかなどを踏まえ、年間4~5テーマを学んでいく

 

今後は、プロジェクト学習強化へ
世界に広がるアウトプットを目指していきたい

今後は、生徒自身が研究に取り組んだり、商品開発やビジネスプランを考えたりと、世界に発信できるプロジェクト学習を強化していきたいと考えているそうです。
リサ先生は今後の授業の展望について、「座学やフィールドワークだけではなく、学び、環境問題について考え、課題解決までより実践的に取り組めるようにしていきたいですね。」と、話してくれました。
さらに、現在はインドの学校と連携し、地球温暖化や大気汚染について共同学習を進めようとしているそうです。インドでは、大気汚染による酷暑の影響で外出が難しい時期があります。そこで、日本が公害を克服してきた歴史を共有・議論することによって、具体的な解決策を知り、またそれを伝え合うことで改めて知識や考えを整理できるアクティブラーニングにもつながったりするなど、双方実りのある学習を目指しています。
同校としての展望についても伺ったところ、「授業外のことでも生徒たちが一生懸命取り組んでいくことを推奨し、応援してあげられる学校でありたいと思っています。生徒達には、将来的に日本人としての協調性やチームワーク力を生かしながら、グローバル視点で考え、どんなアクションを起こせば課題解決できるのか学び、社会で活躍する人材になってほしいと願っています。」と、都築先生は話してくれました。

環境の授業は、知識習得だけでなく調べる力・伝える力・協働する力を育む取り組みであり、探究学習が重視される教育現場にも生かせる視点が多く含まれているとお話を伺っていて感じました。

※参考:リンデンホールスクール

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