考え方や経験値の異なるエンジニアのコミュニケーションを促進 ~教育版レゴ マインドストームを社内研修に活用~

(本記事は、2016/4/12公開のマイナビニュースに掲載されたものを転載しています。)

全世界で事業を展開しているキャタピラーグループの中で、油圧ショベルの設計開発の拠点がキャタピラージャパンの明石事業所内にある油圧ショベル開発本部だ。ここではアフレルが提供する「教育版レゴマインドストームEV3(以下、マインドストーム)」が、エンジニア同士のコミュニケーションを促進する研修に活用されている。

キャタピラージャパンは世界最大手の建設機械メーカー、キャタピラー社の日本法人である。油圧ショベル開発本部はグローバルデザインセンターとして、世界中のショベルの生産工場に設計図面を提供しており、同じ事業所内にある明石工場は油圧ショベルの"マザープラント"として生産を行っている。

「全世界の工場で、大小取り合わせて多種多様な油圧ショベルを生産しています。メーカーとして、常に品質改善に挑戦し続ける姿勢が求められるのは当然のこと。そのため全社的に取り組んでいるのが、生産工程で品質を維持・改善するのではなく、設計段階で品質を高め、作り込む手法です。この手法はもともと日本で開発され、アメリカでブラッシュアップされた後、日本に逆輸入されたものです。例えば、設計検討の工程でシミュレーションを繰り返した後に最終的な設計を確定します。その際、社内でネックになっていたのが、技術的バックグラウンドの異なるエンジニア同士でコミュニケーションがうまくかみ合わないことでした」と、油圧ショベル開発本部の足立識之氏は課題について語る。

油圧ショベルの開発・設計には、さまざまなエンジニアが関わる。ところが、機械系と電気系では使う用語も発想のプロセスも違う。とはいえ、メカトロニクス、つまり機械工学と電気・電子工学の融合が必須であり、円滑なコミュニケーションは欠かせない。そこでバックグラウンドの異なるエンジニアたちのコミュニケーションを促進するため、研修にマインドストームが採用された。

二人一組でのシステム開発トレーニング

近年、油圧ショベルもデジタル化の進行が著しく、モニター・マシン本体・エンジン制御と大きく3種類のソフトウェアを搭載している。

「開発には多種多様なエンジニアが関わります。例えばソフトウェア開発そのものに携わる者と実験検証を担当する者では知識が異なるため、コミュニケーションをスムーズに取れないことがあります。すると何か問題が発生した際など、修復に必要な時間の見積りが、部門により異なることがあります。次工程に伝えた修復時間と実際にかかった時間が違ってしまうと、次工程の業務に差し障るおそれがあるのです」と、コミュニケーションの重要性を指摘するのが油圧ショベル開発本部の佐伯香氏だ。

こうした問題を解決するために、ここでもマインドストームによる研修が取り入れられている。研修では、経験のあるエンジニアと若手がペアを組む。課題は、自動搬送システムの開発である。分析→設計→実装→テストと一般的なシステム開発のフローを、二人で話し合いながら進めていく。受講者は機械や実験に携わるエンジニアであり、システム開発に関しては門外漢だ。

「通常のシステム開発ならプログラミング言語などの知識が求められますが、マインドストームを使えば、そうした専門知識は不要。システム開発の本質である、一つの成果を見据えて話を進めるプロセスがきっちり学べます。しかもゴールに到達するためのアプローチは、多種多様に用意されていて、考えた結果を直ちに動かして試すことができる。これが好奇心を強く刺激するようです」(佐伯氏)

アフレルが提供する研修は、通常5日間のプログラムで組まれている。これをキャタピラージャパンでは3日間に凝縮。朝から夕方まで1日8時間みっちり集中して取り組んでいる。

実務につながる内容を盛り込んで、より実践的な研修に

マインドストームでは、さまざまな機能を実装するアイコンを、実現したいプロセスに基づいて並べ、必要なパラメーターを指示することでシステムを開発していく。一連のプロセスの中で何より大切なのは前工程、システム開発でいう仕様書作りである。課題をクリアするために必要な動作を分析し、その動作を実現するための設計を考える。これはシステム開発の核となるプロセスそのものであり、かっこうの疑似体験となる。

「参加者の反応は非常に好評でした。全員が『同僚にも薦めたい』と答えたのは、コミュニケーションの重要さと楽しさを実感したからでしょう。さらに、自分たちが実際に行っている業務に即した内容にブラッシュアップして欲しい、との要望が出ています」 (足立氏)

こうした声に応えるため、同社では今、社内講師の育成に取り組んでいる。社内の人間が講師を務めれば、プロセスを説明する際に具体的な事例を盛り込むことが可能。これにより参加者は、研修内容をより実際の業務に関連づけて理解できる。役割の異なるエンジニアが全体プロセスを共有し、その中でのお互いの役割も共有する。結果、おのずとコミュニケーションは円滑になり、その成果は業務に反映されるはずだ。


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