プログラミング教育

【事例】5歳から楽しく学ぶプログラミング-90分に込められた工夫とこれから

学習指導要領の改訂により、小学校では2020年からプログラミング教育が必修化されます。民間の調査によると、小学校での「プログラミング教育必修化」の認知度は80%を超え※1、来年度の開始を前にして年長から小学生のお子さんを持つ多くの保護者から注目を集めています。一方で、関心を持ったが何もしていな割合は45%を占め※1、必修化に向けて何かしたほうがいいのではないか、これから何かを始めたい、など考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

子ども向けのプログラミング学習方法は多岐にわたり、プログラミング塾やプログラミング教材を用いた家庭学習などがあります。今回は、一例として、東京都にある幼稚園の課外活動として行われているロボットプログラミング教室をご紹介します。講師を務める鈴木但義氏にお話を伺いながら、教室の様子や子どもたちの活動を取材しました。

ロボットプログラミング教室をはじめた理由

鈴木氏は情報通信企業に勤め、人材育成部門にてプロジェクトマネージャの教育に携わっていました。業務を通してロボットプログラミングに出会ったのを機に、組込みシステム分野における技術教育・人材育成をテーマとしたETソフトウェアデザインロボットコンテストの実行委員をはじめ、エンジニアの人材育成に携わってきました。これらの経験をもとに、定年退職後に新たな挑戦として、スズタ技術士事務所を開所しプロジェクトのコンサルティング、技術教育のコンサルティングを行っています。そんな中、アイデアマラソン発想法を考案し、東京いずみ幼稚園で園児向けの描画アイデアマラソンを指導してきたアイデアマラソン研究所の樋口健夫博士(以降、樋口氏)からのお誘いをきっかけに、2019年4月より子ども向けロボットプログラミング教室を始め、学びの場を提供してきました。その取り組みの一つに、東京いずみ幼稚園(東京都足立区)でのプログラミング教室があります。

東京いずみ幼稚園について

東京都足立区にある学校法人小泉学園 東京いずみ幼稚園は、幼児期に経験させておくことが望ましいとされる生活体験・教育内容をバランスよく総合的に計画立案し、教育計画を編成しています。その中では、絶対音感を付けるコーラスなどの音楽教育、漢字絵本やフラッシュカード等を用いて学習する「石井式国語教育」や観察力や表現力、発想力を養う「めだか・アイデアマラソン」など、日頃から様々な教育が行われています。さらに、ピアノや英会話、水泳など多分野にわたる課外教室も開設されています。

5歳から楽しく学べるロボット・プログラミング「ファルコンきっず」

年長・卒園児を対象に、2019年4月から樋口氏と鈴木氏で運営するロボットプログラミング教室「ファルコンきっず」が課外教室の一つに加わりました。教室ではロボットを使って、プログラミングに親しんでもらうことを目的に、子どもたちが自分で工夫し、主体的にロボットを組み立て、プログラムを作ります。取材時は、レゴのロボットプログラミング教材である「レゴ® WeDo 2.0」を使いながら、メリーゴーラウンドを作成し動かす課題に取り組みました。
活動を始めるにあたって、どうやって5~6歳児にプログラミングを楽しんでもらうかを突き詰めた鈴木氏。これまでの経験や知識をもとに、子どもたちにあった90分の活動内容を試行錯誤しながら考えたそうです。その中には5~6歳児の集中力を保ちながら興味を引き出す様々な工夫がありました。

工夫①子どもたちの経験と課題を結びつける

教室では、鈴木氏の問いかけに対して、子どもたちが元気よく答える姿がありました。

鈴木氏  「遊園地でメリーゴーラウンドに乗ったことはありますか?」
子どもたち「はい!」「ある!」
鈴木氏  「メリーゴーラウンドはどんな風に動きますか?」
子どもたち「(手を上下に動かしながら)こうやって動く」「ぐるぐるって回る」

鈴木氏は、子どもたちがロボットを組み立てる前に言葉をかわすことで、子どもたちが描くメリーゴーラウンドと、これから教室で作っていくプログラムやロボットをつなげていきます。ただ課題を伝えるだけではなく、自分たちの経験やイメージと関連づけることで、子どもたちの好奇心ややってみようとする姿勢を引き出していました。

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工夫②ロボットの動きで分かる特徴や仕組み

鈴木氏は「この教室ではロボットを使うことにこだわっています」と話します。教室名も「ロボットプログラミング教室 ファルコンきっず」と“ロボット”を明記しており、取材時はロボットを用いているからこその活動の様子も見られました。
例えば、ロボットを組み立てる時に、指導者が手順を一から説明することはなく、独自のマニュアルをみながら子どもたちが自力で作ります。動かしてみて想定の動きと異なっていれば作り直し、上手くできたらそれぞれが描くメリーゴーラウンドに近づくように、動く速さを変えたり音を出したりと機能を追加していきます。作業中は教えるために何度も止めることはなく、子どもたちが目一杯ロボットと向き合う時間を確保し、ロボットの動きを見ながら適宜声掛けをしていました。
また、活動の終わりには、チームごとのテーブルを全員で囲み、作ったプログラムを実際動かして他のチームへお披露目します。ロボットが動くからこそ、それぞれの違いや特徴が一目でわかり、お互いの作品や仕組みを知ることができます。始めに全員が描いたメリーゴーラウンドの動きが表現できていなくても、それぞれの作品に対して必ず全員で拍手する姿が印象的でした。

プログラミング未経験でも子どもに寄り添う指導

当初、子どもロボットプログラミング教室は鈴木氏と樋口氏の二人で始まりました。しかし、実際に教室を開催してみると二人だけでは子どもたちに寄り添った指導が難しかったそうです。そこで、少しずつ指導者を増やしていき、現在は一回の活動に対して四人で指導しています。鈴木氏以外は、いままでロボットを触ったことやプログラミング教育に携わったことがありませんでした。そのため、授業が始まる前に集合し、当日の課題や指導内容、操作方法を共有します。WeDo 2.0の良さ・強みの一つとして、プログラミング言語ではなく、アイコン型言語を使用するため、30分程度で習得でき、また説明書や長時間の講習がなくてもすぐに取り組めるように工夫した、と話していました。今では指導者の皆さんもプログラミングの楽しさにのめり込んでいて、活き活きと指導している姿がうかがえました。

半年間のプログラミング指導で見えたこと、これからの展望

東京いずみ幼稚園にて教室を始めてから半年が経ちましたが、初年度からこれほど多くの子どもたちが集まる課外活動は珍しいそうで、子どもたちにとっても人気の課外活動であることがうかがえます。鈴木氏は今後の展望について、プログラミング経験の有無にかかわらず活動内容に共感してもらえる指導者を増やしたり、子どもたちの成果発表の場としてロボットコンテストへ参加したりと、更なる活動を検討していました。
2020年はプログラミング教育が小学校で必修化することもあり、これからは就学前の子どもたちにもの学習機会が増えていくのではないかと予想されます。今回の取材を通して、子どもたちが自分で工夫し、楽しく取り組める機会が増えていくことを期待しています。


使用教材 レゴ®WeDo 2.0

ブロックを組み立て、専用ソフトウェアでプログラミングし動かすことで、子どもたちが手を使って自分のロボットを作り、楽しみながらものづくりやプログラミングを学ぶことのできる教材です。モーターやセンサーを活用することで、様々な動きを実現できます。
ご家庭ではじめるロボットプログラミング「レゴ®WeDo 2.0 for home by アフレル

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参考リンク

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