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顧客と共にDX実現を目指すNTTデータの自社内変革、「受託型」から「創発型」へ

「IT人材は2030年には最大79万人不足する」と経済産業省は発表していますが、ここで指す“IT人材”には「従来型」と「先端型」があるのはご存じでしょうか。

「IT人材需給に関する調査(経済産業省)」※では、「従来型IT人材」とは受託開発や保守運用を担うITエンジニアのことを指し、冒頭で挙げた2030年には10万人が余剰人員になると言われています。それに対して、将来不足すると言われている「先端型IT人材」は、「AIやビッグデータ、IoT等、第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手として、付加価値の創出や革新的な効率化等により生産性向上等に寄与できるIT人材」と定義づけられています。こういった背景もあり、現在一部の企業では、従来型IT人材を先端型IT人材に育成するリスキリング施策を検討する動きも始まっています。

(※引用元:経済産業省)

そのような中、社内風土を「受託型」から「創発型」へ変化させるために社内ビジネスコンテストに力を入れ、コンテストで生まれた社員のアイデアを事業化(※)させることに成功している企業があります。今回、社内ビジネスコンテストの中核を担う株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)の荒川智弘氏にお話を伺いました。

※参考:事業化具体例は下記の記事で紹介
【NTTデータ】熟練者技術者の参画で点検作業時間50%削減 日本最大級のデータセンタ事業者が目指すRX

案件創発風土を醸成し、案件化を目指すNTTデータ

NTTデータは、従来の企業イメージである「ITによる確実な解決を提供する会社(受託型)」から、ありたい姿である「経営課題を提起し、顧客と共に考え、業務とIT一体で変革を実現する会社(創発型)」になるため社内風土変革に取り組んできました。

元々そういった風土がゼロだった訳ではなく、社内の各チームやメンバーが主体となったイベントの実施や、事業部内で新規案件に取り組む様子はあり、案件創発風土は醸成されつつあったそうです。そのような変化に勢いをつけ、さらに全社的な動きにしていくためには体系的な取り組みが必要と考え「3年計画」を掲げ、活動として社内ビジネスコンテスト「IdeaJam」の企画が立ち上がりました。

アイデアの創発から事業化までを目指すコンテスト「IdeaJam」とは

2022年度の「IdeaJam」は、NTTデータ社内の4つの事業本部に所属する社員を対象とし、「創発する能力」から「事業を組み立てる能力」を多面的に支援することをコンセプトに実施されています。

表②.png

荒川氏は、面白いアイデアは出てくることはあるがそれをビジネスプラン化することが一番大変だと語る中で、「IdeaJam」が今の形になるまでの変遷を教えてくださいました。

荒川氏「当コンテストは元々、アイデアコンテストの枠組みで、当時の事業本部長が社員のビジネス発案力養成を目的に立ち上げました。新入社員を中心に興味がある社員は多く、安定した人気はあったものの、年々イベントがマンネリ化する部分もあること、社員からの事業化支援のニーズが増えてきたこともあり、出口戦略をより実践的に変えることにしました。(アイデア発案コンテストに賞金を出すよりも、予算と裁量を譲渡し、結果を出してもらうスタイルへ変更)このことによりコンテストにメリハリが生まれ、参加者の活動が活性化したと思います。また、「プロダクトアウト」 になりがちだった社員が、「マーケットイン」 の目線を持てるようになりました。」

一般的に、通常プロジェクトでは各社員の所属チームや事業部の中で仕事の進め方を考えますが、ビジネス創発においてそういった枠組みは存在しません。IdeaJamでは、アイデアを事業化するための、リソース・課題をすべて自分自身で解決する必要があり、周囲を巻き込みながら検討を進めることで多くの学び(着眼点・課題解決力など)が得られます。

また、ゴールとして社会課題解決を設定した場合、社会課題評論家になってしまい、ビジネスとしての解決するアイデアにならない事がよくあります。荒川氏は、「IdeaJamでは、ヒト・モノ・コト・カネの要素をトータルマネジメントしながら事業を組み立てる事がゴールなので、一段高い視座が得られるだけでなく、ビジネスとして実現性の高い社会課題解決策を生み出すことができる」と語ります。

実施の「成果」と「今後の課題」

荒川氏に、「参加者」と「活動内容」、「事業化」三つの視点で成果と今後の課題を教えていただきました。
表③.png※「ビジネスデザインスプリント」の記事一覧
※「LITRON」

新規事業「創発」における困難と解決方法

IdeaJam事務局では、新規事業検討の実態を基に新規事業創発フローを設定しています。

表①.png

会社の既存ビジネスモデルに対し、社会課題を契機としたビジネスをどのように推進する か、事業化するか、社内の協力を得るかといった点で困難は多いそうです。

荒川氏は「新規事業創発フローに沿って、各人が能力を高められる環境を構築することが重要です。事務局は、外部のリソース (外部コミュニティや各種サービス) も活用しています。外からの情報を多く取り入れることで世間のスタンダードを知り、市場を見る力やマーケットインの考え方が身につき、困難にどのように対応していけばいいか気付いていくようになります。」と、社外の情報と接点を持つことの重要性についても説明してくれました。

また、社員の「本当に実現できるのだろうか」という心理的ハードルに対しても取り組んでいます。荒川氏は事務局として、参加者からの相談にはなるべく早くレスポンスし、内容によっては動いてあげることで、気軽に相談できる先となり、安心して取り組める環境を作っています。

メンバーの「情熱」を事業に昇華させる仕組み

事業を推進する上で、主担当者の熱量は成果を出すために重要な要素です。しかし、進める上での様々な困難で頓挫してしまう現実も存在します。

荒川氏にメンバーの想いから始まるアイデアを事業化するために重要なポイントを伺いました。

「どうしても一般企業においては業務のしがらみで新規事業活動に制約があることが多いですが、熱意のある人間には裁量を与えることが何より重要だと思っています。裁量の中で成功・失敗を繰り返すことによって得た発見こそが価値であり、その価値を知る社員が増えていくことが風土変革だと思っています。事務局としては様々なプロの意見を聞きながら、「興味があるけどやったことが無い」という社員層に対して、第一歩を踏み出す支援をし、チャレンジする人の悩みに、踏み込んで寄り添っていきたいです。」

「マーケットイン」の考え方が、本質的な顧客伴走型DX 提案に繋がる

荒川氏「社員がマーケットインの考え方を持つことで、お客様とのやり取りにおいても、能動的な営みが生まれるようになり、お客様のニーズである本質的な顧客伴走型のDX 提案に繋がってくると思っています。現在は、創発風土を着実に構築していく段階ですが、継続し成果を上げ続けることで、この活動に賛同する社員が増えていくと信じています。」

このような取り組みを見て分かるように、先端IT人材となるために重要な要素の一つは「マーケットインの思考」であると言えます。そして、この取材で伺った案件創発に向けたプロセスは、様々な企業がテクノロジーをビジネスアイディアとして広めていくためのヒントになるのではないでしょうか。

※本インタビューは2023年3月時点の情報です。

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