【国立大学法人 福井大学】大学リカレント教育でIT人材を育成し、地域創生を目指す

【国立大学法人 福井大学】大学リカレント教育でIT人材を育成し、地域創生を目指す

文部科学省は2021年2月に、就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業実現に向けて、全国の高等教育機関に対して公募を開始、2021年9月7日に採択された22都道府県63プログラムを公開しました。本事業は、コロナ禍における雇用情勢の中で、全国の大学が企業・経済団体・ハローワーク等と連携し、2ヵ月から6ヵ月程の短期間で就職や転職につながるプログラムを受講対象者の負担なしで提供する取組みです。社会的関心の高い地方創生、DX、医療・介護、女性活躍を中心に、基礎的なものから応用的なものまで採択されています。

今回は同事業で採択され、地域創生に向け「地域企業内のIT責任者候補を養成する」ことを目的に実施する国立大学法人福井大学(以下、福井大学)地域創生推進本部の竹本拓治教授(以下、竹本先生)にお話を伺いました。

国立大学が大学リカレント教育に取り組む理由

福井大学では、2015年から文部科学省の補助により実施された「COC+事業【地(知)の拠点大学による地方創生推進事業】※1」で地域の持続的な発展とイノベーション推進の担い手を育てる活動を実施。地域志向・課題解決型教育プログラムの構築や、地域創生アワードや県内すべての大学等が参画する協議体「FAA(ふくいアカデミックアライアンス)※2」を設置するなど、計画以上の成果を出したことで中間評価ならびに事業評価では最高ランクのS評価を受けていました。

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(図1:COC+事業 概要資料[福井大学]

さらに2019年には地域創生推進本部を設立し、地域との連携活動をより積極的に推進しています。大学としても、人生100年時代を支える多様な学びの機会を提供する「学びの母港」の構築を目指して、同学卒の経営者で構成される福井大学同窓経営者の会と連携し、リカレント教育として県内企業向けに「デジタル化・DX実践講座」を実施するなど活動を広げています。

このように地域創生を目指した人材育成に力を入れる同学にとって、「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」への参画は自然な流れだったそうです。

産学官金連携による「ふくい型アプレンティス」プログラム

福井大学が2021年に実施した「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」は、企業や県内大学、労働局、ハローワーク、金融機関など「産学官金」と協力しプログラムを構築。県内外から再就業を目指す受講者を募集する中で、福井県の関係各部署が支援しUIターン希望者への各種補助を設置するなど、県外からの移住も狙いの一つです。

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(図2:全体概要「提供元:福井大学」)

同事業は、大きく「プログラム」「募集」「就職・地域定着」の三つの観点に分けられます。

  1. プログラム
    全体目標として「地域企業内のIT責任者候補を養成する」ことを掲げ、その中で人材像を2種類に分けプログラムを構築しています。受講後には企業インターンシップへ参加し就職に繋げることも視野に入れています。

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    (図3:育成される人材像について「提供元:福井大学」

    〇コア科目/スキル養成科目(96時間の履修)

    地域の企業や大学、工業高等専門学校の専門講師を中心に、計96時間でキャリアの基礎に関する科目やサイバーセキュリティ基礎など、汎用的な知識の習得を目指します。

    〇アプレンティス科目(32時間の履修)
    2つのコースいずれかを選択し、企業から派遣された実務家から直に学ぶことが出来ます。

     コース①:サイバーセキュリティコース
     「様々なインシデントに対応可能なセキュリティ担当者」を養成
     目的:サイバー攻撃の弱点や痕跡を理解しインシデントに対応できる

     コース②:システム開発コース
     「社会により良いITプロダクト・サービスを提供出来るDX人材」を養成
     目的:ITシステム開発プロセスの全工程を把握できる


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    (図4:カリキュラムマップ「提供元:福井大学」)

  2. 募集
    県内からの募集では、WEBやメディアを通した広報や、要事業再構築企業の再就職支援、ハローワークからの推薦による申し込み、県外からはUIターン希望者に対して福井県がもつネットワークを活用し募集しました。

  3. 就職・地域定着
    地域「産学官金」と連携し、受講者の地域企業への就業支援を行います。

当事業を推進する竹本先生は、「募集開始前は当プログラムの受講者ニーズに確信が持てず、受講者が集まらないのではないかという不安があった」と言います。しかし定員30名で募集を開始したところ、およそ倍(57名)の申し込みがあり、さらに県内外からの問い合わせはそれ以上の数で、想定以上の反響に驚いたと話しました。申込者の年齢は20代~30代の層が一番多く、今後のキャリアを見越した「学び直し」の意識が強かったそうです。

「システム開発コース(*図4参照)」で養う、システム全体を俯瞰する目

社会により良いITプロダクト・サービスを提供出来るDX人材を養成するためのアプレンティス科目として「システム開発コース」があります。昨今のシステム開発は大規模・複雑化しているため分業化がすすみ、業務プロセス全体が見えづらい状況の中、開発の全行程(分析・設計~実装~テスト)を体験することで各工程の役割や前後工程のつながり、設計とテストの因果関係などが把握でき、品質と生産性の向上に取り組む人材を育成することが出来ます。

竹本先生は「ITというとプログラミングコードを書くスキルが注目されることがありますが、そういったコーディングスキルは、IT業界であれば受入れ企業内で研修する場合が多く、当プログラムではシステムの役割や概要を理解する方が重要だと考え、システム開発コースを実施しました。その点で十分に達成できたと思います」と話されました。

今後に向けて

竹本先生は「来年度以降実施する場合は、ほか大学の事例も含め、求職者と受入れ企業両者のニーズ調査を進め、より就職につながる内容や体制にしていきたいと思います。」と話します。

昨今、業界問わずDX推進やデジタル化に向けて様々な企業でIT人材不足が叫ばれる中、こういった人材育成は地域企業活性化の有効な手段となり得ます。今回福井大学が掲げる旗の元、産学官金が協力し合い実現した本取り組みは、地域創生の大きなヒントになるのではないでしょうか。

参考

※1 COC+事業【地(知)の拠点大学による地方創生推進事業】
文部科学省が実施した、平成27年度から5年間、大学が地方公共団体や企業等と協働して、学生にとって魅力ある就職先の創出をするとともに、その地域が求める人材を養成するために必要な教育カリキュラムの改革を断行する大学の取組を支援することで、地方創生の中心となる「ひと」の地方への集積を目的とする事業。

※2「ふくいアカデミックアライアンス」 

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事業をする上でシステム利用は当たり前となり、規模は日々大きくなっています。システム開発の現場では大規模化・複雑化したシステムへの対応や開発作業時間の短縮、エンジニアの高いスキルと品質意識が求められています。本説明会では、前半にシステム開発で求められる人材育成や開発現場での課題、システム開発研修の概要と期待される効果をお話します。後半は受講者の声や事例を交えて、システム開発研修の特徴など詳しく解説します。

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