【授業実践】自律移動ロボット開発を目指し、4年をかけて実践される多段階体験によるPBL

国立 奈良工業高等専門学校 電子制御工学科では、1年生から4年生まで、ロボットをハードウェア、ソフトウェアの両面から学ぶ多段階教育が実施されています。20年以上に渡って4年生で継続されてきたロボット製作の授業を、1年生から3年生の実験でも取り入れることで、段階を追って知識を獲得し、理解を深めることができるようになりました。今回は、多段階教育の中心的な実践者である玉木隆幸 准教授にお話を伺いました。

ゼロから作り上げる困難が始まりとなった多段階教育

奈良工業高等専門学校(以下、「奈良高専」)では、20年ほど前から4年生で自律移動ロボット製作の授業が継続されてきましたが、なかなかうまくいかない場面も多かったそうです。当初は文字通りロボットをゼロから作り上げる授業で、金属を削って部品を作り、モーターを制御基板とつなげ、駆動部をつくり、といったように、学生たちが作る過程が大きく、いざロボットとして組み立てプログラミングした時に、思い通りに動かない原因がどこにあるのか、切り分けることも大変といった状況でした。

ある年、奈良高専に着任された上田悦子先生(現在、大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 教授)がこうした状況を目にし、教育用レゴ® マインドストーム® を使うことを提案され、1年生でロボットを学ぶ授業が始まりました。さらに、2年生、3年生と段階を経てハードウェア、ソフトウェアの双方を学んでいくことで、4年生のロボット製作につなげたいという背景もあったそうです。平成24年度からは、1~4年生の各学年で半期以上に渡ってロボット教育を実践するプログラムとなり、現在も続けられています。

令和元年度(平成31年度)の体験型課題解決プログラム(PBL)

  • 第1学年 電子制御工学実験Ⅰ

    教育版レゴ® マインドストーム® EV3を用いて、15週に渡って、チームで課題解決型の実験テーマに取り組む。アイコン型のプログラミングソフトウェアを使用し、PDCA(Plan, Do, Check, Action)サイクルを意識したシステム開発を経験する。
    授業数:3限135分/週 × 15週

  • 第2学年 電子制御工学実験Ⅱ
    教育版レゴ® マインドストーム® EV3をベースロボットとし、拡張センサや外部制御用の電子回路を追加して、自律型ロボットを製作する。テキストベースのプログラミング言語を使用。
    授業数:3限135分/週 × 15週

  • 第3学年 電子制御工学実験Ⅲ
    第4学年で使用するベースロボットを用いて、C言語によりライントレース、割り込み処理を行うプログラムを作成する。クランク、カムといった機構は学生自身が設計し、3Dプリンタで造形したものも用いる。
    使用教材:Pitsco TETRIX®、自作のパーツ類
    授業数:3限135分/週 × 15週

  • 第4学年 システム設計製作
    多段階教育プログラムの集大成として、提示されたテーマを解決できる自律移動型ロボットをチームで製作する。
    6班に分かれ、各班は予算の1万円で、既製の部品に加えて、学生自身が実習工場で設計・加工した部品を組み合わせてロボットを組み立て、C言語やLabVIEWでプログラムを開発する。年度末には学外の企業技術者も参加する成果発表会が開かれ、学生らは研究、開発、発表のスキルを大きく成長させることができる。
    授業数:2限90分 × 30週

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第4学年の授業で製作された自律型ロボットの例
大小のブロックをゴミに見立てて掃除機ロボットで回収する課題では、TETRIXにそろばんを組み合わせてロボットを作り上げた班が現れたそうで、取り込むブロックの大きさが上下で変わる優れたアイディアを披露。木材やプラスチック、アルミなど、材料によって滑り方が異なる点が製作時の発見。

4年間を通じて身に付けてほしいこと

段階を経るものの、学年が上がるごとに難しさが増していく教育プログラムで、学生にどういったことを学んでほしいですかと尋ねたところ、次の三点を挙げられました。

  • 課題に向かってあきらめずにやること
  • 報告書を作成できるようになること(他者に実験の内容を適切に伝えられる)
  • チーム内で自分の役割を把握し、自分の力を活かすこと

教育版レゴ® マインドストーム®の教材としての良さ

電子制御工学科の新入生は、ロボットやシステムを作ってみたいと思っている子が多いと言います。そんな15-16歳の子どもたちが、容易に組み立てられて取り外しや組み替えもできる点、アイコンをつなげるだけのプログラミング、何度も試すことができ、失敗しても取り戻せるところなどが良いそうです。

グループワークだからこその良さ、難しさ

学年によってグループ構成は変わるものの、同じクラスで5年間を過ごす高専生は、プログラミングが好き、組み立てが好きなど、関心分野が異なっていてそれぞれの良さを出せる点が良いそうです。ただ、グループ内にとても熱心で優れた力のある学生が居ると、その子ばかりがやってしまったり、反対になかなかやる気を持って取り組めない学生が居ると、取り組みが進まなかったりといった難しさがあると言います。グループで進んでいけるように、チーム内でのコミュニケーションを促す声かけをしたり、報告書から学生の様子を観察してフォローしたりといった対応をしているそうです。

学生の反応を聞く

大変なところもあると思うが、学生は楽しんでやっているようだと、玉木先生からある学生の例をお聞きしました。4年生まで継続したロボット教育プログラムであることから、「失敗したところもあるが、来年に活かせる」と話した学生が居たそうです。一度失敗したら終わりではなく、その悔しさをバネに次年度にがんばろうという気持ちが生まれたことになります。

また、今回のインタビューは4年生の授業が行われた直後だったこともあり、授業後も残ってロボット製作に取り組んでいた学生からは、「チームをどうやってまとめたらいいのか考えた」、「課題に向かってやって、結果が出たことが嬉しい」といった感想を聞くことができました。

自ら学べる人になってほしい、学生への想い

玉木准教授に、奈良高専から社会に羽ばたく学生の皆さんへメッセージを頂戴しました。

何よりも元気で過ごしてもらいたいと思っています。一つのことを究めていくのが得意な高専生は多いので、グループワークを通してチームで何かをやり遂げるスキルを身に付けてほしいです。それから、自分で学べる人、意思を持って活躍できる人になってほしいと願っています。

参考リンク

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