本記事は、ETロボコン参加チームからの寄稿記事を集約した「ETロボコンに参加しませんか 成功事例集1」(2019/2/13発行)からの転載記事です。今回は東海地区から企業チームとして参加の、株式会社アドヴィックス 塚本駿様による記事を紹介します。
おもしろそうなロボット制御の競技会がある
そう教授に勧められるがまま、ETロボコンに参加したのは2009年。当時、沼津工業高等専門学校の5年生で、卒業研究の一環として研究室メンバーでチームを組みました。学んでいたのはロボット制御や組み込みシステムで、ETロボコンの大会でその実践ができればいいという考えでした。チーム名は、沼津名物の干物にちなんで、「ひものエンベダーズ」と付けました。YouTubeで見つけた前年の動画では、小さな黄色いロボットが目にも止まらぬ速さで走っていました。これは楽しそうだ、授業でやった制御理論を使えばいいのかな? そんな感覚でスタートしたETロボコン活動でしたが、その認識の甘さは、あとで存分に思い知ることになりました。
モデルって・・・、なに?
活動を進めるうちに、モデルなるものを提出する必要があると判明し、審査規約を見ると、UMLがうんぬん、振る舞いがなんとか、トレーサビリティがどうたらなどと書いてあるのですが、ひとつたりとも意味がわかりません。これはマズイところに足を踏み入れてしまったと気づいたときには既に遅し、エントリーは済んでいたのです。
研究室でモデリングの勉強会をしながら、なんとか設計らしきものを始めた頃、救いの手が差し伸べられた。学校から数キロ先の拠点にある企業チーム、明電システムテクノロジー株式会社のチーム名:サヌックさんのご厚意で、社屋にてモデルレビューや走行テストに参加させていただけることとなりました。
モデルとは、ソフトウェアの設計内容を整理したドキュメントであり、高品質な開発には欠かせないものであることを知りました。様々な表現方法があるのですが、例えばUMLという表記ルールに従って図を描けば、UMLを知っている者同士で正確な意思疎通ができるのです。逆にいえば、意図を正確に表す描き方ができなければ、間違った意味の図ができあがってしまうのです。
自分たちだけでは、図を描いても正しく伝わるのか分からなかったのですが、モデルのレビューによって読む側の視点からの意見をいただき、表記ルールの知識だけにとどまらず、”伝える”ことの奥深さを身をもって学びました。当時、趣味でいろいろなソフトウェアを書いてはいましたが、いつも好き勝手に作るだけで、設計について考えたり、ましてや他人に説明したり、なんてことは微塵も考えていなかった自分にとって、とても新鮮な体験でした。参加初年度からこのような環境で活動できたことは、本当に恵まれており、関係者の方々には非常に感謝しています。モデルづくりを通じて身についた”伝える力”は、ソフトウェア分野だけではなく、学業や仕事、はたまた日常会話にいたるまで、さまざまな場面で役立っています。
それじゃあ、俺がこれをやるよ
2009年の初参加から、”ひものエンベダーズ”として毎年参戦していましたが、2012年に株式会社アドヴィックスに入社して以降は、チーム”HELIOS”の一員として会場に足を運びました。昨年の2018年大会で10年目となったETロボコン活動ですが、笑いあり、涙あり、たくさんの思い出が蘇ります。振り返ってみると、自分は興味のあること、つまり制御技術やソフトウェア実装技法を磨くことに一所懸命で、チームマネジメントなどは全然やっていなかったのです。それでも、いつも先輩や同僚、後輩たちが自発的に協力してくれて、チームが成り立っていました。10年間の活動で、ロボット制御の技術力は確実に高まりましたが、それ以上に大きく貴重だと感じるのは、人との繋がりです。チーム内外を問わず、一緒に切磋琢磨した仲間たちは、たくさんの想いを共有する友人となり、そして幸運にもその中に、人生の伴侶を見つけることもできました。他人と関わることを面倒がっていた自分にとって、人の温かさに触れ、それに応えようと思うきっかけをくれたのも、ETロボコンでした。
今後は後進の育成に貢献し、自分の経験を共有することができれば、そしてETロボコンがこれからも、技術を研鑽する場であり、人と人とを繋ぎ、笑いと涙を提供し続けることができればと、切に願っています。
参考リンク
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